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マッコウクジラの発声に「ヒト言語と似た構造」を発見

  • 2026.4.16
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

マッコウクジラは海の中で「カチカチ」というクリック音を響かせています。

その音は長いあいだ、人間には単調で意味のない音の連なりのように聞こえていました。

しかし細菌、その見方を大きく変える研究が登場しています。

米カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究チームは、マッコウクジラの発声が「人間の言語に似た構造」を持つ可能性を発見したのです。

一体どのような点が似ていたのでしょうか?

研究の詳細は2026年4月15日付で学術誌『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載されています。

目次

  • クリック音の中に見つかった「ルール」
  • なぜ「ヒト言語に近い」と言えるのか?

クリック音の中に見つかった「ルール」

今回の研究では、カリブ海ドミニカ沖に生息するマッコウクジラの音声データから、約4000のクリック音(コーダ)が分析されました。

対象となったのは、メスや若い個体15頭です。

成熟したオスは単独行動が多く、コミュニケーションの様式が異なる可能性があるため除外されています。

分析の結果、マッコウクジラの発声には、人間の言語に見られる「音のルール」とよく似た特徴が見つかりました。

まず注目されたのが、コーダの種類です。

音の中に含まれる共鳴構造のピーク(フォルマント)の数によって、コーダは大きく2つに分けられました。

ひとつはピークが1つの「aコーダ」、もうひとつはピークが2つの「iコーダ」です。

これはちょうど、人間の母音の違いのように、音の質によって分類されている点が特徴的です。

さらに、aコーダはiコーダよりも長く発せられる傾向があり、iコーダの中には短いものと長いもののバリエーションが存在しました。

これは、日本語でいう「お」と「おう」のような長さの違い、いわゆる長母音に近い性質です。

また、個体ごとにクリックのタイミングが異なり、同じ種類のコーダでも発声のテンポに個性があることも確認されました。

人間でいう話し方の速さやリズムの違いに似ています。

そして特に重要なのが、音同士の「影響」です。

あるコーダから次のコーダへ移るとき、前後の音が互いに影響し合い、音質が変化する現象が見られました。

これは人間が発話する際に、前後の音の影響で発音が変わる「連続発音(同化)」とよく似た現象です。

例えば、人間の言語で「a」と「u」が組み合わさって「au(アウ)」のような音になる現象に似ています。

これらの特徴は単独で存在するだけでなく、組み合わせることで多様なパターンを生み出します。

つまり、クジラのクリック音は単純な繰り返しではなく、「組み立てられた音」だったのです。

なぜ「ヒト言語に近い」と言えるのか?

ここで重要なのは、「音が似ている」だけではなく、「振る舞いまで似ている」という点です。

これまでの研究でも、クジラのクリック音が人間の母音に似ていることは指摘されていました。

しかしそれはあくまで音響的な類似、つまり「聞こえ方が似ている」というレベルにとどまっていました。

今回の研究は一歩踏み込み、音の長さ、分類、組み合わせ、そして音同士の相互作用といった「構造的なルール」まで人間の言語と共通していることを示しています。

これは言語の核心である「音韻(音の体系)」に関わる部分です。

たとえば人間の言語では、母音や子音が単に並ぶのではなく、一定のルールに従って変化したり組み合わさったりします。

「インプット」という言葉の「n」が後ろの「p」に引きずられて発音が変わるような現象もその一例です。

マッコウクジラでも、同じように音同士が影響し合っていることが確認されました。

さらに、aコーダとiコーダという2種類の音が、長さや変化のパターンを持ちながら組み合わさることで、多数のバリエーションが生まれます。

これは、人間が限られた音を組み合わせて無数の言葉を作る仕組みによく似ています。

ただし研究者たちは、これを「言語」と断定することには慎重です。

言語と呼ぶためには、音の組み合わせが意味を持つ必要があります。

しかし現時点では、クジラのクリック音が具体的にどのような意味を持つのかはまだ解明されていません。

それでも、ここまで高度な構造が確認されたことは、クジラのコミュニケーションが単なる信号ではなく、非常に豊かな体系であることを強く示しています。

クジラたちは、人間とはまったく異なる進化の道をたどりながら、似たような発話の仕組みを作り出しているのかもしれません。

参考文献

Scientists Found Human Speech-Like Patterns in Sperm Whale Clicks
https://www.sciencealert.com/scientists-found-human-speech-like-patterns-in-sperm-whale-clicks

Sperm whale clicks follow similar rules to human speech
https://phys.org/news/2026-04-sperm-whale-clicks-similar-human.html

元論文

The phonology of sperm whale coda vowels
https://doi.org/10.1098/rspb.2025.2994

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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