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“異例の出来事”ネトフリからNHK、そして翌年…「原作以上の熱量」「席を立てなかった」芥川賞受賞“原作”9年前の劇場版

  • 2026.7.5
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菅田将暉 桐谷健太(C)SANKEI

2015年に発行され、第153回芥川賞を受賞した又吉直樹の小説『火花』。2016年にはドラマ化され、Netflixで配信された後、2017年にNHK総合で放送されるという、異例の出来事が大きな話題を呼んだ。ドラマ版については、当サイト・TRILLでも詳しく紹介したが、今回は2017年に公開された映画版『火花』について取り上げたい。

菅田将暉・桐谷健太がW主演を務める映画『火花』

菅田将暉と桐谷健太がW主演、板尾創路が監督を務め、脚本は板尾創路と豊田利晃が共同で担当した映画『火花』。ドラマ版は全10話の長尺で描かれたが、映画版は板尾監督ならではの手腕で2時間に凝縮されている。

若手コンビ「スパークス」としてデビューするも、まったく芽が出ないお笑い芸人の徳永は、営業先の熱海の花火大会で先輩芸人・神谷と出会う。神谷は、「あほんだら」というコンビで常識の枠からはみ出た漫才を披露。その奇想な芸風と人間味に惹かれ、徳永は神谷に「弟子にしてください」と申し出る。神谷はそれを了承し、その代わり「俺の伝記を作って欲しい」と頼む。その日から徳永は神谷との日々をノートに書き綴る。2年後、徳永は、拠点を大阪から東京に移した神谷と再会する。二人は毎日のように呑みに出かけ、芸の議論を交わし、仕事はほぼないが才能を磨き合う充実した日々を送るように。そして、そんな二人を、神谷の同棲相手・真樹は優しく見守っていた。しかし、いつしか二人の間にわずかな意識の違いが生まれ始める―
出典:Prime Video『火花』

SNSには「菅田将暉と桐谷健太の漫才が俳優なのに上手すぎ」「2人とも関西弁ネイティブだから全く違和感がない」といった感想が上がっている。

お笑い芸人をリスペクトする菅田将暉の熱演が光る

徳永を演じた菅田は、大のお笑い好きで、芸人をリスペクトしていることを、TV番組などに出演する際によく語っている。映画『火花』で、役者として芸人を演じることはかなりのプレッシャーだったと察するが、彼の熱演ぶりからは芸人への尊敬の念が強く伝わってきた。先輩芸人の神谷への憧れと、少しずつ生じていく気持ちのずれや葛藤は、演技派俳優の菅田だからこそ、2時間という枠で秀逸に体現できたのだと思う。

菅田は、TVドラマ『コントが始まる』でも芸人に扮したが、その時はコント師として、仲間と共に奮闘する姿が青春を感じさせた。一方、『火花』では“しゃべくり漫才”に挑み、相方・山下役の川谷修士(2丁拳銃)に必死に食らいつくアプローチをとっていた菅田。“役者・菅田将暉”の力量と、芸人へのリスペクトの両方を、しっかりと観客に伝えていた。映画を観た人からは「菅田さんの漫才シーンは原作以上の熱量を感じる」という投稿も見られた。

芸人出身の俳優と漫才の練習をして撮影に臨んだ桐谷健太

『火花』の神谷は、“驚きのラスト”も含め、演じるのが非常に難しい役どころだと思う。奇抜で破天荒だが、天才的なセンスと、誰にも媚びないスタイルを持っている神谷。徳永は、そんな神谷に強い憧れを抱く。神谷を怪演した桐谷は、コミカルな役柄も、シリアスなキャラクターも、変幻自在に演じられる実力派俳優。今回は、相方・大林役の三浦誠己と共に、東京・代々木公園や渋谷のヨシモト∞ホールで、漫才の練習をして撮影に臨んだと語っている桐谷。かつては芸人だった三浦と一緒にネタの特訓をしたことで、お笑いコンビとしての自然な演技を観客に届けることができたのだと感じさせた。

桐谷は、お笑い芸人役とは異なるが、TVドラマ『俺の家の話』で能楽の人間国宝の弟子であり、芸養子(芸道のために養子となった者)の役を演じた。そこでも、芸に生きる上での葛藤や凄みを表現しており、映画『火花』につながるものがあったように思う。

板尾創路だからこそ描ける芸人のリアル

お笑い芸人の又吉(ピース)が書いた小説『火花』。その映画版の大きな特徴は、お笑い芸人の板尾(130R)が監督と脚本を担当していることだ。芸人だからこそ描けた、リアルな“芸人像”と空気感が、2時間の映画の中に詰まっている。板尾本人も、漫才経験のない人に映画『火花』を撮らせたくなかったと語っている。

養成所上がりの若手漫才師のネタ合わせの様子や、劇場の舞台裏の張り詰めた雰囲気などの描写は、芸人ではない監督には出せない、リアル感があるのではないだろうか。

そして、映画『火花』のエンドロールで流れる主題歌は、“芸人のアンセム(賛歌)”と呼ばれる『浅草キッド』なのも心憎い。ビートたけしによる名曲として知られるこの歌を、主演の菅田と桐谷がカバー。歌手としても活動している2人が、魂を込めて歌っており、売れない芸人の下積み時代や、いつか売れると信じて夢を追いかけるという内容の歌詞が胸に響く。公開当時、映画館で本作を観た人は「歌詞が刺さりすぎて、劇場で席を立てなかった」「主題歌によって余韻が凄かった」などとコメントしている。

お笑い界という特殊な世界を舞台にしつつも、全ての“夢を追う人”の心に刺さるストーリーの『火花』。桐谷と菅田が発する、映画版ならではの爆発的なエネルギーと、切なくも美しいラストシーンを、ぜひ堪能してほしい。


出典:日刊スポーツ/板尾監督「火花」漫才知らぬ人に撮らせたくなかった

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X:@KumikoShimizuWP

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