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8年前、実力派グループのボーカルとしてデビュー。過激なBL作、冷徹なモラハラ夫を経た“現在地”とは

  • 2026.6.20
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

役のたびに、画面の温度が変わる俳優がいる。沢村玲だ。モラハラ夫の冷たさ。拘置所に立つ人物の張りつめた静けさ。親友に向けて落とす、甘い声。並べてみると振り幅が大きすぎて、つい「演技力がすごい」とまとめたくなる。

でも、その正体はもっと具体的なところにある。沢村玲は、ボーカルダンスグループONE N' ONLYのボーカルを担う一人。一曲ごとに声色を切り替える、その本職の可塑性こそが、役の温度を変える力の正体だ。

声色を替えるのが本職だ

まずは音楽の側面から見ておきたい。沢村が所属するONE N' ONLYは、2018年に結成された5人組。沢村はボーカルの一角で、歌で前に立つ位置にいる。ここで見落としたくないのは、彼が「ボーカル一人」ではなく「ボーカルの一角」だということ。一人で全部を背負うソロの歌い手とは、立ち位置がそもそも違う。仲間と並んで前へ出る場所に、長く立ち続けてきた人なのである。

ボーカリストの仕事は、一曲ごとに声の色を、つまり温度を切り替えることだ。明るい曲では軽く、切ない曲では湿り気を帯び、激しい曲では尖る。同じ喉から、まったく違う温度を出してみせる。歌い手にとって、これは特別なことではなく日々の基本である。

俳優が一から身につける「声で感情を届ける」技術を、沢村はステージの上ですでに鍛えてきた。この声の引き出しの多さと、誰かと並んで前に立つ呼吸。その両方が、のちに役を演じ分ける力の地金になっていく

激情の温度を芝居に注ぐ

歌で鍛えた音色が、芝居に流れ込んだひとつが、フジテレビ系とFODで配信された『ハッピー・オブ・ジ・エンド』(2024年)。おげれつたなかのBL漫画が原作で、沢村はW主演でケイトを演じた。

激しい感情を画面で振り切るのは、難しい。やりすぎれば嘘になり、抑えれば伝わらない。その加減を、沢村は演技の地力だけでなく、歌でコントロールしてきた音色の幅で乗りこなしている。どこまで声を張り、どこで引くか。歌い手の喉が覚えている温度の調節が、そのまま役の感情の調節になった。

そして見逃せないのが、W主演だったこと。一人で持ちこたえるのではなく、相手と分け合って物語を立てる。グループで前に出てきた人間にとって、これは未知の形ではない。激しい音色を出せること以上に、それを相手役と噛み合わせて成立させたこと。そこに、俳優・沢村玲の最初の武器がある

演じる役と、流れる曲が重なる

歌と芝居が、文字どおり一つの画面で交差した作品がある。2025年の日本テレビ系ドラマ『子宮恋愛』。沢村が演じた苫田恭一は、冷たく抑圧的なモラハラ夫だ。声を張らず、温度をぐっと下げて相手を追い詰める芝居である。

前作で激しさを振り切った喉が、こんどは真逆へ振れる。張らないことで圧をかける芝居は、張る芝居より難しい。出す技術を持っている人間が、あえて出さない。その引き算ができるのは、出し引きの幅を知っているからだ。

振り幅の端、そして二人で背負う

温度の引き出しは、さらに端まで伸びていく。2026年の日本テレビ系『パンチドランク・ウーマン −脱獄まであと××日−』で、沢村はトランスジェンダーの人物を演じた。激しさとも冷たさとも違う、もう一つ別の温度。ボーカリストが持ち歌を一曲増やすように、彼は演じられる役の音色をまた一つ増やしている。

その振り幅が行き着く先が、2026年6月からのドラマ『今から、親友やめようか。』(MBS)だ。沢村が演じる北条和巳は、容姿端麗で長年恋人を作らない、PR会社の同僚。岡本夏美演じる柴崎ひまりとのW主演である。

冒頭にあげた「甘い声」は、この役のものだ。冷たいモラハラ夫を演じたのと同じ喉から、こんどは親友をくすぐる甘い温度が出てくる。

ここで効いてくるのが、最初の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』から続くW主演の系譜だ。相手役と画面を二人で分け合うW主演は、一人で立つソロの歌い手ではなく、グループで客席を沸かせてきた人にこそ向いている。誰かと並んで物語を背負う。その重心は、ステージでも芝居でも変わらない。

激しさ、冷たさ、甘さ。三つの温度を出せること以上に、その都度ちがう相手と組んで物語を立ててきたこと。それが、この人の強みだ。役ごとに温度を切り替えられるのは、声で温度を作るボーカリストの本職が、そのまま芝居に流れ込んでいるからだ。歌と芝居、その両輪が次にどんな温度を見せるのか。一曲ごと、一役ごとに表情を変えていくこの人から、まだ目が離せそうにない。


※記事は執筆時点の情報です

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