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【剝がれにくさ4倍】ベニア板を「縫う」と耐久性が大きく向上する

  • 2026.3.31
ベニア合板を縫うと耐久性が向上。※イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

薄い板を重ね合わせた「合板」を強くするのは、層と層の間の「接着剤」だけででしょうか。

実はそれらを「縫う」ことで、表面から引き剥がす力に対して、従来より約4倍も強くできます。

オーストリアのグラーツ工科大学(TUG)の研究チームは、合板の弱点を「糸」で補強するという意外な方法で解決することに成功しました。

この成果は2026年3月24日にグラーツ工科大学の『研究ニュース』として公表されています。

目次

  • 木材を縫うことで「剥がれにくさ4倍」「壊れにくさ14倍」
  • どのようにベニア合板を縫い合わせるのか

木材を縫うことで「剥がれにくさ4倍」「壊れにくさ14倍」

スキーやスノーボード、車の内装パネルなどに使われる木材は、一枚板ではなく、複数の薄い木の板を重ねた「積層構造」になっていることがあります。

この構造は軽くて扱いやすく、形も安定しやすいという利点があります。

その一方で、弱点もあります。

表面から引き剥がすような力がかかると、層と層がはがれてしまいやすいのです。 これが「層間剥離」です。

従来は接着剤で層を貼り合わせることで対処してきました。

しかし、この方法だけでは剥離する方向の力に対しては限界があり、いったんはがれ始めると、その部分から傷みが広がりやすいという問題がありました。

そこで研究チームが着目したのが、「縫う」という方法です。

布を縫うように木材同士を糸でつなげば、層が引き離されるのを抑えられるのではないか

この発想を元に、研究チームは、工業用ミシンを使いながら、木の繊維を傷つけにくい針や糸を選び、ベニア合板を縫い合わせる技術を作りました。(画像はこちら。※プレスリリース

その結果、表面から引き剥がす力に対する最大耐荷重は、縫っていない積層材に比べて約4倍に向上しました。

さらに、剥離が進んで破壊に至るまでに必要なエネルギーも、最大で14倍に増えました。

つまりこの技術は、単に「より強くする」だけでなく、剥離が進みにくい構造を作れるということです。

従来の接着剤に糸をプラスするだけで、大きく補強されるのです。

では、その劇的な変化はどのようにして実現されたのでしょうか。 詳しい仕組みと結果は次項で見ていきます。

どのようにベニア合板を縫い合わせるのか

この技術の面白いところは、ただ糸を通しただけではない点にあります。

木材は布と違って硬く、普通の針を使うと繊維を切ってしまい、かえって傷めるおそれがあります。

そこで研究チームは、木の繊維を切るのではなく、押し分けるように通せる三角形の針先を選びました。

また、糸にはナイロンが使われました。

ナイロンは、しっかり力を受け止めつつ、ある程度しなる性質もあるためです。

研究チームは木材、糸、針の形、材料の状態の組み合わせを検討し、一番バランスが取れている条件を発見しました。

縫製には標準的な工業用ミシンが使われ、通常は毎分1メートル、最高で毎分2.5メートルの速度で加工できます。

厚さ20ミリまでの積層材に対応でき、金属板のような別の材料との接合も可能だとされています。

では、なぜ縫うと強くなるのでしょうか。

木材の層がはがれようとするとき、縫い込まれた糸がその引っ張る力を受け止めます。

研究者はこれを、鉄筋コンクリート(コンクリートの中の鉄筋が引張力を吸収する)と似た働きだと説明しています。

接着だけでは広がりやすかった剥離が、糸によって食い止められ、壊れるまでにより大きな力とエネルギーが必要になるのです。

ただし、この技術はあらゆる壊れ方に効く万能な補強ではありません。

実験では、層同士が横にずれる「せん断荷重」に対しては、はっきりした改善は見られませんでした。

そのため、この方法は特に「はがれやすい場所」を狙って補強するのに向いています。

応用先として期待されているのは、スキーやスノーボード、自動車内装、家具、建築分野などです。

研究チームは、大きな面全体を補強するよりも、高い剥離応力がかかる小さな部分に使うほうが効果的だと考えています。

さらにこの技術は、強くするだけでなく、新しい形の木製品を作る可能性もあります。

布を縫い付けて柔らかい接合部を作れば、折りたたみ式のベンチや運びやすい橋のような構造も実現できます。

実際に、折りたたみベンチや折りたたみ橋のデモも作られています。

「木材を縫う」ことは、木材の強度を上げる新技術であるのと同時に、木の使い方そのものを見直す発想なのかもしれません。

参考文献

Stitching wood veneers like fabric makes them super durable
https://newatlas.com/materials/stitching-wood-veneers-fabric-durable/

TU Graz Researchers Strengthen Wood with Needle and Thread
https://www.tugraz.at/en/news/article/wood-needle-nylon

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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