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俳優・小林涼子さん36歳「子役出身…20代半ばでキャリアを見失った」心身を救ってくれた“農活”の癒し

  • 2026.4.18

土に触れ、季節を感じながら作物の成長を見守る「農活」。そのプロセスにヒーリング効果があるとして、今、注目を集めています。そんな農活に魅了され、生き方が大きく変化した女性をクローズアップ。いかにして農業と出合い、本来の自分を取り戻していったか……。ストレス社会を生きる私たちにとって、大切なヒントがそこにありました。

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小林涼子さん 36歳・東京都在住俳優、株式会社AGRIKO代表取締役

農業を軸に〝心も体も循環する仕組み〟を社会に実装したい

俳優業の傍ら、株式会社AGRIKOの代表としてビルの屋上で循環型農園を運営する小林涼子さん。農業と出合ったのは、心のバランスを崩してしまった10年前のこと。「4歳から子役をしていたので、役者はまさに私のアイデンティティ。でも成長とともに求められるものが変わり、20代半ばでキャリアを見失ってしまって。心身ともに疲れ果て、メンタルの不調を感じていた時、両親から『農業をやってみたら?』と勧められたんです。新潟で米作りをしていた父の友人を頼り、お手伝いをさせてもらうことになりました」。

農家での体験を通して、価値観が少しずつ変化していった。「そこでは年齢も性別も関係なく、ありのままの自分でいられたんです。世間の物差しから解放されて、エネルギーが満ちていく感覚がありました。何より自分で育てたお米は、今まで味わったことのない美味しさで。この先もずっと、このお米を食べたい! と心から思いました」。

そこから農業に目覚め、定期的に新潟に通うように。そんな中、コロナ禍で状況は一変。「家族の体調不良も重なり、新潟での農作業を諦めざるをえませんでした。初めて、〝手を動かさなければ作物は育たない〟という当たり前のことに気づいたんです。ならばこの地で、自分の手で作るしかない。新潟で食べたお米の味を忘れられず、農業を軸とした会社を立ち上げました」。

右も左もわからない中、仲間探しに奔走。地元・桜新町のカフェの屋上を借りて作った、小さな農園からスタートした。「〝循環を社会に実装する〟を理念に掲げ、ファームでは野菜の栽培と魚の養殖を同時に行う、循環型農法を採用しています。魚の排泄物が微生物に分解されて栄養分となり、作物に吸収される。そこで浄化された水がまた水槽に戻るという仕組みで、排水も少なく環境にもやさしいんです。循環は、心と体にとっても大切なこと。栄養を摂って健康的な体をつくり、ストレスを手放して心のバランスを保つ。農業と食を通じて健康を支え、アートで心を癒すという〝循環〟を事業として形にしています」。

福祉も事業の柱の一つ。障がいのある人たちが従業員として働き、農園で栽培を担当している。「農業に出合う前は、何事も〝完璧でなければいけない〟と思い込んでいました。だけど初めての農作業は、〝苗箱を洗う〟、たったそれだけ。それでもすごく喜んでもらえたんです。不完全を受け入れ、自分ができることをやればいい。各々の個性や得意分野を生かすことが大切なんだと思えるようになりました。たとえ障がいがあっても、特性ごとに補い合えば作業は完結できる。私たちが目指す、年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、全ての人がやりがいを持って働ける環境が叶うのも、農業の魅力だと思っています」。

ファームでの作業はスタッフに任せ、経営や企画は代表の小林さんが担う。初めてプレゼン資料を作り、取引先に交渉するなど自分の足で事業を広げてきた。

「俳優業もそうですが、会社を立ち上げて改めて、多くの人に支えられて生きているということを実感しました。目の前の野菜やお米も、どれだけの人が手間暇をかけたのだろうと思うと、感謝の気持ちが溢れるように。だから私も、元気や幸せを与えられるようになりたい。そんな気持ちも、きっと循環すると思うから」。AGRIKOが目指すのは、当たり前だけど難しい、普遍的な幸せ。「変化の激しい時代でも、〝美味しいものを食べて健やかに暮らしたい〟という思いは、未来永劫変わらない本質的な願い。AGRIKOに関わった一人でも多くの人に、その願いを叶えてほしい。東京から、農業の可能性を発信し続けたいです」。

<編集後記>農業の素晴らしさを伝えるべく奔走し続ける懸命な姿に感動

俳優とは全く違う世界に飛び込み、自らの足で農業の魅力を伝えてきた小林さん。自身の人生だけでなく、未来を見据えて多くの人を幸せにしようとする社会貢献意識の高さに、心を揺さぶられました。混沌としたこの時代にこそ、農業の癒しの力が必要なのかも。〝農活〟には計り知れない可能性がある。そう感じさせてくれる取材でした。(ライター 渡部夕子)

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撮影/堺 優史(MOUSTACHE)ヘア・メーク/Rina スタイリスト/中西雛乃 取材/渡部夕子 企画撮影協力/カフェスロー、オトノハカフェ ※情報は2026年4月号掲載時のものです。

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