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太平洋の深海で「新種の甲殻類」を24種発見

  • 2026.4.2
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

地球の海はあまりに広大であり、その内部は驚くほど知られていません。

現在までに人類が直接調査できた海域は全体の80〜90%にとどまり、残る深海には未知の生物が無数に存在していると考えられています。

そんな“最後のフロンティア”の一つ、太平洋の深海から今回、新たに24種の甲殻類が発見されました。

この発見は、未知の深海生物に名前を与える国際プロジェクトの一環として行われています。

研究の詳細は2026年の学術誌『Zookeys』に掲載されました。

目次

  • 深海に広がる「知られざる生態系」と端脚類の役割
  • 新種発見の裏にある「資源」と「リスク」

深海に広がる「知られざる生態系」と端脚類の役割

今回、新種が見つかったのは「クラリオン・クリッパートン海域(CCZ)」と呼ばれる場所です。

ハワイとメキシコの間に広がる広大な深海平原で、地球上でも特に調査が進んでいない領域の一つです。

ここで発見されたのは、「端脚(たんきゃく)類」と呼ばれる甲殻類の仲間でした。

端脚類はすでに1万種以上が知られるグループですが、その多様性はまだ十分に解明されていません。

体の大きさも数ミリメートルから、パン1斤ほどに達するものまで幅広く、生態も非常に多様です。

例えば、泥を食べて栄養を得る種もいれば、小さな無脊椎動物を捕食する種、さらには死骸を分解して海の栄養循環を支える種もいます。

つまり端脚類は、目立たない存在でありながら、海の生態系を下支えする重要な役割を担っているのです。

【実際に見つかった新種の甲殻類たちの画像がこちら

研究チームは「ボックスコア」と呼ばれる手法で海底の泥を採取し、その中からこれらの生物を見つけました。

これは海底の堆積物を立方体状に切り出し、そのまま船上に持ち帰って分析する方法です。

採取した泥を洗浄・選別した結果、淡い色をしたさまざまな形の端脚類が確認されました。

細長い脚を持つものや、がっしりした体を持つものなど、その姿は実に多様だったといいます。

研究に関わったエヴァ・スチュワート氏は「泥を食べるものもいれば、大きなハサミを使って他の生物を捕食するものもいた」と述べており、同じグループでも生活様式が大きく異なることが明らかになっています。

新種発見の裏にある「資源」と「リスク」

今回の発見が注目されるもう一つの理由は、この海域が持つ“資源的価値”です。

CCZの海底には「金属団塊」と呼ばれる鉱物の塊が大量に存在しています。

これらには、太陽光パネルや風力発電などに不可欠な金属が含まれており、将来的な深海採掘の候補地として世界的に関心が高まっています。

一見すると、環境に優しいエネルギー社会を支えるための重要な資源のように思えます。

しかし問題は、この海域の生態系がほとんど理解されていないことです。

推定では、CCZには約5600種の生物が存在すると考えられていますが、そのうち約90%はまだ科学的に記載されていません。

つまり、多くの生物は「名前すらない」状態にあるのです。

今回発見された24種の端脚類も、その一部に過ぎません。

さらに興味深いのは、これらの新種の命名方法です。

研究者たちは1週間のワークショップで名前を決定し、家族や同僚にちなんだもののほか、ゲーム『ホロウナイト』のキャラクターに由来する名前も採用されました。

中には、体の特徴である「短いお尻」にちなんで命名された種も存在します。

こうした命名は一見ユニークに見えますが、科学的には非常に重要な意味を持ちます。

生物に正式な学名を与えることは、その存在を記録し、保護の対象とするための第一歩だからです。

もし深海採掘が進む中で、まだ記載されていない生物が失われれば、それは「知られないまま消える生命」となってしまいます。

【新種の拡大画像がこちら

今回の24種の発見は、深海の豊かな生物多様性を示すと同時に、私たちがまだほとんど何も知らない世界が広がっていることを改めて教えてくれます。

そして同時に、人類がその未知の世界に手を伸ばそうとしている現実も浮き彫りにしました。

深海に眠る資源を利用するか、それとも守るべき生態系として理解を深めるか。

その判断を下すために必要なのは、まず「そこにどんな生命がいるのか」を知ることです。

名前を与えるという地道な作業は、その第一歩に過ぎません。

しかし、その積み重ねこそが、未来の海の運命を左右する重要な鍵になるのです。

参考文献

Dozens of deep-sea species discovered as new crustaceans named
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2026/march/dozens-deep-sea-species-discovered-new-crustaceans-named.html

New crustacean named after its unique butt
https://www.popsci.com/environment/new-deep-sea-crustaceans/

元論文

New deep-sea Amphipoda from Clarion-Clipperton Zone
https://zookeys.pensoft.net/issue/4856/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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