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紗倉まな「等身大で書けるようになってきた」 作家生活10周年

  • 2026.4.2

夫と愛犬と暮らすヘアメイクの由良。仕事を通じて知り合ったバー経営者の有里奈とは夫よりも共鳴できているはずだったが、有里奈からふいに〈赤ちゃんできたんだよね〉と告げられたときから、由良の中にこれまでなかった感情が渦巻くようになる。

作家生活10周年に挑んだテーマは、妊娠・出産をめぐる女性たちの葛藤

紗倉まなさんの『あの子のかわり』は、結婚も妊娠・出産も自由に選べる時代だからこそ逆に迷ってしまう女性たちに読んでほしい一冊。

「女性という同じ性、同じ体を持っているからこそ、本当だったらわかち合える部分があるはずなのに、対立構造が生まれてしまうことがある。人生の中の大きな悩みですよね」

由良は、有里奈もまた自分と同じ「産まない」グループだと勝手に考えていたために、彼女から裏切られた感を覚えるが、

「同時に、自分はこのままでいいのかという焦りや、これまでの関係が変わってしまうかもという寂しさもあると思うんですね。あるいは、自分に妊娠の経験がないために、有里奈に“かけてあげるべき言葉”が見つからないふがいなさ。私も30代を迎えて、産むことを決めた友人を祝福する気持ちはありつつも複雑な感情で捉えてしまうというか、『産むつもりなら早いほうがいいよ』などよかれと思ってかけてくださる言葉にも、勝手に圧を感じてしまう。考えざるを得ない場面が増えてきていて、私自身もぐらぐら揺れます。それを由良に投影させた部分は結構ありました。ただ、すれ違うことはあっても断絶したりはしない、ふたりの新たな関係性が書けたらとは思っていました」

本書は、紗倉まなさんがこれまでにも書いてきた「母性とは何か」という命題も突きつけてくる。

「うちにも保護犬がいるんですよ。子どもにしろペットにしろ小さくて弱い生き物を守り慈しむにはパワーが必要で。ならば、そうし続けられる愛情はすべて母性と呼んでいいんじゃないかな、と。女性だけのものでも、まして出産した人だけのものでもないのではないか、と希望的に思っているんですよね」

ちなみに、今年、最初の小説集を出版してから10年の節目を迎える。

「文学に対して構えすぎていたところがあったのですが、背伸びをして書かなくていいんだとわかった。等身大で書けるようになってきたのが、変化かもしれませんね」

紗倉まな

さくら・まな 1993年、千葉県生まれ。2016年、自身初の小説『最低。』で小説家デビュー。小説『春、死なん』『うつせみ』が共に野間文芸新人賞候補作となる。写真・宇壽山貴久子

information

『あの子のかわり』

「ケンカになりそうになったらポップな言い方にしよう」と提案する夫。頼りない部分もあるが、彼の穏やかさに由良も助けられる。河出書房新社 1870円

インタビュー、文・三浦天紗子

anan 2489号(2026年3月25発売)より

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