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17歳で是枝監督に“大抜擢”された「主演を背負う美少女」数々の映画賞を総なめした「唯一無二の主演女優」とは

  • 2026.7.7
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2026年1月、ブルーリボン賞 主演女優賞を受賞した広瀬すず(C)SANKEI

吉田秋生、末次由紀、凪良ゆう、向田邦子、カズオ・イシグロ。広瀬すずが10代半ばから20代までに主演で関わった映画・ドラマの原作者を並べると、こうなる。

少女漫画も、本屋大賞作も、戦後の家庭劇も、海外文学も入っている。共通点は一つだけだ。世に出た瞬間に、読者や観客の側がもう中身を知っている素材であること。広瀬は10代の頃から、その種類の主役ばかりを渡されてきた女優である。

ティーン誌の表紙から物語の中央へ

2012年、広瀬は雑誌『Seventeen』の「ミスセブンティーン2012」の1人に選ばれて芸能界入り。同誌の専属モデルとして表紙に立ちながら、翌2013年にはフジテレビ系『幽かな彼女』で女優デビューを果たした。香取慎吾が演じる中学校教師のもとに現れる不思議な中学生役。デビュー作から物語の中央近くに据えられている。

同じ雑誌出身でも、絵になる若い顔以上に、作家の世界を映す顔として呼ばれる側へ早くから振れていた。直後の数年の役の渡され方を見ると、その方向の違いははっきり出ている。

漫画原作の主役に体を貸す

映画キャリアで最初に頭角を現したのが2015年の『海街diary』だ。吉田秋生の同名漫画を是枝裕和監督が映画化した1本で、広瀬は鎌倉の三姉妹のもとに引き取られる異母妹・浅野すずを演じている。

原作の読者にとってこの末妹はもう馴染みの人物で、漫画の中で長く生きてきた表情やしぐさが固まっている相手だ。10代の俳優が、漫画の読者と是枝作品の観客の両方を一度に引き受ける位置に立った。この一本で、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞、第89回キネマ旬報新人女優賞などを立て続けに受けている。

映画賞各所が同じ年に同じ俳優の名前を並べたとき、賞そのものよりも、現場の側の判断が外から可視化される。読者の頭の中で輪郭の固まった人物に、生身の俳優が体を貸す。その難しい仕事に10代の広瀬が応えられた、と業界の側が認めた年だった。是枝監督との縁はここで終わらず、10年後にもう一度、別の四姉妹の妹役で同じ場所に呼び戻されることになる。

続編が同じ顔で呼び戻す

翌2016年、広瀬は単独初主演で原作付きシリーズの正面に立つ。『ちはやふる -上の句-』。末次由紀の少女漫画を原作に、競技かるたに人生を懸ける女子高生・綾瀬千早を演じた。続く『-下の句-』、2018年の『-結び-』まで三部作を完走し、第40回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を獲得している。

漫画原作のシリーズで主役を続けるのは、見た目以上に骨が折れる仕事だ。原作の熱心な読み手は、頭の中でキャラクターの輪郭を高い解像度で保ったまま劇場に来る。少しでも違うと感じれば、2作目は観に来ない。三部作を走り切れた事実は、原作のページから出てきた千早を、観客の側に違和感なく届けられたことを示している

2025年には日本テレビ系『ちはやふる-めぐり-』で同じ千早として再登場。映画三部作の主演が、9年後の続編ドラマでも同じ役で呼ばれている。原作のキャラクターの正規の宿主として、続編の側から指名され続けているということだ。

文芸原作の難役へ進む

漫画原作で型を作った広瀬が、難度の高い文芸原作の主役へ進むのが2022年の映画『流浪の月』である。凪良ゆうの本屋大賞受賞作を李相日監督が映画化した。広瀬が演じたのは、幼少期の出来事のせいで一生「あの事件の女性」として見られる家内更紗。社会の側から加害者と被害者に整理されてしまう関係を、その整理から零れる温度のまま生きる難しい役どころだ。第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞に選ばれている。

本屋大賞受賞作の映画化は、本好きの視線が最も厳しく注がれる仕事の一つだ。原作の主人公は、何十万人の読者の頭の中ですでに形を持っている。漫画のヒロインを完走させた俳優の次に渡された宿題が、人物の輪郭が言葉でしか掴めない文芸原作の主役だった、と読める。同じく李相日監督の『怒り』(2016)で米兵の事件に巻き込まれる女子高生を演じた縁の6年後に、長い主演を改めて渡す。時間差の信頼関係が、監督と俳優のあいだに積まれている。

別ジャンルの名作が同じ年に並ぶ

2025年、広瀬は同じ年に二つの古典の主役を並行している。ひとつはNetflix『阿修羅のごとく』。1979年に向田邦子が書いた名作群像劇を是枝裕和監督がリメイクした作品で、広瀬は四姉妹の四女・竹沢咲子を担った。10年前に『海街diary』で四姉妹の末妹を任せた監督が、別の四姉妹の四女として同じ俳優を呼び戻した格好だ。間には是枝の『三度目の殺人』(2017)で被害者遺族の女子高生を演じた縁も挟まる。同じ作家性のある現場の中心近くに、10年で三度置かれた俳優はそう多くない。

もうひとつは映画『遠い山なみの光』。カズオ・イシグロのデビュー長編を石川慶監督が映画化した一本で、広瀬は戦後の長崎を生きる悦子を主演で演じた。第49回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、第68回ブルーリボン賞主演女優賞など、同年の主役格として、主要映画賞に名前が並んだ。

向田邦子と、カズオ・イシグロ。本来まったく違うはずの二つの名作が、同じ一人の俳優のもとへ同じ年に並んで届く。これは作品数で説明できる現象ではない。読者の側に完成された世界を抱える原作の主人公として、別ルートから別の作家の現場に呼び込まれていく女優の名前なのだ。

昭和名作のリブートでの存在感

2026年7月配信のNetflixシリーズ『ガス人間』で、広瀬はまた別の名作の側に立つ。1960年公開の東宝特撮映画『ガス人間第一号』を、日韓共同制作でリブートする企画である。監督は『岬の兄妹』の片山慎三、脚本は『新感染半島』のヨン・サンホ。小栗旬が主演を務め、広瀬は林遣都と兄妹役を組んで、都市伝説系の動画配信を運営する妹・カホを演じる。

漫画、本屋大賞作、戦後の家庭劇、英語圏のデビュー長編、そして昭和の名作リブート。並べてみると原作の種類はてんでばらばらで、それぞれの読者・観客もまったく違う層にいる。それでも広瀬に渡される位置は一つに揃う。元の世界を知る人が大勢いる、その物語の正面に立つ。吉田秋生から、末次由紀、凪良ゆう、向田邦子、カズオ・イシグロ、そして東宝特撮の遺産まで。読者と観客が先に居座っている場所へ、生身で乗り込んでいく10年を、広瀬すずはこの夏もう一度更新する。


※記事は執筆時点の情報です

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