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打ち上げられたアザラシの赤ちゃんに、私たちができる「本当の優しさ」とは おたる水族館の獣医師に聞く

  • 2026.3.30
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数日前、北海道小樽市の沿岸に、一頭のアザラシの赤ちゃんが打ち上げられました。衰弱した姿がSNSで拡散され、「放っておけない」「水族館で保護できないの?」など助けを求める声が上がっています。「おたる水族館」の獣医師、角川(つのかわ)雅俊さんに、野生動物との向き合い方を伺いました。

見つかったのはゴマフアザラシの赤ちゃん

今回見つかったのは、生後1週間から10日ほどと見られるゴマフアザラシの赤ちゃんです。SNSに投稿された写真を見ると、小さなアザラシの赤ちゃんが元気なさそうに砂浜に横たわっています。思わず手を差し伸べたくなりますが、そこには大きなリスクが伴うそうです。

角川獣医師:「こうしたアザラシを見つけた際、一般の人が家に連れ帰ったり保護したりすることは、鳥獣保護法違反になります。また、むやみに近づくと噛まれる恐れもあり、そこから感染症を引き起こす危険性も。まずは近づかず、その場所を管轄する自治体に連絡してください」

「助けたい」気持ちと、野生のルールのジレンマ

多くの人が期待する「水族館での保護」についても、現実はそう簡単ではありません。基本的には、網が絡まったり釣り針を飲んだりといった「人為的な理由」がない限り、手を出さないのが原則だといいます。

角川獣医師:「都会で暮らしていると『弱った動物の赤ちゃんを救ってあげたい』と思うのは自然な感情かもしれません。しかし、厳しいようですが、野生動物は自然の摂理の中で生きています。万が一死んでしまったとしても、それはほかの動物に食べられるなどして、命は循環します」

そして、もし水族館で保護して死亡した場合、一部は研究資料になりますが、多くは、悲しい現実として、法律上『廃棄物』として扱わざるを得ないそうです。

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写真はおたる水族館のアザラシ。海を仕切っただけのプールで生き生きと生活している=おたる水族館公式Xより

北海道の海に息づく、5種類のアザラシたち

北海道の沿岸では、今回のように野生動物が打ち上げられることは多くはありませんが、これまでにもあったそうです。今回、人目に付きやすい沿岸部に打ち上がったために話題になった可能性もあります。

ちなみに北海道内では、通年見られるゼニガタアザラシのほか、今回見つかったゴマフアザラシなど、計5種類のアザラシを確認することができます。

角川獣医師:「ゴマフアザラシはオホーツク海の流氷の上で出産することで知られていますが、実は小樽市の沿岸など日本海側でも出産しているようです」

もし海岸でアザラシに出会ったら…。それは「事件」ではなく、豊かな自然のワンシーンとして見守る。それが、私たちが野生動物と接したときの向き合い方なのかもしれません。

ライターコメント

ぐったりした赤ちゃんの姿を見たとき、私も「何とかしてあげたい」と胸が締め付けられました。しかし角川獣医師のお話を伺い、人間の感情だけでむやみに介入しないことこそが、野生動物への本当の優しさなのだと気付かされました。厳しい自然のルールを前に葛藤はありますが、安易に手を出さず、彼らが持つ生きる力を信じて「静かに見守る勇気」を持ちたいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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