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職場の先輩女性に惚れた新人男性。彼が相思相愛だと思っていた関係を、先輩の目線で見てみたら…認識のズレが生む恐怖を描いた短編集【書評】

  • 2026.5.12

【漫画】本編を読む

鏡に映った自分と、映像に映った自分の違いに戸惑った経験はないだろうか? あるいは、録音した自分の声を聞いて覚える違和感など。『あなたの正義 わたしの絶望 ~その「主観」が毒になる時~』(理系女ちゃん/KADOKAWA LifeDesign)は、自分と他人との間に生じる認識のズレをテーマにした短編集である。

物語は、職場の美しい先輩に淡い恋心を抱く男性の視点から始まる。純粋なラブストーリーに見えるが、同じ出来事が先輩側の視点で語られた瞬間、その印象は一変する。この視点の反転が本作の特徴だ。ある人にとっては善意であり正義である行動が、別の人にとっては恐怖や苦痛として受け取られる。自分の中では筋が通っているはずの思考が、他者から見れば危うい執着や暴走に変わる。その落差が、読み手に強烈な違和感と不安をもたらすのだ。SNSで「対比にゾクッとした」などと話題になったのも頷ける。

本作に収録されているのは、上司と部下、恋愛関係、家族といった日常的なシチュエーションを舞台にした物語だ。いずれも共通しているのは、当事者の片方には「自分は間違っていない」という確信があり、他方には全く別の見え方が存在する。主観そのものがもたらす危うさに焦点を当てている点が実に印象的である。

そして、過度な演出や虚飾のない語り口が、物語をよりリアルに、より不穏に仕上げている。淡々とした視点の対比だけを連ね、読み手に気づきを促す構成は一流のホラー映画を見たような読後感を残すと同時に、自分の信じる正しさに疑念を抱かざるを得ない。

誰もが持っている「自分基準」が他者を困惑させ、もしかしたら傷つけているかもしれない。少し立ち止まり、これまで自分がしてきた行動を振り返りたくなる作品だ。

文=馬風亭ゑりん

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