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22年前、都会の風を変えた“2つの奇跡の歌声”。初夏の光を反射する、最高にクリアなメロディの正体

  • 2026.5.30

2004年5月。ゴールデンウィークを過ぎたばかりの街には、初夏の到来を告げる眩い日差しが降り注いでいた。半袖で歩くには少し早い、けれど確実に季節が動いていることを予感させる、あの心地よい風の感触。当時の街角では、大型のCDショップが並び、新譜のリリース日には特設コーナーが熱気を帯びていた。そんな時代の空気と共鳴するように、ある突き抜けた明るさを持つメロディが、スピーカーの奥から力強く響き渡っていた。

EXILE『Carry On』(作詞:SHUN/作曲:原一博)ーー2004年5月12日発売

ダンスボーカルグループとしての地位を盤石のものとしつつあった彼らが、14枚目のシングルとして世に問うた一曲。それは、これまでの彼らが標榜してきたストリート発のR&Bという枠組みを超え、より広大なポップスという海原へと漕ぎ出した、記念碑的な作品であった。

精緻に組み上げられた「2004年の音像」

作曲を手がけた原一博によるメロディは、冒頭から聴き手の意識を一気に高揚させる。特筆すべきは、当時のデジタルレコーディング技術が成熟を見せ始めた時期特有の、極めてクリアで分離感の良いサウンドだ。シンセによるストリングスとブラスのレイヤーは、単なる華やかさの演出にとどまらず、楽曲の背骨となる力強い推進力を生み出している。

リズムセクションの構築も極めてテクニカルだ。16ビートのシャープなキレを維持しながら、ダンスミュージックとしての肉体性を失わない絶妙なバランス。そこに、きらびやかなギターのカッティングが複雑に絡み合う。音の粒子ひとつひとつが、初夏の光を反射する水面のように輝きを放っている

この洗練されたアンサンブルこそが、当時のJ-POPシーンにおいて彼らが「単なる歌って踊る集団」ではなく、最高峰のクリエイティブ集団であると認識された所以だろう。ただ明るいだけではない。そこには、激動の時代を駆け抜けてきた表現者だけが持つ、矜持のようなものが透けて見える。

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2004年9月、舞台『HEART of GOLD』公開稽古より。EXILEの(後列左から)USA、MATSU、MAKIDAI、(前列左から)SHUN、HIRO、ATSUSHIと女優の松本莉緒(C)SANKEI

二つの個性が重なり合う、ボーカルワークの極致

この楽曲の真価を語る上で欠かせないのが、ATSUSHIとSHUNという、稀代のボーカルふたりによる相互作用である。

ATSUSHIのボーカルは、この時期すでに完成された美しさを誇っていた。細部までコントロールされたビブラートと、シルクのように滑らかなフェイク。彼は、楽曲の持つ疾走感を損なうことなく、音符の隙間に繊細な情緒を注ぎ込んでいく。それに対し、作詞も務めたSHUNの歌声は、どこまでも真っ直ぐで、力強い説得力に満ちている。

ふたりの声が重なるサビのユニゾンでは、声質の異なる倍音が複雑に共鳴し、単独のボーカルでは決して到達できない圧倒的な厚みを生み出している。互いの個性を消し合うのではなく、ぶつかり合うことで熱量を増幅させるその様は、まさに音楽的な化学反応と呼ぶにふさわしい

SHUNによる歌詞もまた、当時のグループが置かれていた状況と深くリンクしている。「突き進む」ことの覚悟、そして立ち止まることなく変化を受け入れ、進み続ける意志。彼自身の手から紡がれた言葉たちは、メロディの翼を得て、単なる歌詞を超えた「宣誓」として響く。自らの内面を深く見つめ、それを普遍的なメッセージへと昇華させるSHUNの筆致は、この楽曲に時代を超える強靭な生命力を与えた。

突き抜けた青空に刻まれた、表現者の矜持

レコーディングスタジオという密室で産声を上げた音が、電波に乗り、光ディスクに刻まれ、やがて日本中の空気を震わせる。そのプロセスに関わった全ての人間が、一つの理想に向かって心血を注いだ痕跡が、この曲には刻印されている。

卓越したメロディセンスと、それを具現化する高度な編曲技術。そして、それらを乗りこなす圧倒的な身体能力を備えたシンガーとダンサーたち。そのすべてが完璧なタイミングで合致したとき、音楽は単なる流行歌を超えて、特定の記憶と結びついた「感情の記録」となる。

初夏の風とともに駆け抜けたあの旋律は、決して色褪せることがない。むしろ、時間が経過するほどに、その音の純度は増していくようにさえ感じられる。磨き上げられたクリエイティビティが放つ光は、今なお眩しく、私たちの感覚を鋭く刺激し続けている。

困難な状況にあっても、信念を曲げずに歩みを止めないこと。タイトルに込められたその精神は、楽曲の構成そのものにも、そして歌い手たちの剥き出しの声にも宿っている。自らの表現を信じ、限界を更新し続けようとした者たちの執念。その結晶ともいえる音が、今日という日を生きる私たちの背中を、静かに、しかし力強く押し続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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