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35年前、20歳で映画賞を総なめした「伝説の美少女」NHK朝ドラから大河まで引っ張りだこの“名女優”とは

  • 2026.6.25
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和久井映見-1998年7月撮影(C)SANKEI

役者の顔は、時間とともに変わっていく。20代の華やかな立ち姿と、50代の落ち着いた重み。同じ人のなかに、別の表情が積み重なる。和久井映見は、その移り変わりを典型的に体現してきた女優だ。

90年代、フジテレビ系月9の主演ヒロインとして恋に揺れる若い女を演じ続けた人が、2000年代以降は朝ドラ・大河の母役・妻役を重ね、いま、深夜帯のドラマで芸能事務所の社長役に立っている。同世代の視聴者にとって、和久井映見はかつての月9のスターのままだ。若い世代にとっては、母役・脇役で確かな佇まいを見せる女優として刻まれている。一人の女優のなかに、その二つが共存している。

20歳で助演女優賞と新人俳優賞を同時に獲った

和久井のキャリアは、最初から演技で評価されていた。1988年にフジテレビ系『花のあすか組!』でドラマデビューした和久井は、1989年から1990年代初頭にかけて『スワンの涙』『愛しあってるかい!』『すてきな片想い』『結婚したい男たち』とテレビドラマへの出演を重ねていく。映画でも1990年の『ぼくと、ぼくらの夏』で主演を任されており、20歳になる前から、テレビと映画の両方で起用される若手だった。

その実力が外部の物差しに刻まれたのが、1991年だ。山田洋次監督の映画『息子』で征子を演じ、同じ年公開の『就職戦線異状なし』に出演し。この2本の仕事に対して、和久井は第15回日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞と新人俳優賞を同時に受けた。20歳で2部門を一度に獲るのは、当たり前の出来事ではない。さらに2年後、1993年公開の東宝映画『虹の橋』で千代を演じ、第17回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受けている。22歳である。20代前半のうちに、助演・新人・主演の三つの賞を立て続けに手にしている女優は決して多くない。

トレンディドラマのスターとして茶の間に広く名前を覚えられる前に、和久井はすでに演技そのものの確かさで業界から認められていた。後年、彼女がどんな静かな役を引き受けても画面が締まるのは、この出発点に理由がある。受賞という形で芝居の土台を先に固めた女優だったのだ。

月9のヒロインを連投で背負った

1990年代の半ばから後半にかけて、和久井はフジテレビ系月9の主演を続けて任された。1994年放送のフジテレビ系『夏子の酒』で連続ドラマの主演を経験した直後、同年の『妹よ』で松井ゆき子を、1996年の『ピュア』で折原優香を、1997年の『バージンロード』で桜井和美を演じている。いずれも和久井が主演ヒロインとして物語の中心に立った。当時の月9はトレンディドラマの代名詞。20代の和久井は、その時代を象徴するヒロインの一人として広く知られていく。

ここで見ておきたいのは、いずれの役も派手な見せ場で物語を引っ張るタイプのヒロインではないという点だ。『ピュア』の折原優香は軽度の知的障害があり、白い羽のオブジェ制作に才能を持つ女性。記者に守られながら少しずつ世界を知っていく役だった。『バージンロード』の桜井和美は結婚式へ向かう花嫁。『妹よ』の松井ゆき子は純朴な田舎の女性。等身大の若い女が恋や家族と向き合う物語を、和久井は静かに背負ってきた。スター然と前に出るのではなく、画面の中心で穏やかに立っていられる芯。それが20代の彼女の確かな武器だった。

NHKが母・妻役の常連に据えた

2000年代に入ってから、和久井はNHKで徐々に役どころを深化させていく。NHK大河ドラマでは『武蔵 MUSASHI』(2003)のりん、『功名が辻』(2006)の濃姫、『平清盛』(2012)の池禅尼、『青天を衝け』(2021)の渋沢ゑい、『どうする家康』(2023)の寧々と、5作にわたって主役の傍らで妻や母を演じてきた。NHK連続テレビ小説でも『ちりとてちん』(2007)の和田糸子、『ひよっこ』(2017)の永井愛子と、母役を任されている。

ここでの和久井は、もはや若い頃の月9ヒロインの顔ではない。落ち着いた佇まい、丁寧に間を取る所作、見守る側の眼差し。NHKが繰り返し配置してきたのは、彼女が画面の中心で穏やかに立っていられた20代のヒロイン時代から地続きの、静かに場を締める力だ。

トレンディの顔から渋みの佇まいへ。和久井映見のなかで、この移行は派手な転身ではなく、ゆっくりとした年月の積み重ねだった。

深夜帯の社長役、その先へ

そして2026年、和久井は新しい場所に立つ。NHK総合の夜ドラ『ミッドナイトタクシー』で、和久井は蘭弥生を演じている。主人公・象子(古川琴音)の伯母であり、芸能事務所の社長。母に捨てられた姪を引き取って育て、所属の若手俳優を世に送り出す立場だ。またテレビ朝日系のドラマ『ダブルエッジ〜甦った男』では、織田裕二演じる主人公の妻・郡司真由希を演じる。織田との共演は、約34年ぶりだという。

蘭弥生の社長役という配置に、和久井映見というキャリアの厚みが、ちょうど良い形で乗っている。月9のヒロインだった彼女を覚えている同世代の視聴者は、その顔がいま誰かを送り出す側に座っている姿に、時間の長さを感じる。若い世代にとっては、母役・妻役で見てきた女優が、もう一歩踏み込んで人を育てる役へ進んだ瞬間として届くはずだ。

20歳で外部の賞に認められ、月9のヒロインを連投し、NHKで母・妻役の常連となり、いま誰かを育てる役へ。一人の女優のキャリアにこれだけの幅があるということ。和久井映見は、その幅をゆっくりと、しかし確かに歩いてきたのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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