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恋愛に不安を抱える人ほど「フェラーリや豪邸」を欲しがると判明――なぜなのか?

  • 2026.4.30
恋愛に不安を抱える人ほど「フェラーリや豪邸」を欲しがると判明――なぜなのか?
恋愛に不安を抱える人ほど「フェラーリや豪邸」を欲しがると判明――なぜなのか? / Credit:Canva

ポーランドのSWPS大学が5か国4456人を対象に行った研究によって、恋愛や対人関係への不安が強い人ほど、フェラーリやロールスロイスといったステータスを象徴する車や住宅を欲しがる傾向にあることが明らかになりました。

さらに、その原因は単なるモノ好き(物質主義)でも、一般的な負けず嫌いでもなく、これらを差し引いても効果が残ることが確認されています。

いったい、なぜ恋愛の不安が高級車への渇望に変わるのでしょうか?

研究内容の詳細は『Journal of Personality and Social Psychology』にて公開されました。

目次

  • 高級品で「武装」する人の心の奥とは?
  • 恋の不安を思い出させるだけで、フェラーリが欲しくなる
  • 見せびらかしは「支配」の衝動だった

高級品で「武装」する人の心の奥とは?

Credit:Canva

SNSで高級時計を見せる人、タワマンの夜景を映す人、さりげなく車のエンブレムが写り込んだ写真を投稿する人。

そうした「見せびらかし」を目にしたとき、「お金持ちなんだな」で終わる人もいれば、モヤっとした反感をおぼえる人もいるでしょう。

けれど今回の研究が示しているのは、あの誇示の裏側に「自分は十分に愛されていないかもしれない」という不安が隠れている可能性です。

高級品という「鎧」で身を固めているように見える人ほど、その内側は意外なほど傷つきやすいのかもしれません。

ここで鍵になるのが、心理学でいう「愛着不安」と呼ばれる概念です。

人は幼い頃の親や養育者との関わり方をベースに、大人になってからの対人関係の「クセ」を無意識に身につけていきます。

愛着不安が強い人は「相手に見捨てられるのではないか」「本当は愛されていないのではないか」と慢性的に不安を感じる傾向があります。

恋人の返信がいつもより少し遅いだけで落ち着かなくなったり、「嫌われたかも」と頭の中がぐるぐるしたり――そんな経験に心当たりがある方もいるのではないでしょうか。

哲学者アラン・ド・ボトンは著書『ステータスの不安』の中で、地位不安の根本原因は「愛されないこと」にあると論じました。

今回の研究チームは、まさにこの洞察を科学的に検証しようとしたのです。

これまでの研究で、愛着不安が強い人は物質的な価値観が高い傾向にあることは知られていました。

しかし、なぜ愛着不安が地位への執着につながるのか、そのメカニズムまでは十分に解明されていませんでした。

そこで研究チームは、「恋のライバルへの対抗心」という、これまで見落とされてきた中継地点に注目したのです。

恋の不安を思い出させるだけで、フェラーリが欲しくなる

フェラーリが欲しくなる瞬間とは?

Credit:Canva

研究チームはまず、英国・南アフリカ・カナダでの大規模調査で基本的な関連を確認したうえで、因果関係を確かめるための実験に進みました。

米国の382人を2グループに分け、一方には「自分が十分に愛されなかった関係」を、もう一方には「自分が相手と距離を置きたかった関係」を思い出してもらいます。

そしてフェラーリ、ランボルギーニ、ロールスロイスからトヨタ、キアまで10ブランドの車について、「どれくらい所有したいか」を0〜100点で答えてもらいました。

注目すべきは、2つのグループの間に現れた差のパターンです。

「愛されなかった記憶」を呼び起こされたグループは、フェラーリやロールスロイスのような高ステータスブランドをより強く欲しがりました。

ところが、トヨタやキアのような日常的なブランドでは差が出なかったのです。

つまり彼らが欲しくなったのは「車」ではありません。「自分の格を周囲に見せつけられる車」です。

しかし、これだけではまだ、同性間競争という中継地点そのものを実験的に操作したわけではありません。

問題は、不安と高級志向をつなぐ「回路」の正体です。

恋のライバルという「スイッチ」

研究チームが見出した回路、それが同性間競争でした。合コンで気になる相手がいて、隣にもその人を狙っている同性がいたら「負けたくない」と感じる――あの感覚です。

これを強く裏づけたのが、1,358人を対象にした最後の実験でした。

参加者をまず、愛着不安を思い出す群と、見知らぬ人との嫌な経験を思い出す対照群に分け、続いてあるシナリオを想像してもらいます。

「ずっと独身だったが理想の相手を見つけた。しかしその人を狙っている同性のライバルが3人もいる」。これが競争強化群です。一方で「ライバルは誰もいない」と告げる競争低減群も設けました。

そのうえで、あらかじめステータスの高低が検証済みの住宅写真6枚を見せ、「この家をどれくらい欲しいか」「この家のオーナーをどれくらいうらやましいか」を100点満点で答えてもらいました。

