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母を看取った2年後に父も倒れた病気の原因がわからないまま…病院と実家を往復する日々に疲労と焦り【作者に聞く】

  • 2026.3.15
ハッキリとした原因がわからないまま、父の身体からは次々と異常が見つかっていく。 作=キクチ
ハッキリとした原因がわからないまま、父の身体からは次々と異常が見つかっていく。 作=キクチ

右耳難聴や子宮内膜症など自身の体験を、わかりやすくコミカルな漫画で描いてきたキクチ(@kkc_ayn)さん。母親の自宅介護と看取りを描いたコミックエッセイ「20代、親を看取る。」は、自宅介護の現実や“親との死別”に向き合う中で揺れる感情を率直に描き、同じ経験を持つ人や親の老いを感じ始めた同世代から大きな反響を集め、2023年に書籍化された。

母を看取った2年後、今度は父が倒れる

「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ

現在描かれているコミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取ってから約2年後、父が突然病に倒れてしまうところから始まる物語である。母の介護と看取りを経験したことで、落ち着いて対応できる場面は増えたものの、一人っ子で頼れる家族がいない状況の中、数多くの決断を迫られることになる。誰もがいつか直面する“親の老いと死”をテーマにした作品だ。今回は、父の病の原因がまだはっきりしないまま、少しずつ体の異変が明らかになっていく様子が描かれている。

実家と病院を往復する生活、募る疲労と孤独

薬剤師から、父が服用していた薬が原因の可能性もあると聞いたキクチさんは、アプリのお薬手帳を共有することになる。自宅から実家までは電車と徒歩で片道1時間。さらに実家から病院までは自転車で15分という距離があり、リモートワークが可能とはいえ、仕事と見舞いを両立する生活は大きな負担となっていた。

「自宅から実家は電車と徒歩で片道1時間。実家から病院は自転車で15分。移動以外は実家の慣れない環境で仕事をして、食事はなるべく簡単に済ませるべく、父が購入したであろうレトルトやコンビニごはんばかり食べていました。誰もいない実家で毎日を過ごすのは、孤独でしんどかったです」そう振り返るキクチさん。家というものは、そこに誰がいるかで意味が大きく変わると実感したという。

両親がいない実家は、自分にとってはただの建物のように感じられた。だからこそ、夫のいる温かな自宅へ帰る時間が、この日々を乗り越えるうえで大きな支えになっていたそうだ。

意識のない父の手を握ったとき

病院では、父は多くの管につながれた状態で横たわっていた。近づくことすらためらうような雰囲気だったが、看護師から「手を握ってもいいですよ」と声をかけられる。キクチさんは父の手を握り、気丈に振る舞おうとする。しかし心の中では、さまざまな思いが押し寄せていたという。

意識のない父を目の前にしたとき、キクチさんの胸には自責の思いが押し寄せたという。こんな状況になるまで父を放ってしまったのではないか――そんな後悔が頭を巡り、気持ちはネガティブなループに陥っていった。

「なんて自分は情けないんだと思いました。会社の仕事だったら、誰かに『オムツ買っといて!』『おすすめの高齢者住宅あったら教えて!』『病院の手続きしといて!』と気楽に頼めるのに、そうはいかない…仕事とお見舞い以外の時間は、“名前のない介護”をするために費やされていきました」

肝臓、腎臓、そして胃…次々と見つかる異変

さらに状況は不穏さを増していく。父に鼻血の症状が見られ、肝臓と腎臓に続いて、胃にもダメージがある可能性があると説明を受ける。体のあちこちで異常が見つかり、不安は膨らんでいった。

「この時期は、入院して間もないということもあって、ありとあらゆる不調が時間単位で発覚していきました。身体がズタボロすぎて精密検査もできなくて、なぜこんな状態なのか原因の追求も難しく、出てきた症状に対して医師らが『打ち返す』みたいな状況でした。なので多くの医師からのコンタクトがひっきりなしに発生して『処置をしたいので同意書を書いてください!』とずっと捕まってましたね…(笑)」

父が倒れた決定的な原因はまだわからないまま。不安を抱えながらも日々を乗り越えていく様子を、キクチさんは淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描いている。

取材協力:キクチ

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