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テレビが壊れたことで蘇る昭和の懐かしい思い出。大吉じいちゃんと愛猫タマが紡ぐ、何気ないけど愛おしい日々を綴ったコミックエッセイ第12巻【書評】

  • 2026.5.7

【漫画】本編を読む

『ねことじいちゃん』(ねこまき(ミューズワーク)/KADOKAWA)は、妻に先立たれた大吉じいちゃんと、相棒の猫・タマの暮らしを、四季の移ろいとともに描いたコミックエッセイだ。舞台は、老人と猫ばかりの小さな島。そんな穏やかな時間の中で紡がれる日常が心にじんわりと沁みてくる。

第12巻では、テレビをテーマにしたエピソードが描かれる。ある日、タマがテレビを倒して壊してしまったことをきっかけに物語は動き出す。突然音が消えた部屋の静けさの中で、大吉じいちゃんはふと、自分の人生が常にテレビとともにあったことに気づく。

近所の人たちと集まって見たプロレス、銭湯で一緒になった人たちと肩を並べて熱狂した野球中継、電気屋の店先で見守ったホームランの瞬間、そして夕食中に息子とテレビに夢中になりすぎて、今は亡き妻に怒られた記憶。昭和という激動の時代を歩んできた大吉じいちゃんにとって、テレビは単なる家電ではなく、大切な人たちとの思い出を作った存在だったのだ。

また、島の診療所に勤める医師の「若先生」が一時的に島を離れるという、少し寂しいエピソードも描かれるが、島のみんながその帰りを待ちわびる様子は、島外の人も受け入れる住民たちの温かさを感じてほっこりするだろう。

そんなタマと一緒に過ごしながら旬のおいしいものを食べ、季節を感じながら暮らす大吉じいちゃんの姿を見ていると、毎日同じことの繰り返しで忙しなく過ぎていく毎日には、二度と戻らない一瞬一瞬に輝きがあることを気づかせてくれる。そしてもちろん、12巻でも大吉じいちゃんと猫たちのコミカルなやりとりと「猫あるある」もたくさん描かれているので、島暮らしのゆっくりとした時間と猫に癒やされたい人はぜひとも手にとってほしい作品だ。

文=坪谷佳保

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