1. トップ
  2. 「あれ?ドアハンドルがない…」テスラや最新リーフに広がる“出っ張りゼロ”の正体

「あれ?ドアハンドルがない…」テスラや最新リーフに広がる“出っ張りゼロ”の正体

  • 2026.5.20
undefined
出典元:PIXTA(画像はイメージです)

街で見かける最新のクルマを眺めていると、ドアを開けるための取っ手が見当たらず、不思議な感覚を覚えるかもしれません。実は、このすっきりとしたボディには、クルマの性能を左右する意外な秘密が隠されていると言われています。

本記事では、テスラや日産などの最新事例をもとに、格納式ドアハンドルが増えている理由と、安全性や冬場の注意点といった「実用のリアル」について詳しくお伝えします。

出っ張りのないなめらかなボディの正体

これまで私たちが慣れ親しんできた自動車には、ドアの横に手でしっかりと握れるハンドルが付いているのが当たり前でした。

しかし最近、一部の新しいモデルを間近で見てみると、その部分が車体の表面と平らになるよう深く埋め込まれ、まるで一枚の板のように仕上がっていることに気がつきます。いざ乗り込もうとしたときに、どこを触ればよいのかわからず、思わず手を止めてしまった経験を持つ方もいるのではないでしょうか。

このような装備は、フラッシュドアハンドルや格納式ドアハンドルと呼ばれています。

一見すると、ボディのラインをより美しく見せるための視覚的な工夫のように思えるかもしれません。たしかに、側面がすっきりと整うことで、クルマ全体に高級感やスタイリッシュな印象を与えてくれる効果があります。

しかし、この形状が多くの車種に取り入れられ始めている背景には、見た目を良くすること以上の機能的な理由が深く関係していると言われています。ここからは、そのなめらかなボディに隠された機能的な役割について探っていきましょう。

なぜ増えた? 空力性能がもたらす燃費・電費へのメリット

フラッシュドアハンドルが近年多くの新しいクルマで採用されている最大の理由は、空力性能の向上にあると考えられています。

自動車が走行する際、車体は常に目に見えない空気の壁にぶつかっており、表面に少しでも凹凸があると、そこで空気の流れが乱れて抵抗が生まれてしまいます。普段何気なく使っている従来のドアハンドルのような小さなパーツであっても、走行中のクルマ全体で見れば、空気抵抗を増やす要因の一つになってしまうのです。

そこで、ドアハンドルを車体と平らになるよう設計し、空気抵抗を抑えてスムーズに風を後ろへと受け流す工夫がなされています。

この空気抵抗の削減は、電気自動車の電費や航続距離を伸ばすためだけに有効なわけではありません。ガソリンで走るクルマにとっても、空気抵抗を少しでも減らすことができれば、燃料の消費を抑えて燃費を向上させることにつながります。

さらに、車体表面の凹凸が減ることで、走行中に風がぶつかって発生する風切り音を抑え、車内をより静かで快適な空間にするというメリットもあるのです。

つまり、あの出っ張りのないドア周りは、クルマ全体の効率や快適性を引き上げるための、非常に機能的で合理的なデザインだと言えます。小さな部品の形状を見直すことが、クルマの性能を総合的に向上させるための大きなカギになっているのです。

最新モデルが演出する乗車前の未来感

空力性能の向上という実用的なメリットに加えて、格納式のドアハンドルは乗る人に新しい体験をもたらす役割も果たしています。

たとえば、空気抵抗の低減を徹底して追求したジャガーのI-PACEや、テスラのModel 3。そして日産車として初めてこの電動格納式を採用し優れた空力性能を達成した、第3世代の新型日産リーフなどがその代表的な例です。

これらのクルマのなかには、電子キーを持った人が車両に近づくと、自動でハンドルがせり出してくる機能が搭載されているものがあります。もちろん、この機能はすべてのクルマに備わっているわけではなく、車種によって採用の有無は異なります。

しかし、こうした機能が搭載されているクルマの場合、近づくだけでまるでクルマが到着を歓迎してくれるかのようにハンドルが姿を現します。そして、乗り込んでドアを閉め、クルマが走り出すと再び車体と一体化するように静かに格納されていきます。

このような乗車前からの動きのある演出は、単なるドアを開けるための部品という役割を大きく超えています。最新のクルマならではの先進的でスマートなイメージを、乗る人や周囲の人に強く印象づけてくれる効果があると言えるでしょう。

しかし、こうした美しく先進的な装備がある一方で、日常的な使い勝手については、少し気をつけておきたい現実的な側面もあるようです。

操作への戸惑いや冬場の凍結への注意点

スマートで魅力的なフラッシュドアハンドルですが、初めて触れる人にとっては少し戸惑いを感じやすい部分もあります。

従来のドアハンドルであれば、見ればすぐに引っ張る場所がわかりますが、格納式の場合は押し込むのか、引くのか、それとも自動で出てくるのを待つのか、少し迷ってしまうことがあります。

さらに、内部の機構が従来よりも複雑になるため、気象条件の厳しい場面での動作に不安を感じる声も聞かれます。とくに気温が下がる冬場などは、車体が凍結してしまい、氷に阻まれてドアハンドルがスムーズに出てこなくなるのではないかと心配になるものです。

自動車メーカー側もそうした状況を想定しており、一部の車種ではハンドルの一部を押し込んで氷を砕くような構造も取り入れられています。
※寒冷地などのより過酷な環境では、さらに物理的な対応が必要になるケースもあるようです。

このように、最新の装備であっても、冬場の使い勝手においては従来よりも少し手間がかかったり、寒冷地にお住まいの方には注意が必要だったりする側面があるのが実情です。

安全性を左右する「電子式」と「機械式」の違い

日常での使い勝手や気象条件への対応に加えて、最も大切になるのが万が一の事態が起きた際の安全性です。一見するとどれも同じように見えるフラッシュドアハンドルですが、その仕組みには大きく分けて二つのタイプが存在しています。

一つは、ボタンを押すことで電気的な信号を送り、モーターなどでドアを開ける電子制御のタイプです。もう一つは、見た目は平らであっても、ハンドルを引くことで物理的にドアのロックを解錠する機械式のタイプです。

この違いは、事故などでクルマの電源が失われた際に大きな意味を持ちます。電子制御に依存しているタイプの場合、電源が落ちてしまうと外からも内からもドアを開けるのが困難になるという課題が指摘されることがあります。一方で、日産の新型リーフのように、物理的なレバー構造を採用している車種であれば、たとえ電源が失われても、ロックさえされていなければ通常通りにドアを開けることが可能です。

このように、ひとくちに最新のドアハンドルといっても、その内側には万が一の事態を想定した各メーカーの異なる設計思想が隠されています。空力性能を高めて燃費や電費を向上させ、乗る人に未来感を与えてくれるなめらかなボディは、たしかにこれからの自動車を象徴する魅力的な進化です。

しかし、クルマが私たちの命を乗せて走る乗り物である以上、どんなに技術が進歩しても、誰でも直感的に操作でき、緊急時にも確実に開けられるという基本機能の重要性が薄れることはないでしょう。

美しさや効率の良さと、日常の使い勝手や安全性をどのように両立させていくのか。ドアハンドルという、普段あまり意識しない小さなパーツの奥深さを知ることで、次に新しいクルマを見かけたときの視点が少し変わるかもしれません。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる