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9年乗った愛車が全損…「何でもいい」と選んだトヨタ30プリウスが、2ヶ月後に28歳女性を救ったワケ

  • 2026.5.6
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

いくらかかっても直したいと願うほど、大切だった初めての愛車。それを不条理な事故で突然失ったとき、人はどうやって次の車と向き合うのでしょうか。

今回は、9年連れ添った車を失い、心が折れたまま「乗れれば何でもいい」と、30プリウスを選んだ28歳の女性のお話です。敬遠していたはずの車との思いがけない日々が、彼女の傷ついた心をどう癒し、前を向かせてくれたのかを伺いました。

突然の事故で奪われた、どこまでも自分らしい大切な車

今回お話を伺った28歳のAさんにとって、免許を取って初めて自分のお金で買った日産のデイズは、ただの移動手段ではなく、9年間の思い出が詰まった特別な部屋のような存在でした。週末のたびに丁寧に手洗い洗車をし、コーティングで艶を保ち、お気に入りのホイールを履かせていたそうです。運転席側のドアには、一目で彼女の車だとわかる大きなパンダのステッカーを貼り、そこへ大好きなアーティストの歌詞を添えていました。どこへ行くにも一緒だった、ご自身のこだわりをちりばめた大切な相棒だったのです。

しかし、そんな穏やかで満たされた日常は、ある日突然、無残に断ち切られてしまいます。赤信号で停まっていたところ、後ろから走ってきた軽自動車に激しく追突されてしまったのです。のちに警察から受けた説明によると、相手の運転手はスマートフォンを見ており、ブレーキも踏まずにおよそ時速60キロメートルで衝突してきたと推定されたそうです。

激しい衝撃とともに、大切に手入れをしてきたデイズは一瞬にして変わり果てた姿になってしまいます。Aさん自身には幸い大きな怪我はなかったそうです。そして、「いくらかかってもいいから直したい」とすがるように願う彼女に伝えられたのは、修理は不可能で廃車にするしかないという、あまりにも残酷な現実でした。自分の一部をもぎ取られたようなショックは計り知れず、その後1週間ほどは涙が枯れるまで落ち込み続けていたといいます。

新しい車なんて考えられない…心が折れた状態での葛藤

深い悲しみの底にいても、日々の生活は待ってくれません。通勤やお子さんの送迎のためには新しい車を探さなければなりませんが、当時のAさんは、ほかの車に乗る自分など想像もできず、ただ走れば何でもいいと自暴自棄になっていたそうです。

そんな重苦しい空気のなか、ご主人が何気なく口にした「一度は乗ってみたい」という言葉から、トヨタの30プリウス(3代目プリウス)が次の車の候補に挙がります。Aさんご自身は、「それでいいかな」とただうなずくだけだったそうですが、その裏にはもう車選びで心をすり減らしたくないという、深い疲労感があったようです。

さらに彼女の胸の奥には、プリウスに対する拭いきれない戸惑いもありました。車の話題になるたび、一部で「気になる言葉」を言われるのを見聞きしていたため、自分がその車に乗ることへ強い抵抗感を抱いていたのです。

お子さんが2人いるため、スライドドアのN-BOXが使いやすいかもしれないと考えたりしていました。ですが、希望する条件の車は中古でも高額で、当時の家計を考えると簡単なことではありませんでした。結果として、ご主人の知人から、Aさんが好む車高調付きの状態で譲ってもらえる、今の30プリウスを選ぶことになります。一括で支払える約50万円という価格を含め、当時の心が折れていた彼女にとっては、これ以上悩まずに済む一番現実的な選択肢だったのです。

少しずつ溶けていく先入観と日常が教えてくれた魅力

こうして半ば流されるように、期待も何もないまま始まった新しい車との生活。購入当初のAさんは、ご自身の車でありながらどこか他人事のような、冷めた感情でハンドルを握っていたそうです。

ところが、乗り始めてから2カ月が過ぎた頃、ふとした瞬間にその固まった心が動き始めます。きっかけは、長距離を走った日のメーターパネルの表示でした。県をまたいで約3時間移動した際、前の車であればガソリンが半分ほど減っていたのに対し、プリウスのメーターはたった1目盛りしか減っていなかったのです。毎日運転しても給油が月に1回か2回で済むという圧倒的な事実は、子育て世代の慌ただしい日常をそっと支えてくれました。

また、実際に走り出してみると、車内の静けさや、道路の段差をなめらかにいなす乗り心地の良さにも驚かされたといいます。5人乗りの車内にお子さんと一緒に4人で乗っても窮屈さを感じず、荷物もすっと置ける余裕が、ささくれ立っていた彼女の心を少しずつ穏やかにしていったようです。

さらに、外装へのこだわりが強いAさんにとって、車高調で少し低く構えたシルエットや、窓に貼ったフィルムがご自身の好みにピタリと合っていたことも大きな転機でした。ただの便利な道具という枠を超えて、駐車場に停まっている姿を見るたびに乗りたくなる車へと、ご自身の感情が少しずつ色づいていったそうです。

悲しみの先で見つけた私に寄り添う新しい相棒

購入から約1年半が経過した現在、あの頃の無気力だった姿はもうありません。Aさんの生活の中で、30プリウスはすっかりなくてはならない存在になっています。週末の家族でのお出かけも、すべて彼女が運転するプリウスで行くようになり、お子さんたちもご主人の車にはほとんど乗らなくなったそうです。家族全員が笑顔で過ごせる空間として、生活の真ん中にすっかり馴染んでいる様子がうかがえます。

以前はあんなに気にしていた世間の先入観についても、今ではそれもこの車の個性だと思えるほどに、揺るぎない愛着が育っているそうです。そして何より印象的だったのは、「次に車を買い替える時もできれば50プリウスにしたい」と、とても晴れやかな笑顔でお話ししてくれたことでした。最初はあんなに拒んでいた車に対して、ここまで気持ちが反転することがあるのだと驚かされます。

初めての愛車を理不尽に失った悲しみは、決して完全に消え去るものではないかもしれません。それでも、その悲しみの先で出会った思いがけない車が、傷ついた心をゆっくりと温め直し、前を向く力を与えてくれることがあります。その時の自分に寄り添ってくれる車との出会いが、日々の生活をどれほど豊かに変えてくれるのかを、Aさんのお話を聞いて改めて教えてもらったような気がします。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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