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「あくびの伝染」は母と胎児の間でも見られる

  • 2026.5.15
あくびが母から胎児へ伝染する可能性 / Credit:Canva

誰かがあくびをしているのを目にすると、思わず自分もあくびをしてしまった経験はないでしょうか。

あくびの“伝染”は、人間同士の不思議な同調現象としてよく知られています。

ところが今回、イタリアのパルマ大学(University of Parma)を中心とする研究チームは、この「あくびの伝染」のような現象が、母親と胎児の間でも起きている可能性を示しました。

研究成果は2026年5月5日付で『Current Biology』に掲載されました。

目次

  • 「母親のあくび」は胎児にも伝染する可能性
  • 母親のあくびの90秒後、胎児はあくびをしていた

「母親のあくび」は胎児にも伝染する可能性

あくびは眠気や退屈のサインというイメージが強いですが、実は多くの動物にみられ、その原因についてはいくつかの説が存在します。

人間でも、胎児のあくびは妊娠中から確認されています。

しかも胎児は空気を吸えないにもかかわらず、ゆっくり口を開き、しばらくその状態を保った後、すばやく閉じるという、大人とよく似た特徴的な動きを見せます。

一方で、大人のあくびには「伝染性」があります。

他人のあくびを見ると、自分もつられてあくびをしてしまう現象です。

では、胎児のあくびにも、母親の行動が影響するのでしょうか。

研究チームはこの疑問を確かめるため、妊娠28〜32週の妊婦38人を対象に実験を行いました。解析に使えたのは36組です。

母親たちは静かな部屋で、3種類の映像を見ました。1つ目は人があくびをする映像、2つ目は単純に口を開けたり閉じたりする映像、3つ目は無表情の顔を映した映像です。

この間、母親の表情はビデオカメラで撮影され、胎児の顔は超音波装置によってリアルタイムで記録。

研究者たちは胎児の鼻や唇の動きを詳細に追跡し、DeepLabCutという解析ツールで口の開き方の時間変化を数値化しました。

また、単なる口開けと「あくび」を混同しないよう、3人の評価者が映像を1コマずつ確認しました。

短い口の開閉は除外され、「口をゆっくり開き、数秒間維持し、その後すばやく閉じる」という特徴的な運動だけを「あくび」と判定しています。

その結果、胎児のあくびは、母親があくびしやすい「あくび映像」の条件で特に増え、さらに母親のあくびの後に起こりやすいことが分かりました。

単なる口の開閉や静止顔では、同じような増加は見られませんでした。

では、母子のあくびはどのように同期していたのでしょうか。より詳細な結果は次項で見ていきましょう。

母親のあくびの90秒後、胎児はあくびをしていた

解析の結果、母親があくび映像を見ていた条件では、母親の約64%が少なくとも1回あくびをしていました。

同じ時間帯に、胎児側でも約53%にあくびが見られました。

しかも胎児のあくびは、ただランダムに起きていたわけではありません。

研究チームが詳しく調べると、胎児のあくびは母親のあくびの前よりも、母親のあくびの後に多く見られました。

最初のあくび同士を比較すると、胎児のあくびは母親のあくびから平均して約90秒後に起きていました。

ここで重要なのは、胎児が母親の顔を見て真似したわけではないという点です。

研究者たちは、母親のあくびによって起きる体内の変化が胎児に伝わった可能性を考えています。

例えば、あくびによって呼吸のリズムや横隔膜の動き、腹部の圧力が変わり、その刺激が胎児に伝わる可能性があります。

さらに、ホルモンや神経内分泌系の変化が関わっている可能性もあります。

研究チームはこれを「出生前の行動伝染」と表現しています。

もちろん、この研究には限界もあります。

サンプルサイズは小さく、実際にどんな信号が胎児へ伝わっているのか、まだ分かっていません。

それでも今回の研究は、子宮内の胎児が完全に切り離された存在ではなく、母親の体の変化と結びつきながら行動している可能性を示したと言えるでしょう。

参考文献

Yawning is Contageous Even in the Womb. Fetuses May Yawn After Their Mothers
https://www.zmescience.com/medicine/yawning-is-contageous-even-in-the-womb/

Like mother, like fetus: Study finds contagious yawning begins in the womb
https://medicalxpress.com/news/2026-05-mother-fetus-contagious-womb.html

元論文

Prenatal behavioral contagion through maternal yawning and fetal resonance
https://doi.org/10.1016/j.cub.2026.04.025

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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