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朝ドラ【風、薫る】りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、タイプ違いでも“ベタベタしない信頼”が育つ瞬間

  • 2026.5.25

朝ドラ【風、薫る】りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、タイプ違いでも“ベタベタしない信頼”が育つ瞬間

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

弱い存在が力を合わせて強大な理不尽に立ち向かう

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第8週「夕映え」が放送された。

帝都医科大学附属病院で看護婦見習いとして働きはじめた、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)の奮闘は続く。

今週軸となりストーリーを動かしていくのは、乳がんのため入院してきた和泉侯爵夫人の千佳子(仲間由紀恵)の存在だ。身分はもちろん、プライドも高い彼女は、附属病院の入院自体に不平不満をのべる。そんな千佳子の担当をするのがりんだが、千佳子はりんを女中呼ばわりし、女中なら事足りていると突き放す。りんは私たちは女中ではなく、西洋ではトレインドナースとよばれるれっきとした職業であることを説明する。
「女中でないなら一体何をしてくださるの?」

看護の本質に添うように千佳子の気持ちに寄り添おうとするものの、それを「思い上がらないで」と言われてしまう始末。自分なりにがんばるが、なかなかその気持ちは通じない。これはどこか嫁ぎ先の姑や勤め先の頭の固い上司などに理不尽な目にあいながらも真っ直ぐがんばるという、ある意味従来の朝ドラ主人公の定番のような扱いともいえる(もっともりんは序盤に結婚し、すでに嫁ぎ先で理不尽な目にあっているわけではあるが)。

このモンスター患者のような描かれ方の千佳子は、りん個人に強く当たるわけではなく、病院全体からも腫れもののような扱いとなっている。何かあったときに病院のせいにされるのではなく、りんたち梅岡看護婦養成所に責任をかぶせればいいという考えだ。

しかし、そんな目論みはりんたちの指導をするバーンズ(エマ・ハワード)にはすべてお見通しだった。
「りんに看護させ、何かあれば養成所のせいにする気です」

医師たちに分からない英語で、医師たちの目の前でハッキリ言い切る。バーンズの自信に裏打ちされた強気ぶりが心地良い。そこに直美が、やはり英語で「上手くいけば実習生の手柄」と返す。

こういった立場の弱い存在が力を合わせて強大な理不尽に立ち向かう展開は、ジャンルを問わずワクワクするものである。見習いたちをはじめから下に見る医師たちや、千佳子をはじめとするわがままな患者たち。それらへの対処がりんたち見習い看護婦たちの結束、チーム感の形成につながっていく。中庭でそれぞれの弁当を一緒に食べるシーンも、お互いの信頼と友情を育んでいく青春の貴重な時間を感じさせてくれる一コマだ。

厳しく立ちはだかる存在かと思われたバーンズは、逆に彼女たちの自立を理解しながら支えるような頼もしい存在となった。そんななかでもりんと直美の関係性は、絶妙にすれ違いを見せてきた序盤があったからこそタイプ違いの二人のベタベタしない信頼関係がいつの間にか形成されていることが分かるような気がする。

「ずる賢い女って言ってくれません?」

りんのがんばりは、かたくなな千佳子の心を少しずつ開かせる。シーツのメイキングがよかったと、少しずつ受け入れる姿勢をみせたり、双六を一緒にやろうと提案し、そのエピソードから変わりゆく世界という共通の話題で空気が和らぎ、やがて涙を流しながら本音を吐露、あれだけこばんでいた身体をさするというところまでの流れが自然に描かれていく。ここはりんが元家老の家系であることが効果的にいかされており、それは直美とバーンズの狙いでもあった。そしてそれは正解だったことが分かる。

そのように、直美は見習いたちの中でも「わかってる」度が高いというか、医師ころがしのうまさなど、孤児として成長してきた中で培ったハングリー精神のような強さのもと、時には世渡り上手のような聡さをみせる。それを、
「他の見習いたちと違って、ずいぶんずるい女ね」
と看病婦に指摘されれば、
「ずる賢い女って言ってくれません?」
と返すところも直美のクレバーなキャラクターが実感できる。

とはいえそんな直美にも、大きく心が動かされる場面が並行して描かれる。ある日、街を歩いていた直美は、「お前は、夕凪か!?」と、見知らぬ老人に声をかけられる。彼の知る「夕凪」という女郎に直美が似ていたというのだ。親の名前も顔もわからず、自分がどこからきたのかというアイデンティティが喪失している直美にとって、生みの親かもしれない女性の手がかりは、気持ちを大きく揺さぶるものだ。

何か分かるかとあとをつけた先に出会ったのが、詐欺師の寛太(藤原季節)だった。寛太は直美が潜入しようとしたのは博打場で、近づかないほうがいい、自分が調べてやると言う。寛太は自分が人を騙すことにも、寛太なりの理由はあると自ら主張する。環境こそ違えど、家族という存在や愛を感じることなくそだった寛太とは、病院でもうまく立ち回ることのできるいっぽうで、どこか仮面をかぶっているところもある直美が本心を語っていく関係性になっていけそうで気になるところである。

「空が綺麗と思う人が主人でよかった」と語る千佳子の夫・元彦(谷田歩)が、りんが旧幕府時代に一ノ瀬家の出身であることが分かり、それをきっかけにりんと語り合うことで、夫には言えない千佳子の本音に触れ、千佳子に「私のために」と、手術を受けることを勧める。

「辛くとも、苦しくとも、生きてほしい」
この先もずっと一緒に美しい夕映えの空を見たいからだと。この夫の心からの愛を受け入れ、千佳子は手術を受けることを決意、りんはその手術に立ち会うことも「勉強になるでしょ」と千佳子から提案されるという受け入れられ方だ。

「実習生の手柄」という目論みが達成されるかどうかという目先の思いを超えた本質的な部分に触れた、りんたちの「看護」は、実習生たちの存在をさらなる上のものへと進ませていくことになるだろう。チームとして、直美とりんのバディとして、トレインドナースたちの進む道が楽しみになる展開だ。

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