1. トップ
  2. エンタメ
  3. 『シンプル・アクシデント/偶然』が描く滑稽な復讐劇。世界が注目する一本がついに日本公開!

『シンプル・アクシデント/偶然』が描く滑稽な復讐劇。世界が注目する一本がついに日本公開!

  • 2026.5.8

偶然は、ときに人生を決定的な方向へと転がしてしまう

©LesFilmsPelleas

世界がこの一本に視線を注いでいる。ジャファル・パナヒ監督の最新作『シンプル・アクシデント/偶然』は、第78回カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞し、第98回アカデミー賞®では脚本賞・国際長編映画賞(フランス代表)の2部門にノミネート。世界の映画祭・映画賞を席巻し、39の受賞、120を超えるノミネートを記録している。評価の高さはもちろんだけれど、それ以上に本作が放つ切実さが、今この時代に強く響いている。

©LesFilmsPelleas

物語は、ある夜に起きた小さな事故から始まる。修理を求めて工房にやってきた義足の男。その足音を聞いた瞬間、主人公・ワヒドの心に封じ込めていた記憶が蘇る。それは、かつて不当に投獄され、人生を奪われた過去。その男は、憎むべき看守なのか、それともただの“偶然”に居合わせた無関係な人物なのか。確証のないまま進む復讐は、やがて複数の当事者を巻き込み、観る者を深い葛藤へと引き込んでいく。

本作が特異なのは、復讐劇でありながら、ユーモアと滑稽さを失わない点。議論は噛み合わず、計画は迷走し、時間だけが過ぎていく。その姿はサスペンスであると同時に、不条理な人間ドラマでもある。誰かを裁く“正義”は、本当に自分を救うのか。私たちは登場人物たちの葛藤に巻き込まれながら、容易に答えの出ない問いと向き合うことになる。

©LesFilmsPelleas

イラン当局による弾圧と二度の投獄を経て映画を撮り続けてきたジャファル・パナヒ監督にとって、本作は単なるフィクションではない。国家暴力の記憶、沈黙を強いられてきた人々の声、そして「許し」という選択肢の重さ。終盤、怒りが頂点に達したその先で示されるのは、爽快感ではなく、深い余韻と居心地の悪さ。

そして迎えるラストシーン。言葉を失い、席を立つことをためらうほどの余韻が、主人公の背中から押し寄せてくる。復讐では終われなかった感情、簡単には片づけられない問い。そのすべてを、あの数分間が体に刻み込んでくる。世界が注目する理由を、ぜひスクリーンで。

【5月8日(金)公開!】『シンプル・アクシデント/偶然』

©LesFilmsPelleas

監督・脚本/ジャファル・パナヒ 『白い風船』『チャドルと生きる』『人生タクシー』『熊は、いない』

出演/ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤスメール

※新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開!

simpleaccident.com

X @IWJAA_JP

TEXT=南雲凛子

元記事で読む
の記事をもっとみる