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在日コリアンの一つの“今”を描く映画『トロフィー』7.10公開 新人俳優が主演、共演に井浦新、市川実和子ら

  • 2026.3.24
映画『トロフィー』ティザービジュアル (C)2026 K2Pictures width=
映画『トロフィー』ティザービジュアル (C)2026 K2Pictures

是枝裕和監督や西川美和監督の西川美和監督の監督助手を務めてきた、映像制作集団分福の新鋭・孫明雅(そんみょんあ)監督の長編デビュー作となる映画『トロフィー』が、7月10日より東京・テアトル新宿ほかにて順次公開されることが決定。特報、ティザービジュアル、場面写真が解禁された。

【動画】K‐POPアイドルのライブにいくためにソヒが売ったのは、父の大切な――映画『トロフィー』特報

本作は、在日コリアンのひとつの“今”を描いたオリジナルストーリー。

主人公は在日コリアンの14歳の少女・ソヒ。朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に打ち込む日々を送っている。ある日、日本学校との交流会で日本人の未来とK‐POP好きという共通点で仲良くなり、ソヒは少しずつ外の世界と繋がりを持っていく。そんな中、2人は推しのK‐POPアイドルのライブチケット代を稼ぐために、ソヒの家にある不用品をフリマサイトで売ることに。

そこで意外にも高値で売れたのは、朝鮮学校の校長である父・サンジュが持っていた一枚の北朝鮮のCDだった。それに味をしめたソヒたちは、サンジュが祖国・北朝鮮から授与された“勲章”までも売ってしまう―。

本作が長編映画初監督となる孫監督自身も在日コリアン3世であり、朝鮮学校に通っていた。その経験や葛藤の記憶を出発点に、朝鮮学校に通う少女・ソヒの視点から、家族や友人との関係、そして自らのルーツと向き合う日常を丁寧に美しく描き出した。

「あなたの中にある爆弾を作品にしてみたら?」という西川美和監督からの言葉をきっかけに、本作品の制作を決意した孫監督。監督自身も通っていた朝鮮学校の数が年々減り続けているという現状がある。「この作品を通じて多くの方々に、学校に通う子ども達が置かれている状況を知ってもらいたい」という強い思いを、物語に込めた。

繊細でありつつ、強いまなざしを持つ主人公・ソヒを演じるのは、圧倒的な透明感を放つ新人俳優・恒那(はんな)だ。250人のオーディションから選ばれ、本作が映画初主演となる。

自身も在日コリアンのルーツを持つ中で、外の社会と出会いながら、分かり合えない父、ルーツへの戸惑い、そして思春期の揺れる心と向き合っていく少女の姿を、みずみずしく、そして静かな強さをもって、描き出していった。

本作を構成する重要な要素のひとつが、朝鮮舞踊だ。ダンスやバレエなど、これまで踊りを一度も習ったことがなかった恒那は、プロによる指導の元、1年にわたる稽古を重ねて撮影に挑んだ。

民族の歴史や伝統を宿す朝鮮舞踊。その表現と向き合うソヒは、ただ純粋に踊りに没頭している。一方でそれと同時にその舞は、社会から向けられる視線や自らのルーツへの戸惑いと静かに重なり合っていく。朝鮮舞踊はソヒの波立つ内面を映し出すように、物語に確かな躍動感をもたらしていく。恒那は「この新しい経験が自分の成長にもつながった」と語っている。

主人公ソヒの父・サンジュを演じるのは井浦新。資金繰りの厳しい朝鮮学校の校長役として登場する。学校を守らなければいけない立場でありながら、ひとりの父親として家族を支えなければならない。祖国や学校に対する価値観を娘のソヒと分かり合えないことに割り切れない思いを抱えている。

監督からの出演オファーの手紙を読み終えたとき「自分ができる役割を果たしたいという気持ちが生まれた」という井浦。これまで、さまざまなジャンルで活躍してきたが、その俳優としてのキャリアのスタートは、是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』だ。

是枝監督のもとで映画づくりを学んだ新鋭・孫明雅監督の長編デビューとなる本作に、井浦は参加する。「孫監督らしい真新しい風が吹いていて、みんなで“今”にチャレンジしていたと思います」。その新しい風の中で、孫監督の第一歩に寄り添うように、本作に静かで確かな存在感を刻んでいる。

