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【西小山でナチュラルワイン】閑静な住宅街にひっそり佇むバーで、「自分が毎日飲みたいくらい好きなワイン」を愛情たっぷりに伝える/『WEST』仲西正和さん

  • 2026.3.18

食いしん坊倶楽部のLINEオープンチャット「ナチュラルワイン部」では、今後、メンバーから寄せられた「ナチュラルワインの注ぎ手」を徹底取材してお届け。第9回は、dancyu2023年1月号「いま、東京で行きたいのはこんな店です。」特集と、26年冬号「名酒場の感動つまみ」特集で取材し、dancyu編集部員もリアルに何度も何度も通っている西小山『WEST(ウエスト)』の仲西正和さんが登場。ワイン愛ある仲西さんの丁寧な解説を聞いてから飲むと、味わいがぐっと深まります。

【西小山でナチュラルワイン】閑静な住宅街にひっそり佇むバーで、「自分が毎日飲みたいくらい好きなワイン」を愛情たっぷりに伝える/『WEST』仲西正和さん

■裏道にひっそり佇むワインバー

店内
店内

目立たない場所にある店ほど、魅かれるものがある。東急目黒線・西小山の静かな住宅街にひっそり佇むワインバー「WEST」もそんな店の一軒だ。カーブを描く天井の効果か、包容力ある空間のカウンター席は妙に居心地がいい。
店主の仲西正和さんは、ワインを注ぐ人であり、料理人でもある。その人生は、縁あって修業に入った岐阜の山奥の割烹から始まった。当時はワインとは無縁で、飲み始めたのは上京してから。ちょうど、気軽に行けるビストロやワインバーが都内にでき始めた時期だった。

店内
店内

「いいなと思う店に決まってあったのがナチュラルワイン。三軒茶屋の『ウグイス』をはじめ、巡る先々でカルチャーショックを受けていました。フランスのクリスチャン・ビネールのサヴール・プランタニエール2014を飲んで、なんでリンゴみたいな味がするんだろう、とか(笑)。そういうワインを出している店は、オーナーさんのセンスがもろに反映されて、料理も空間もかっこよくて。上京したての頃はカフェで働いていたんですが、僕もワインのある個人店を開きたいと日に日に思うようになっていったんです」
そうして都内の名ビストロでみっちり腕を磨き、2021年にWESTをオープン。連日連夜、おいしいもの好き、ナチュラルワイン好きが集まる店となった。

店主の仲西正和さん
店主の仲西正和さん

■感動を見つけた1本

ワイン
ワイン

「ラターはWESTに欠かせないワイン。ラターのガメイが僕はすごく好きで、ばんばん開けてきました」
フランスはローヌ地方、ドメーヌ・ラターのガメイ。とくに2021年ヴィンテージは、自分好みの要素が全部詰まっているという。ガメイ特有のチャーミングさ、アセロラやラズベリーのような明るい果実味、そして香りのなかにあるほのかな青さ。仲西さんが「自分の店に欠かせない」と語る理由は味が好みというだけの話じゃない。何より自分自身のセレクトの芯になったワインだから。
「上京してヴァン・ナチュールを飲み始めた頃は、もう引退してしまったレジェンドや、大御所の希少なガメイをまだまだ飲む機会がありました。今でもそういうワインを置いている名店で飲ませてもらうことはありますが、じゃあ僕のような新参の店で提供できるかといったら……ほぼできません」
そもそも自然な造り手のワインは生産量が少ないのが常。扱いたくても、大御所の造り手のワインを置ける店は限られているのが実状だ。けれど、扱えないからといってマイナスになるわけじゃない。
「現在進行形のよき生産者たちのワインをキャッチして味わって、自分の軸で感動を見つけることが僕らの仕事だと思うんです。だからこのラターを飲んだときはむしろ『来たー!』みたいな感覚がありました。今からでもイケるじゃん、と思えたきっかけのワインです」