同性間の競争を操作しないベースライン条件では、恋愛不安を刺激された人だけが高級住宅を強く欲しがりました。

しかし同性間競争を強化すると、どちらの愛着条件でも高級住宅への評価が高まり、愛着不安による差は見えなくなりました。

逆に競争を低減すると、愛着不安の効果もまた消えたのです。

しかも普通の住宅では、どの条件でもまったく差が出ませんでした。

つまり同性のライバルへの対抗心こそが、愛着不安と高級志向をつなぐ本当の回路であることが、この実験で裏づけられたのです。

見せびらかしは「支配」の衝動だった

見せびらかしは「支配」の衝動だった
見せびらかしは「支配」の衝動だった / Credit:Canva

もうひとつ、見逃せない発見があります。

社会的地位を手に入れるルートには大きく2種類あります。力や財力で周囲を圧倒する「支配(dominance)」と、スキルや人柄で自然と尊敬を集める「名声(prestige)」です。

研究の結果、愛着不安が駆り立てるのは「支配」型だけでした。名声型とは一切結びつかなかったのです。

考えてみると、これは筋が通っています。

名声は長い時間をかけてスキルや信頼を積み上げて初めて手に入るもの。

一方で支配は、高級車を一台買うだけで「今すぐ」格の違いを見せつけることができます。

じっくり実力を磨くより、手っ取り早くモノで圧倒する。「愛されている確証が持てない」という不安を抱えた人が、即効性のあるほうに手を伸ばすのは、ある意味で自然な心の動きなのかもしれません。

ただし著者らは、ひとつ残酷な留保をつけています。

愛着不安の高い人は地位を「追い求める」けれど、外向性が低く情緒が不安定な傾向があるため、実際に地位を「手に入れられる」とは限らない、と。

追い求めるほどには報われない可能性があるという皮肉な傾向です。

なおこの効果は男女を問わず確認されており、恋人だけでなく親や友人との関係における不安でも同じパターンが生じています。

研究チームは「愛着不安の強い人は、満たされない人間関係の穴を埋めるために地位を追求し、同性のライバルとの競争を通じてそれを実行しているのだろう」と結論づけています。

(※ただ今回の参加者は主にシスジェンダーの異性愛者に限られており、LGBTQ+などを含む調査は今後の課題です)

もしあなたの身近に、やたらとブランド品やステータスの高い持ち物をアピールする人がいるなら、その人が本当に求めているのは他人の羨望ではなく、「自分はここにいていい」という安心感なのかもしれません。

「自分は大切にされていないかもしれない」という不安を慢性的に感じやすい人は、高級車や豪邸といったステータスの象徴を欲しがる傾向がある。この関連は、恋人との関係に限った話ではありませんでした。
今回の研究では、参加者を「恋人のことを思い浮かべながら回答する」グループと「親やきょうだい、友人のことを思い浮かべながら回答する」グループに分けて比較しています。結果はどちらも同じでした。
つまり「人間関係の不安が地位への執着につながる」という大枠は、相手が恋人であれ家族であれ友人であれ、変わらないということです。
なぜか。おそらくそれは、この不安が「あの人との関係」に限った問題ではなく、「人とのつながり方」の根本的なクセだからでしょう。幼い頃の親との関わり方から無意識に身についた「自分は見捨てられるかもしれない」という感覚は、人生のあらゆる関係に顔を出します。そしてその満たされなさを、地位や高級品という目に見える形で埋め合わせようとする衝動が生まれるのだと考えられます。
ここまでは「不安があると高級品が欲しくなる」という話ですが、研究チームはさらに踏み込んで、その不安が高級品への欲求に変わる「通り道」まで突き止めています。
その通り道は、同性のライバルへの対抗心でした。
実験では、参加者にこんな場面を想像してもらいました。「ずっと独身だったが、ついに理想の相手に出会った。でもその人を狙っている同性のライバルが3人いる」。するとこの状況を想像しただけで、高級住宅への欲求が跳ね上がったのです。逆に「ライバルはいない」と伝えると、その欲求は静まりました。
なぜ恋のライバルがステータスの欲求を刺激するのか。それは、高級品の「見せびらかし」がそもそも「自分は恋愛相手として価値がある人間だ」と同性のライバルに知らしめるためのアピール手段として進化してきた可能性があるからです。鹿が立派な角でライバルを牽制するのと根本的には同じ原理です。
この「ライバルのスイッチ」を実験で入れたり切ったりできたのは、恋愛の競争場面だけです。友人関係のライバルで同じことが起きるかは、まだ検証されていません。
人間関係の不安は、相手が恋人でも親でも友人でも同じように地位への執着を生みます。でもその不安が「フェラーリが欲しい」「豪邸に住みたい」という具体的な形になるとき、心の中では恋のライバルへの対抗心という、もっと原始的なスイッチが入っているようです。
たとえば友人関係に不安を抱えている人が高級時計を欲しがるとき、その不安の発端は友人関係かもしれません。でもそれを「ステータスで自分の価値を見せつけたい」という衝動に変換する回路は、「恋敵に負けたくない」という古い本能的な仕組みを通っている。そう考えると、あの見せびらかしの根っこにあるのは「モノが欲しい」という欲望ではなく、「自分は誰かに選ばれるに値する人間なのだ」と確かめたい切実な気持ちなのかもしれません。

元論文

Anxious Aspirations: Attachment Anxiety Fuels Status Strivings Through Intrasexual Competition
https://dx.doi.org/10.1037/pspi0000512

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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