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【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】病院搬送後すぐに足を切断するケースも!恐ろしい糖尿病②

  • 2026.3.27

食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。前回に引き続き、救急・集中治療専門医の立場から「糖尿病」を語っていただきます。

【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】病院搬送後すぐに足を切断するケースも!恐ろしい糖尿病②

■糖尿病も救急搬送の原因に

糖尿病も重度になると、救急搬送されるケースがあります。「意識障害」や「四肢・股間部の壊疽(えそ:腐ること)」が多いです。

「意識障害」に関しては、血糖値が低すぎても、高すぎても起こることがあります。
低血糖では、脳の主要なエネルギー源である糖分が供給されなくなることで意識が薄れるというのは有名かと思いますが、すでに内服治療やインスリン注射が始まっている患者さんが、風邪や胃腸炎になって食事が普段通り摂れなくなった場合になるケースが散見されます。

一方、高血糖は治療をさぼったり通院を自己中断するなどしたり、あるいは検診を受けておらず未診断であったり、本人の意思で未治療のまま過ごすなどして至ることが多く、著しい高血糖を察知した体が血糖を薄めようとして血管内に水分を移行させるため、脳が相対的に脱水状態になるなどして意識障害を引き起こします。こうして救急搬送された患者さんは、簡易血糖測定器では測れないほどの高値を示すことも珍しくありません。

■神経が蝕まれ、画びょうを踏んでも気づかない

「壊疽」に関しては、なぜそんなことになるかというと、虫が甘いものを好むのと同じように細菌も糖分が豊富な土壌を好むため、糖尿病患者さんの場合は小さな傷でも細菌が繁殖しやすく、すぐに感染してジュクジュクになってしまうというわけです。さらには糖尿病にかかると神経が蝕まれて痛みに鈍感になるため、患者さんは自分の体に傷ができていることすら気づけないのです。

よく例えとして「糖尿病になると画びょうを踏んでも気づかない」といわれますが、このことです。
信じられないかもしれませんが、傷にウジ虫が湧いている状態であるというのに、痛みがなかったからと病院を受診せずに家で様子をみていたという方もたまにいます。

■重度な感染で敗血症に

壊疽が起きやすいのは、傷をつくりやすい「手足」と不潔になりやすい「股間部」です。とてもここでお写真は出せませんが、「糖尿病性壊疽」や「フルニエ壊疽」と検索してみてください。恐ろしい写真がたくさん出てくると思います。このような重度な感染を起こすと、敗血症といって血圧が下がってフラフラになったり、意識が朦朧となったり、それこそ緊急で透析を回す必要まで出てくることがあります。

ここまでの状態にしないことが内科医の努めであり、ここまでの状態になってしまった患者さんの命を救うのが救急医や集中治療医の腕の見せ所です。

救命を目的として、病院搬送後すぐに足を切断したり、睾丸を落としたりといったことは日常茶飯事です。その後も連日麻酔をかけられて、傷がきれいになるまで壊死した部分を少しずつ削っていく入院生活が続くのです。こんなに怖い病気なのに、残念ながらそれが伝わっていないのが糖尿病なのです。

だから糖尿病には教育入院といって、「治療」よりも「病気を知ること」を主体とした入院があるのです。糖尿病以外でこのようなスタイルの入院はほぼありません。

[dancyu]

■食事は年に1000回。1回からでも見直そう

過去に検診で引っかかったことがある方、家族に糖尿病の患者さんがいる方、すでに先述の4疾患のうちのどれかにかかっている方は、ぜひ普段の食生活を見直してみてください。
食習慣を変えるのは容易いことではありません。明日から自転車通勤をしよう、明日から夜9時以降は何も食べない、明日から洋菓子はやめて和菓子にしよう……。これらも誰もが一度は描いたことのある幻想です。
今日の世の中は確かに誘惑が多すぎます。ネットでポチッとすれば数日後にはお取り寄せ品やスイーツは届きますし、日本では世界中の料理がすぐに食べられます。レストランで用意されているコース料理は医学的にはほぼすべて過剰栄養です。そんな日常の中で習慣を変えるには余程の意思がないと叶いません。
しかし「目が見えなくなってから」「透析が必要になってから」「手足が腐ってから」では遅いのです。食事というのは一般に1年に1000回以上行う行為です。どんなに小さな改変でも年に1000回するとしないとでは、結果は自ずと変わります。グルメを楽しく堪能しつつ、少しでも日本人の糖尿病罹患者が減ればいいなと切に願っております。


――教える人

「平松 玄太郎 先生」

埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。


編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

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