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「あなたの声、めちゃくちゃ好きだなあ」間違い電話がいつの間にナンパに…日本人が知らない、フランス男性のお世辞にひそむ“罠”とは

  • 2026.4.23

ジェーン・バーキン、サガン、イヴ・サンローラン……。パリファッション界の伝説たちとリアルに交流してきた村上香住子さんが、パリジェンヌの「凛とした心」をまとうためのエッセンスを記したエッセイ集『おしゃれなマナー AtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔』(CEメディアハウス)。同書の一部を抜粋し掲載する。


フランス人の男性は、とにかくお世辞が上手です。相手が中年おばさんだと分かっていても、マダムとは言わずに「ボンジュール、マドモワゼル(お嬢さん)」と平気で言うのですから。

あるときサンジェルマン大通りを女友達と歩いていたら、彼女は正面から来た男性にうっとり見つめられて、こう言われていました。

「モーツアルトの曲を絵に描いたら、きっときみみたいな女性になるだろうな」

やけに気障なお世辞でした。

そんなパリジャンは、どんなにちょっとしたきっかけも見逃しません。

あるとき、私の自宅に間違い電話がかかってきたことがあります。違います、ノン、と言って電話を切ろうとすると、相手の男性は、

「ちょっと待ってくれますか。あなたの声、僕は滅茶苦茶好きだなあ。これは運命だ。ぜひ会ってほしい」と言いだしたのです。こうして日常的な出来事も、言葉巧みに利用します。

フランス人男性のお世辞にひそむ“罠”

フランス人は、国民性として結構本音で話す人が多いように見えるので、つい相手の言葉を信じそうになりますが、冗談半分のお世辞がほとんどなので、真に受けてしまうと、後でからかわれることになります。

日本では「ナイーヴ」という表現は、あの人は感受性が豊かだ、といったむしろポジティブな褒め言葉に聞こえますが、パリで「きみはナイーヴだね」と言われたら、それは「お馬鹿さんだね」という意味なのです。

性善説の日本から海外に出ると、「ノン」というのは相手に失礼かもしれないと思いがちですが、パリでは「ノン」と言えない女性は、「ナイーヴ」だと言われてしまいます。

もっとも、そうしたお世辞を面白がって楽しむこともできます。

東京から到着したばかりの女友達は、タクシーの中でカタコトのフランス語で、

「私なんかもう若くはないし、何も楽しみはなく、旅だけが唯一の楽しみなの」と言ったら、ブラッド・ピット似のドライバーはバックミラーをチラチラ見ながら、

「とんでもない。お客さん、あなたはまだイケてますよ。僕と結婚してもいいくらいだ。僕、別れたばかりなんで」と言われたそうです。

結婚してからずっと家庭にいたその女性は内心それが嬉しかったらしく、

「あのとき、あのパリのブラッド・ピットと結婚していたら、私の人生どうなっていたかしら」とその話をする度に、うっとり夢見心地です。

いい旅の思い出になっているようです。

もっと読む:「不倫を貫くとむしろ好感度が上がる」「泣き寝入りは美しくない」…20年間パリ暮らしの著者が明かす、“恋愛至上主義の国”のリアルとは

おしゃれなマナー AtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔

定価 1,980円(税込)
CEメディアハウス

文=村上香住子
写真=AFLO

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