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恐れ知らずの怪作! 死から蘇生した花嫁と怪物の逃避行を描く『ザ・ブライド!』

  • 2026.4.4
恐れ知らずの怪作! 死から蘇生した花嫁と怪物の逃避行を描く『ザ・ブライド!』
『ザ・ブライド!』 (C)2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

オスカー俳優W主演の異色ロマンス&スリラー

【週末シネマ】『ザ・ブライド!』は、デビュー作『ロスト・ドーター』(2021年)でアカデミー脚本賞にノミネートされたマギー・ギレンホールが、1935年の古典『フランケンシュタインの花嫁』を大胆に再解釈した、野心的でパワフルな異色のロマンスであり、スリラーでもある。

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90年以上前のオリジナル版では、タイトルロールでありながら花嫁がスクリーンに登場する時間はわずか数分で、セリフもない。そんなヒロインに声を与える試みとして、1930年代のシカゴを舞台に、花嫁=ブライドを主役に据えたのが本作だ。

『ハムネット』でアカデミー主演女優賞を受賞したジェシー・バックリーと、オスカー俳優のクリスチャン・ベールが主演を務める本作は、単なるリメイクの枠を超え、ホラーにとどまらない多様な要素を内包している。

シカゴへやって来た孤独な怪物フランク(ベール)と、死から蘇生したブライド(バックリー)が織りなす恋を軸に、抑圧された女性の怒りや、人の内に潜む怪物的な側面の解放が描かれる。型破りな2人の逃避行には、ボニー&クライドを想起させる疾走感と、シド&ナンシーのような破滅性の両面がある。

二役演じるバックリーの迫力ある演技が魅力

物語は、孤独に苛まれたフランクが科学者ユーフォロニウス博士(アネット・ベニング)に依頼し、命を落としたばかりの若い女性アイダ(バックリー)を蘇生させ、「花嫁」を手に入れようとするところから始まる。しかしブライドは、その立場を拒絶し、激しく反発する。以降に展開するのは、時にコミカルなロマンスであり、ミュージカルであり、犯罪活劇でもある。複数ジャンルが衝突する、意図的なカオスの中で物語は進行していく。

最大の魅力はバックリーの存在だ。蘇生時の電流によって頬に刻まれた稲妻のような痕跡、髪もまつ毛も眉も白く変色したブライドと、小説「フランケンシュタイン」の作者である19世紀の作家メアリー・シェリーという二役を演じる。猛々しく制御不能なエネルギーがほとばしり、圧倒的な迫力だ。時にシェリーが憑依したかのようなブライドは、フランクが望んだ「花嫁」とは異なる激しさを帯びている。

女性として抑圧された痛みをブライドが叫ぶ場面の直截的なセリフは、下手をすれば陳腐になりかねない危うさをはらむが、そうさせなかったのはバックリーの力量だ。『ハムネット』以前に撮影された本作でも、その才能を存分に堪能できる。

少年時代から変わらぬ無垢さを醸し出すベール

一方、ベール演じるフランクは、グロテスクな外見と相反するいたいけさを醸し出す。『太陽の帝国』(1987年)で主演した少年時代から、彼は無垢で傷つきやすい内面を的確に表現してきた。本作でも、怪物の姿の奥に子どものような純真さが宿る。純情な恋心、不器用さ、孤独、危うさを1つに縫い合わせたこのキャラクターは無骨で、ときに滑稽ですらある。しかし笑い飛ばすことはできない。観る者自身の最も脆い部分がむき出しにされているように感じるのだ。

本国での宣伝活動中、ベールは、日本発で世界的な社会現象となった子ザル「パンチ」を引き合いに、フランクの孤独について語っている。母親に育児放棄され、ぬいぐるみを拠り所としていたエピソードは、ただそばにいてくれる存在を求めるフランクの渇望を象徴しているようだ。同じく1930年代を舞台にした主演作『アムステルダム』(2022年)などに通じる、反骨精神に満ちたラディカルな側面も垣間見える。

独創的な挑戦、過剰さこそが魅力

さらに、監督の弟であるジェイク・ギレンホールが、1930年代の人気映画スター、ロニー・リード役で出演しているのも見どころの一つだ。フランクが憧れるマチネ・アイドルとして登場し、劇中のミュージカルシーンを通じて、現実からの逃避を映画に求めるフランクの喜びを象徴する。フレッド・アステアやジーン・ケリーを想起させるクラシカルなスター像は、本作に古典性と新しさを共存させ役割も果たしている。

また、2人を追う刑事とその助手を、監督の夫であるピーター・サースガードとペネロペ・クルスが演じ、往年のノワール映画を思わせる存在感で脇を固める。

ハリウッド・メジャーの大作でありながら、監督の個人的な情熱が貫かれ、恐れ知らずの独創的な挑戦が結実した。多様なテーマの盛り込みによってやや散漫な印象は否めないが、その過剰さこそが本作の魅力でもある。スクリーンが大きいほど真価が際立つ。ぜひ劇場で体験してほしい怪作にして快作だ。(文:冨永由紀/映画ライター)

『ザ・ブライド!』は、2026年4月3日より全国公開中

 

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