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「100km/hでハンドルがブレるんです」軽い気持ちで放置した1ヶ月後、整備士が青ざめたタイヤの“異変”

  • 2026.5.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「高速で少しハンドルがブレるだけだから、まだ大丈夫だと思っていました」

そんな“なんとなくの違和感”を後回しにした結果、タイヤ内部が破損し、高速道路でバースト寸前まで進行していた…。

実際に整備現場であったのは、目に見えないタイヤ内部の損傷が、静かに進行していたケースでした。

タイヤの振動は、「まだ走れる」ではなく「正常な状態なのか」で判断することが重要です。今回は、軽微な振動を見過ごしたことで危険な状態に発展した事例を紹介します。

「100km/hくらいでハンドルが細かくブレるんです」

ある日、30代男性のお客様・Aさんが国産ミニワゴン車でオイル交換に来店しました。作業受付の際、

「高速道路で100km/hくらい出すと、ハンドルが細かくブレるんですよ」といった相談を受けました。

こちらが「低速では出ませんか?」と聞くと、

Aさんは「街中ではほとんど気にならないですね。高速道路だけです」との返答。

こうした“速度域限定の振動”は、タイヤやホイールの異常でよく見られる典型的な症状です。

実際に試乗してみると、一定速度で周期的な細かい振動を確認。ハンドルへ規則的に「ブルブル」と入力が来る状態でした。リフトアップして点検すると、原因はすぐに見えてきました。フロントタイヤの内側だけが大きく偏摩耗していたのです。さらに確認すると、ホイールバランスもズレていました。

ただ、この状態では「単純なバランス不良だけ」とは言い切れません。内側だけ極端に摩耗している場合、アライメント不良が隠れているケースも多いためです。

Aさんには、「このままだと偏摩耗がさらに進みます。アライメント測定もした方がいいですね。タイヤ交換時期も近いので、交換と合わせて修正した方が安心です」と説明しました。

「来月タイヤ交換するので…」が危険な分岐点に

しかしAさんの返答は、「来月どうせタイヤ交換する予定なんで、それまで我慢します」というものでした。

確かに、その時点ではまだ走行自体は可能でした。ですが、問題は“摩耗の仕方”です。

タイヤは、本来トレッド面全体が均一に接地する前提で設計されています。ところが偏摩耗が起きると、一部だけに過剰な負荷が集中します。特に高速走行では、タイヤは高速で回転するため常に発熱しています。その状態で偏摩耗部分ばかりに負荷がかかると、トレッド面(地面に接している面)がさらに薄くなり、内部のカーカスコード(タイヤの骨格)へダメージが蓄積していきます。

最初は単なる「ブレ」だった振動も、次第に変化していきます。

Aさんは後日、「最近、振動が“叩く”感じになってきたんですよね」と再来店されました。

実際に走らせると、以前の細かな振動とは明らかに違います。ゴツゴツ、ドンドンと路面を叩くような感触です。再度タイヤを確認すると、さらに摩耗が進行。しかも、タイヤ側面に不自然な膨らみが発生していました。これはいわゆる「バルジ」や「ピンチカット」と呼ばれる状態です。

一般的には、段差への強い乗り上げや衝撃で内部コードが切れることで発生するケースが多い症状ですが、今回のように偏摩耗が進行し、内部へ継続的なダメージが蓄積したことでタイヤが弱り、軽微な衝撃でも内部破断につながることもあります。

整備士も思わず、「これ、かなり危険です。バースト寸前ですよ」と即説明。その場でタイヤ交換となりました。

「まだ走れる」は安全ではない

タイヤバーストが怖いのは、“突然”起きることです。特に高速道路では、バーストした瞬間に車体が大きく乱れます。

場合によっては、

・ハンドル操作不能
・急激な車線逸脱
・横転事故

につながることもあります。しかも今回のAさんのように、「低速では問題ない」というケースは少なくありません。だからこそ危険なのです。日常走行では違和感が薄くても、高速域になるとタイヤの異常が一気に表面化する場合があります。

特に注意したいのは、

・一定速度でのみ振動する
・ハンドルが周期的にブレる
・振動が徐々に強くなる
・“叩くような感覚”へ変化する

といった症状です。これらは単なる快適性の問題ではなく、タイヤ構造そのものに異常が起きているサインである可能性があります。

「まだ走れるから大丈夫」ではなく、「正常な状態なのか」で判断すること。

タイヤは、車で唯一地面と接している重要部品です。小さな振動の違和感こそ、重大トラブルの入り口かもしれません。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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