ワイン
ワイン

■北の大地の農家のワイン

ワイン
ワイン

そうやって感動を覚えたワインを扱い続ける仲西さんには、特別な想いを寄せている造り手がいる。フランス産をメインに扱うなか唯一の日本産、北海道は空知地方のKONDOヴィンヤードだ。
「初めて飲んだのは4年ほど前。鎌倉のワインバー『祖餐』で店主の石井さんがブラインドで出してくれたんですが、香りからしてとんでもない唯一無二感が出ていて。フランス、オーベルニュ地方のピエール・ボージェという超鬼才のワインかと思ったくらいです」
やがて縁あって、KONDOヴィンヤードの畑を手伝いに行く機会に恵まれ、北の大地へ通うようになった。

ワイン
ワイン

「ワインも自然豊かな畑も素晴らしいんですが、一番惹かれたのは近藤さんの人柄。ユーモアがあって堅実で知的で、飾らないストイックさがある。それに、ぶどうを育てるのだから当たり前ではあるんですが、めちゃくちゃ農家なんです。常に畑にいる人。毎朝誰よりも早く畑に出て、お昼には奥さんの握ったおにぎりを食べて」
ワインは人が造るもの。それを目の当たりにし、近藤さんの人生が丸ごと詰まったワインに魅かれ、どんどんのめり込んで、いつでも手伝いに行きたい気持ちに駆られ続けているという。
2年前には近藤さんがWESTへ来てくれた。「感慨深かったです。大切な人との関係を築けたと思えました」といいながら、慈しむように仲西さんはボトルをそっとなでた。

ワイン
ワイン

■素材の味が冴えわたるつまみ

料理
料理

ワインに対してのリスペクトがあるから「料理はシンプルで落ち着く味がいい」。そう話す仲西さんのつまみも、いい。ワインバーにしては珍しく魚メニューが多いというのもいい。富山の鮮魚店から届くとびきり上等な魚を、この日はメジマグロをカルパッチョにして、カブの浅漬けとパセリオイルソースを垂らして仕上げた。
「岐阜でお世話になった親父さんの影響か、上質な素材に手をかけすぎない料理が好きなんです」
黒板に書かれているメニューは10余り。牡蠣のグラタン、田舎風パテ、フライドポテトに仔羊のカツレツなど、シンプルかつ魅惑的なメニューが並ぶ。黒板の一番上を陣取るパンデピスは隠れた名物で、欠かさずオーダーする常連も多い。
「パンデピスは以前、うちで働いていた丈君のレシピでつくり続けてます」。仲西さんはそう嬉しそうに切り出して、今はパリで料理人として活躍している彼と繋がる思い出の1本を教えてくれた。

料理
料理
料理
料理

■WESTから広まる新しい世界

ワイン
ワイン

「香水のようにアロマティックなジミオ。僕の大好きなワインです。ジミオのルージュ・ド・コースを、丈君がフランスに行くときプレゼントしました」
フランスに渡った丈君の頭の片隅にはきっと、ジミオの印象が深く刻まれていたのだろう。のちに縁あってジミオの造り手と出会った丈君は、頻繁に畑を手伝いに行く仲になっているという。「彼は僕の店に来てからナチュラルワインにはまったのですが、今は彼のほうが僕のずっと先を行っています。この店に関わってくれた人が変化して、新しい繋がりが生まれていく。そんなふうにWESTから何かが始まっていったら嬉しい。ジミオはそうした未来を体現してくれた1本なんです」
こんこんと溢れるワイン愛を語る仲西さんは、自分の感じた感動を惜しみなく手渡していく注ぎ手だ。そのまなざしは優しく、注がれるワインもまたどこか優しさを帯びている。

店内
店内

◇店舗情報

「WINE BAR WEST」
【住所】東京都品川区小山6‐9‐9
【電話番号】03‐6426‐8991
【営業時間】18:00〜21:30(L.O.)ドリンクは〜23:00(L.O.)
【定休日】日曜 月曜(月曜は営業する場合もあり)
【アクセス】東急目黒線「西小山駅」より4分


文:安井洋子 撮影:長野陽一

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