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米国の若年層の67%が“スマホ離れ”? ポラロイド社CEOに聞く、デジタル全盛期に「アナログ」を積極的に選ぶ生存戦略

  • 2026.3.13

1937年に、イノベーションとエンジニアリングの象徴としてエドウィン・ランド博士によって創業されたインスタントフォトグラフィーブランドのポラロイド。生産終了という二度の転換期を経て、2026年現在、“待望の復活”を遂げている。そこで今回は、同社CEOのDan Dossa(ダン・ドッサ)さんにインタビュー。この再生の背景について、また、デジタル時代におけるアナログ価値について、そして進化した新製品などについて詳しく話を聞いた。

ポラロイド社CEOのDan Dossaさんにインタビュー
ポラロイド社CEOのDan Dossaさんにインタビュー

――まずは、デジタル全盛のこの時代に、御社があえて“物理的な写真がその場で出てくる”という体験に注力されている理由を教えてください。テクノロジーが進化し続ける中でも、この体験は“決して古びない価値”であると確信しているのでしょうか。

【Dan Dossaさん】自分としては、ポラロイドのアナログ体験というのは“マジック”だと思っていて。カメラマンが暗幕の中でシャッターを切って…というような行為が、この1つのマシーンの中で全部完結するというところは、やっぱりすごくおもしろいところ、価値のあるところだと感じています。

“ポラロイドのおもしろいところ”について語るDan Dossaさん
“ポラロイドのおもしろいところ”について語るDan Dossaさん

――スマートフォンは“即座に確認・加工”できますが、ポラロイドは“像が浮かび上がるまで待つ”必要があります。この不便さの中に、なにがあるとお考えですか?

【Dan Dossaさん】たとえばスマホでは、10秒間で100枚の写真が撮れる…というようなデジタルな時代ですが、そんな中でも、やっぱりこの“像が浮かび上がるまで待つ”という時間はすごく大事な時間で貴重なものだという風に思っています。デジタル時代の中でも、「デジタルとアナログのバランスが取れるような商品を届けたい」というのが当社のポリシーなんです。そういう意味では、この“待つ時間”というのも、バランスを取るのにすごく重要な要素だと感じています。

デジタルを敵視しているアンチデジタルというわけではないんですよ。我々は、デジタルがあるからこそ、ポラロイド自体もすごく進化していると感じているんです。ただ、デジタル化が進んでいく中での“アナログのひと時”みたいなものを提案できるのではないかと。また、日本という国においては、「待てば待つほどいいものがある」とか、「いいものができる」というような、そんな精神性があると感じているので、我々の商品との親和性はすごく高いのではないかな?と感じています。

スマートフォンは“即座に確認・加工”できるが…
スマートフォンは“即座に確認・加工”できるが…

――日本にはほかにも、“プリクラ”や“デコレーション文化”など、独自の写真文化が根付いています。そんな中でポラロイドは、日本の若者にも受け入れられていると感じますか?

【Dan Dossaさん】ポラロイドの大きなユーザー層としては、アーティストやカメラを専門的にやられている方たち…というグループがある一方で、若い世代にもすごく人気があるという風に捉えています。

これはアメリカのデータになるのでどこまで日本に通用するかはわかりませんが、デジタルネイティブ世代とはいえ、データによると、アメリカの子どもたちの67パーセントは今、「自発的にスマートフォンを見ないようにしている」というような研究結果があるんです。そうしたことからもわかるように、若い方たちもアナログとのバランスを求めている。こうした時代だからこそ、ポラロイドが彼らにササっているんじゃないかな?と考えています。

――国際ブランド経営において豊富な経験を持ち、以前はThe Walt Disney Companyにて要職を歴任、特にDisney Consumer Products部⾨ではシニアポジションとして、世界各市場における事業成⻑とブランド拡張を牽引してきたと伺っていますが、そんなDossaさんから見て、ポラロイドという歴史あるブランドを「現代のライフスタイル」に適合させるために最も重要視しているポイントはなんでしょうか?

【Dan Dossaさん】ディズニーが皆さんのライフスタイルにどんどん入ってきているというのは、彼らがすばらしいブランドであるということはもちろん、ブランドストーリーを作っていくのがすごく上手だったということがあるかなと思うんですけれど、当社としても似ている部分があると感じています。先ほどの話と少し重複しますが、「デジタル時代において、あえてアナログの商品を出していく」とか、「インスタント写真は、暮らしをスローダウンさせたいという人たちのライフスタイルにマッチする」というストーリーがポイントです。

――2026年2月26日から開催されるカメラと写真映像の祭典「CP+(シーピープラス)2026」に初出展されると伺っていますが(2月25日の取材時点)、日本のコアなカメラファンやプロフェッショナル層に対して、どのようなメッセージを届けたいですか?