そして、ソヒの母・ミリョンを演じるのは市川実和子。「率直で素直な孫監督の誠実さに支えられながら、安心して作品に向き合うことができた」という市川が体現するのは、仕事に家事に追われながらも、家族を支え、日々を懸命に生きる母の姿。「思春期のきらめきや、ぐちゃぐちゃとした感情、狡さや純粋さまでもが丁寧に描かれていて、なんて健気で愛おしい物語なんだろうと心を掴まれた」と、本作への思いを寄せている。

そして朝鮮舞踊部の先生役を演じるのは、ちすん。自身も朝鮮学校出身で小学4年から9年間、朝鮮舞踊に青春を捧げてきた。オファーを受けて「おこがましくも、これは私にしかできないんじゃないか!」と思ったという。ちすんが舞踊経験者だからこそできる、厳しくも暖かく舞踊部員を指導する先生を演じ上げている。

そして朝鮮学校の担任・ホン先生役は、笠松将。朝鮮語を話すシーンも多い中で、見事にホン先生役を演じ上げた笠松は、「孫明雅監督の初作品でご一緒できてとても光栄でした」とコメントを寄せている。

特報映像は、鏡に向かうあどけない表情の主人公・ソヒから始まる。そこから、朝鮮学校、朝鮮舞踊、そして好きなK‐POPアイドルなど、思春期のソヒの日常の断片が映し出されていく。また、ソヒを取り巻く大人たち、井浦新、市川実和子、ちすん、笠松将の出演シーンも公開された。

ティザービジュアルに写し出されているのは、民族衣装のチョゴリに身を包み、静かなまなざしで遠くを見つめるソヒ。一見すると穏やかに見える表情の奥には、父との関係や自身のルーツをめぐる葛藤が静かににじんでいる。

今回、ティザービジュアルのソヒの撮影を手がけたのは、少女たちの青春を切り取った写真を多く手がける写真家・石田真澄だ。やわらかな光の中で、思春期の葛藤と刹那をすくい取るように、ソヒのまなざしをみずみずしく写し出している。

映画『トロフィー』は、7月10日より順次公開。

スタッフ・キャストのコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■監督/孫明雅

「あなたの中には爆弾がある。その爆弾を作品にしてみたら?」

朝鮮学校での日々に窮屈さを感じ、逃げるように日本社会へ足を踏み入れたという私の話を聞いて、西川美和監督はそう言いました。助手として師事していた頃の言葉がこの作品の出発点になり、自分の中で長く眠らせていた宿題と向き合うきっかけになりました。

しかし、デリケートなテーマゆえに、制作過程では協力してくださる方を募るのが難しく、最後まで走り切れるのか不安が尽きませんでした。それでも「この作品はやる意味がある」と支えて下さった方々がいらっしゃって、その方々のおかげでようやく形にすることが出来ました。感謝してもしきれません。

ここ10年で急速に朝鮮学校の数が減っている今、この作品を通じて多くの方々に、学校に通う子ども達の存在を知って頂けたらと思います。

■プロデューサー/小出大樹

孫監督とは、お互いが映画業界に入って間もない頃に出会い、この企画の提案を受けたときは8年ぶりの再会でした。是枝監督や西川監督のもとで監督助手として研鑽を積むかたわらで書き綴った本作の話を初めて聞いた時、”朝鮮舞踊”がどういうものかは知りませんでしたが、孫監督の描きたい在日コリアンの少女の話に惹きつけられました。

250人を超える参加者のオーディションを経て出会った恒那さんには、朝鮮舞踊の先生たちとの練習を長期に渡って積み重ねてもらうなど、キャスト、スタッフの皆さんと、ひとつひとつ学びながら、また、この作品に協力してくださった多くの方々のサポートのおかげで、作り上げることが出来ました。劇場に足を運んで、楽しんでいただければと思います。

■主演/恒那

初めてのことばかりで不安や緊張もありましたが、周りの方々にたくさん支えていただき、いろいろな経験をさせていただきました。その中でも大きな挑戦だったのが、初めての経験となった、劇中で踊る舞踊です。

