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テレビより本!同じ「座りっぱなし」でも認知症リスクは異なる

  • 2026.3.27
「座りっぱなし」でも何をするかで「認知症リスク」は変化する / Credit:Canva

「長時間座りっぱなしだと体に悪い」と言われてきました。

これは確かに事実ですが、ブラジルのサンパウロ大学(USP)などの研究チームは、「座っている時間そのもの」ではなく、「座って何をしているか」が認知症リスクと関係している可能性を示しました。

約2万人を19年間追跡したこの研究は、2026年3月25日付で『American Journal of Preventive Medicine』に掲載されました。

目次

  • 同じ「座りっぱなし」でも、テレビよりも事務作業や裁縫が健康的だと判明。
  • 座っていても、より「脳を使う」ことで認知症リスクが低下する

同じ「座りっぱなし」でも、テレビよりも事務作業や裁縫が健康的だと判明。

長時間座り続ける生活は、これまで体に悪いものとして語られることが多くありました。

実際、座っている時間の長さは、心血管疾患や2型糖尿病、うつ、認知症などと関係する可能性が指摘されています。

ただ、ここで研究者たちは一つの疑問を持ちました。

それは、すべての「座る行動」を同じものとして扱ってよいのか、という点です。

たとえば、テレビを見る時間と、デスクワークや読書、裁縫のように頭を使いながら座る時間では、同じ「座る」でも中身がかなり違います。

そこで今回の研究では、座る行動を大きく2つに分けて調べました。

1つは「受動的な座り行動」です。

論文では、テレビ視聴や音楽を聴くこと、浴槽に座ることなどが例として挙げられており、比較的、認知的な負荷が低い座位行動として扱われました。

もう1つは「能動的な座り行動」です。

こちらは、オフィスワーク、会議、裁縫など、座ってはいても頭や手を使う活動です。

研究チームは、スウェーデンの大規模コホート研究のデータを使い、35歳から64歳の成人2万811人を対象に、1997年から2016年まで約19年間追跡しました。

認知症を発症したかどうかは、スウェーデンの患者登録と死亡記録を照合して確認しています。

さらに、この研究の大きな特徴は、「置き換え」で考えたことです。

単に「どの行動が多いか」を見るだけでなく、「受動的な座り時間を減らして、そのぶん能動的な座り時間に置き換えたらどうなるか」という形で分析しました。

これは、現実の生活に引きつけて考えやすい方法です。

その結果、能動的な座り行動が多い人ほど、認知症リスクが低い関連が見られました。

では、どのくらい差があったのでしょうか。また、なぜ同じ座りっぱなしでも違いが出たのでしょうか。

座っていても、より「脳を使う」ことで認知症リスクが低下する

まず、具体的な結果です。

調整後の分析では、能動的な座り行動が1日1時間多い人は、認知症リスクが約4%低いことが示されました。

また、受動的な座り時間を能動的な座り時間に1時間置き換える統計モデルでは、リスクが約7%低下していました。

さらに、ほかの行動量を一定に保った別のモデルでは、能動的な座り行動の増加は約11%のリスク低下と関連していました。

ここで重要なのは、「座っていること」そのものが一律に悪いわけではない、という点です。

同じ座っている時間でも、その時間の使い方によって、認知症リスクとの関連が異なっていたのです。

ちなみに過去の研究や今回のプレスリリースでは、能動的な座り行動として「読書」も挙げられています。

このことからすると、同じ座りっぱなしでも、テレビをダラダラ見るよりは、意識して本を読む方が健康的だと分かります。

では、なぜこのような差が出たのでしょうか。

研究チームは、その理由の一つとして、頭を使う座位行動が、将来の認知機能の低下に備える「脳の余力」を保つことに関わっている可能性を挙げています。

座っていても、考える、判断する、手を動かすといった活動をしていれば、脳はより積極的に働きます。

また、受動的な座り行動は長く続きやすい一方で、能動的な座り行動のほうが、途中で小さな動きや休憩を挟みやすい可能性もあります。

研究チームは、こうした違いが血流や代謝などに影響している可能性も考えています。

さらに、能動的な活動には、仕事や趣味のように目的を持って取り組むものが多く、社会的なつながりや生活の張り合いとも結びつきやすい面があります。

こうした要素も、長い目で見れば脳の健康に関係しているのかもしれません。

もちろん、今回の研究は観察研究であり、因果関係を断定するものではありません。

また、研究が始まったのは1997年で、現在のようなスマートフォンやソーシャルメディア中心の生活は十分に反映されていません。

今後は、現代的な「座り方」も含めて、より詳しく調べる必要があります。

それでも本研究は、「座りすぎは悪い」と一括りにするのではなく、「座って何をするか」が重要である可能性を強く示しました。

年齢を重ねるほど、体を動かすことが大切なのはもちろんですが、座っている時間にも頭を使う工夫を取り入れることが、将来の脳を守るヒントになるのかもしれません。

参考文献

Activating your brain while sitting helps reduce dementia risk
https://www.eurekalert.org/news-releases/1120581

元論文

Mentally Active Versus Passive Sedentary Behavior and Risk of Dementia: 19-Year Cohort Study
https://doi.org/10.1016/j.amepre.2026.108317

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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