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ピンク色の「葉に擬態するキリギリス」を発見、環境変化に合わせた”超戦略”か

  • 2026.3.17

葉に擬態する昆虫は数多く存在します。

その多くが「緑色」であり、葉に擬態するなら当然といえます。

ところが今回、鮮やかなピンク色の「葉そっくりのキリギリス」が見つかりました。

しかもこの昆虫は、その後ピンクから緑へと体色を変化させたのです。

英国のセント・アンドリューズ大学(St And)などの研究チームは、これが熱帯植物の若葉をまねた擬態の可能性があると報告しました。

この研究は2026年3月7日付の学術誌『Ecology』に掲載されました。

※要注意:この記事にはモザイクなしの昆虫の画像が含まれます

目次

  • 葉に擬態するキリギリスで「ピンク色の個体」が発見される
  • 熱帯植物の変化に合わせて「ピンクから緑へ変わった」可能性

葉に擬態するキリギリスで「ピンク色の個体」が発見される

研究対象となったのは、中南米に生息するキリギリスの一種 Arota festae です。

この昆虫は、葉に似た丸みのある前翅を持ち、植物の葉そのもののように見えることで知られています。

ふつうは緑色ですが、研究者たちはパナマのバロ・コロラド島で、鮮やかなホットピンク色の成体メスを発見しました。

体長は約27ミリ、体重は約1グラムです。

実は、ピンク色のキリギリス自体は今回が初めてではありません。

科学文献では1878年以降、ピンクのキリギリスがたびたび報告されてきました。

ただ、これまでは多くの場合、そうした個体は色素異常のような珍しい突然変異だと考えられてきました。

「目立ちやすく、擬態ににはむしろ不利な色だ」と見なされてきたからです。

しかし今回の個体は、その見方を揺さぶりました。

研究者たちはこの個体を自然に近い温度と湿度のもとで30日間飼育し、緑の植物やリンゴ、水を与えながら毎日写真を撮って観察しました。

ケージの中には緑色のArota festaeも入っており、比較もできる状態でした。

その結果、体色ははっきりと変化していきます。

  • 発見時:鮮やかなピンク
  • 4日後:淡いピンク
  • 約11日後:完全な緑色

最終的には、ほかの一般的な緑色個体と見分けがつかないほどになりました。

さらにこの個体は、飼育中に交尾にも成功しました。

その後は緑色のまま過ごし、翌月に自然死しています。

ここで重要なのは、この変化が脱皮をまたがず、成体のまま起きたことです。

もし単なる突然変異なら、一生ピンクのままでいてもおかしくありません。

ところが実際には、1匹の成体が時間とともにピンクから緑へ変わりました。

この観察結果から研究チームは、「ピンク個体は単なる異常」と片づけるのは早いのではないかと考えたのです。

では、なぜこの個体は自然界でも目立ちそうな「ピンク色」だったのでしょうか。

熱帯植物の変化に合わせて「ピンクから緑へ変わった」可能性

研究チームが提案したのは、熱帯植物の若葉をまねた擬態という仮説です。

熱帯雨林では多くの植物に「遅延緑化(delayed greening)」という現象が見られます。

これは、生えたばかりの若葉が最初から緑ではなく、赤やピンク、白っぽい色をしていて、その後に緑へ変わっていく現象です。

研究地のバロ・コロラド島では、植物種の36%がこうした特徴を示すとされています。

つまり熱帯雨林には、緑の葉だけでなく、ピンク色の若葉もふつうに存在しているのです。

Arota festaeのピンク個体は緑色へ変化。周囲の若葉の変化に合わせている可能性 / Credit:J. Benito Wainwright(University of St Andrews)et al., Ecology(2026), CC BY 4.0

では、なぜ若葉はピンクなのでしょうか。

若い葉はまだクロロフィルが少ないため、赤やピンク、白っぽい色に見えることがあります。

しかもこの段階の葉は栄養価が低く、草食昆虫にとってあまり魅力的ではないと考えられています。

そのため、こうした色は若葉を守る防御の一部かもしれないと考えられています。

もしArota festaeがその若葉の色をまねているのだとすれば、話はとても面白くなります。

若葉が多い場面ではピンク色で紛れ、葉が成長して緑になるころには自分も緑へ変わる。

つまりこの昆虫は、葉の形だけでなく、葉が育つにつれて色が変わる流れにまで合わせている可能性があるのです。

これは単なる「葉っぽい色をしている」擬態より、ずっと動的で精密な戦略に見えます。

色変化の仕組みについて、研究者たちはカメレオンのような瞬時の変色ではなく、色素の変化がゆっくり進んだ結果だと考えています。

実際、変化には数日かかっており、神経的に一気に色が切り替わったというより、体内の色素が徐々に変わった可能性が高いからです。

また研究では、飼育中に食べた緑の植物や、周囲の背景色が変化に関わっていた可能性も指摘されています。

もちろん、まだ不明な点は多く残っています。

この色変化が元に戻るのか、変化のタイミングが遺伝で決まるのか、それとも環境によって左右されるのかははっきりしていません。

そして何より、この体色変化が野外で本当に捕食者をだますのに役立っているのかは、今後の実験で確かめる必要があります。

研究チームも、個体数の調査や野外での捕食実験が必要だとしています。

それでも今回の発見は、昆虫の擬態が単に「葉に似た形と色を持つ」だけでなく、周囲の植物が時間とともにどう変わるかまで取り込んでいるかもしれないことを示しました。

熱帯雨林の中では、目立つはずのピンクが、実は「うまく隠れる色」なのかもしれません。

この小さなキリギリスが見せた色変化は、自然のしたたかさを実に鮮やかに物語っています。

参考文献

Pink Is The New Green For Katydid Seeking A Survival Advantage
https://www.iflscience.com/pink-is-the-new-green-for-katydid-seeking-a-survival-advantage-82867

Bright pink insect stands out to blend in, scientists say
https://www.reading.ac.uk/news/2026/Research-News/Bright-pink-insect-stands-out-to-blend-in-scientists-say

元論文

Pink Cricket Club: Dramatic color change in a Neotropical leaf-masquerading katydid (Arota festae, Griffini, 1896)
https://doi.org/10.1002/ecy.70333

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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