最初は慣れない動きに苦戦して、自信を持って人前で踊ることができませんでしたが、練習を重ねていくうちに踊ることが楽しくなっていき、この新しい経験が自分の成長にもつながったと感じています。ぜひ舞踊のシーンにも注目して見ていただけたら嬉しいです。

また演技の面でも、ソヒという自分とは違う考え方を持つ役に、自分なりに向き合いながら演じました。ソヒが成長していく姿を感じていただけたら嬉しいです。

■井浦新

台本と共に孫明雅監督から作品への想いと参加へのお誘いのお手紙をいただき、読み終えた時にはこの作品で自分ができる役割を果たしたいという気持ちが生まれていました。そして、孫監督の師である是枝裕和監督からも、この様にお手紙をもらったことがあるなぁと師弟の素敵な連なりを感じました。

撮影監督は山崎裕さん。是枝監督とのデビュー作『ワンダフルライフ』から何度もご一緒し、私の始まりからの軌跡を知って下さる深いご縁のある巨匠カメラマン。

初長編作品の孫監督が熟練のマエストロと向き合いながら切磋琢磨している現場は、懐かしさを少し感じながらも、やはり孫監督らしい真新しい風が吹いていて、みんなで“今”にチャレンジしていたと思います。瑞々しく逞しく温かな作品。多くの方々に出逢っていただけたら幸いです。

■市川実和子

台本をいただいてすぐ、迷いなくお話をお受けしました。思春期のきらめきや、ぐちゃぐちゃとした感情、狡さや純粋さまでもが丁寧に描かれていて、なんて健気で愛おしい物語なんだろうと心を掴まれました。監督は、ご自身の書かれた台本そのままのように率直で素直な方で、違うときは違うと真っ直ぐに伝えてくださる。その誠実さに支えられながら、安心して作品に向き合うことができました。

私が演じたミリョンは、日々の雑務に追われながらも懸命に暮らすオンマです。綺麗事だけではない現実の中で、それでも生活を続けていく人間らしさを持った人物だと思っています。

一方で、「在日」という背景を演じることに、少し迷いもありました。朝鮮のことや歴史、その中にあるさまざまな感情を十分に理解していない自分が演じてよいのか、失礼ではないのかと、撮影中ずっと考えていました。そういう時に思い出していたのが、子どもの頃の記憶です。隣に住んでいたお姉さんが着ていたチョゴリの制服があまりにも可愛くて、意味もわからないまま、ただ憧れていた記憶があります。

この作品には、そんな“隣の家の中”をそっと覗き見るような感覚があると思います。うまく言えないのですが、その距離感のまま、他の誰かの暮らしに触れていくところが、この映画の魅力なんじゃないかなと思っています。恒那ちゃんは、初めてお会いした時は消えてしまいそうなほど儚げな印象でしたが、知るほどに飾り気がなくて、芯のあるしっかりとした人柄で。そのギャップがなんとも魅力的でした。そんなどっしりとした彼女に支えられながら、家族のシーンでも自然な親子関係を築くことができたのではないかなと思っています。

■ちすん

私自身、小学4年から9年間、朝鮮舞踊に青春を捧げてきた1人です。朝鮮舞踊の先生という役をいただいた時、おこがましくも、『これは私にしかできないんじゃないか!』と同時に、『いや、だけどずいぶんブランクがある、大丈夫かな』という不安も抱きました。

しかし舞踊部の子達と久しぶりに基礎練習をした時、体がしっかりと覚えていました。体が答えてくれました。あ、私には舞踊というものがしっかりと体の中に刻み込まれているとこの時確信しました。ただ、私が学生の時とは時代は変わり、環境もだいぶ変わりました。だけど、いつの時代も、何かに悩み、傷つき、苛立ち、色んなことを感じながら生きていくのは、普遍的なものであるとも感じています。

この令和の時代に朝鮮学校に通う子供、そして通わす親、登場人物それぞれの人生をぜひ覗いてみてください。

■笠松将

孫明雅監督の初作品でご一緒できてとても光栄でした。

撮影が終わったあと、86歳になられる撮影監督の山崎裕さんに言われた「また一緒にやりましょう」という言葉と、握手をした時の手の感触が忘れられません。

映画『トロフィー』特報

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