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「うまくやってくれればいい」と夫が不倫を公認したら? 罪悪感と後悔に苛まれる「オープンマリッジ」の現実【書評】

  • 2026.4.30

【漫画】本編を読む

少し前に、「オープンマリッジ」という言葉がネット上で話題になった。これは夫婦間で合意の上で、配偶者以外の人と恋愛関係を持つことだ。『夫の公認なら不倫してもいいですか?』(グラハム子/KADOKAWA)は、そんなオープンマリッジと似たような状況を入り口に、人間の弱さや罪悪感を描き出したコミックエッセイだ。一見すると刺激的なテーマだが、読み進めるほどに、夫婦関係の歪みや心の空白が浮き彫りになっていく。

主人公のかなは、5歳年上の夫と小学2年生の娘と暮らす35歳の主婦。家庭は円満で、パート先での人間関係も悪くない。人生はそれなりに幸せ――そう思っていたはずだった。しかし、パート先に赴任してきた同い年の店長に惹かれ、やがてふたりは密かに会うようになり、ついには体の関係を持ってしまう。そんなある日、不倫の事実を夫に知られてしまう。ところが、ここで予想外の展開が待っていた。夫は離婚を拒み「不倫を続けてもいい」と言うのだ。

この作品の興味深いところは「公認」という自由に見える状況が、決して解放感のあるものではない点だ。むしろ、主人公は不倫の罪悪感と後悔に追い詰められていく。心のスキマを埋めてくれるはずの婚外恋愛という関係が、自身を縛る鎖のようになる過程が描かれている。

さらに、物語の背景には、かなの人生の選択の問題もある。彼女は結婚を機に夫の希望で正社員の仕事を辞め、パートとして家庭を支えてきた。周囲からは「羨ましい」と言われながらも、どこか満たされない気持ちを抱えていた。さらに義母の世話など、さまざまな状況が積み重なった結果、彼女は道ならぬ恋へと足を踏み入れてしまうのだ。

本作が描くのは、単純に不倫の是非ではなく、「夫婦とは何か」「自由とは何か」という問いだ。たとえ夫が許したとしても、裏切りは消えない。むしろその曖昧な関係が、かなをより苦しめていく。もし配偶者が「不倫してもいい」と言ったとしたら、それは本当に自由なのか。それとも夫婦関係の崩壊の始まりなのか。不穏な問いを突きつける、心理ドラマである。

文=七井レコア

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