【Dan Dossaさん】私もすごく楽しみにしているんですけれども、まずは、自分たちの姿勢としては“学ぶ姿勢”がすごく大事だと考えています。フィルム事業の転換期に事業を終了して、2017年にポラロイドブランドとして新たな展開を開始したのですが、リスタートを切ってから10年という中で、日本のマーケットにもしっかりフォーカスしたい考えです。まずは日本の消費者の皆さまがどういうことを求めているのか、ポラロイドにどういうことを期待しているのかということを、お客さまと触れ合う中でしっかり聞き取り、感じ取りたいなと思っています。

――日本のクリエイティブシーンやファッション、アート界とのコラボレーションなどは計画されていますか?

【Dan Dossaさん】はい、これからもさまざまなコラボレーションをやっていきたいと考えています。過去には、偉大な画家であったり、ブランドさんともコラボレーションさせていただいた経験がありますので、それはブランドの1つの見せ方として大事にしていきたいと思っています。また、そのコラボレーション相手が持っているコミュニティと、私たちがどういう風に交われるか、どういう風に一緒にコミュニティを作っていけるか、そういったことも大事にしたいなと思っています。

――先ほどお話に出たように、ポラロイドは生産終了という危機を乗り越え、今まさに“待望の復活”を遂げています。この再生の背景にある、最も大きなブレイクスルーはなんだったのでしょうか。

【Dan Dossaさん】本当に皆さまのポラロイド愛に救われたなと感じています。多くの方たちから本当に愛されていたことがブレイクスルーのポイントだったなと。

現状は、実は需要と供給のバランスが合っておらず、お客さまが欲しいと思っているのに手に入らない…というようなことが起きてしまっています。これは過去50年を見ても稀に見る出来事。ですので今は、工場側への投資ということに踏み切っておりまして、しっかり生産体制を整えていくということを行っています。

話しながら考えていたんですが“ブレイクスルー”というのは本当に「今」なんじゃないかなと感じています。私自身、2024年9月からCEOになり、どんどん会社が進化していく中、一番着手してきたのが、会社を整えていく、成長に合わせてバックを整えていくということでした。そんな今だからこそ、ブランドのさらなる成長拡大というところに踏み切れているのではないかと。また、商品力があり、今のこの需要があるというところも大事なポイントです。ですので、そこに対してきちんと投資する体制も整ったということで、ここからさらに拡大していきたいなと考えているんです。

――史上最も高性能な光学性能を持つハイエンドインスタントカメラの新製品「Polaroid I-2」は、プロやハイアマチュアをターゲットにしています。このモデルが、ポラロイドのブランドイメージをどう変えていくと期待していますか?

【写真】Polaroid史上最も鮮明なレンズを採用した「Polaroid I-2」
【写真】Polaroid史上最も鮮明なレンズを採用した「Polaroid I-2」

【Dan Dossaさん】ブランドイメージと言うと、当社は“未来に向けたイノベーションを起こし続けているブランド”だと思っていただけるとうれしいです。プロ仕様の「Polaroid I-2」も、昨年発売された「Polaroid Flip」も、「Polaroid Now & Now+ Generation 3」も、一層進化したカメラとなっているんです。また、6月にはコンパクトな人気モデル「Polaroid Go Camera」でも新しい製品が出る予定ですが、このように、カメラとフィルムの分野において、常にイノベーションを続けながら新しいバージョンを出していき、ユーザーによりよい、すばらしい顧客体験をお届けしていくのが当社のコミットメントです。

手のひらサイズの「Polaroid Go」
手のひらサイズの「Polaroid Go」

――「Generation 3」では、リサイクル素材を40%使用するなど、伝統を守りながら持続可能性も追求されていますね。

クラシックなアナログインスタントカメラ 「Polaroid Now Generation 3」
クラシックなアナログインスタントカメラ 「Polaroid Now Generation 3」

【Dan Dossaさん】サステナビリティについては、製品においても当然大事にしていきたい部分ですが、自分は経営者として、会社全体でもそうしたことにもっと取り組んでいきたいと考えています。たとえば、工場を動かす時に出る温室効果ガスなどについても。さまざまな観点からこのサステナビリティというものに関して大事に考え、そのアプローチ方法についても検証している最中となります。

―― 写真についてですが、「データは消えるかもしれないが、プリントは残る」という価値についてお聞きしたいです。10年、20年後にインスタント写真を見返すことの意味を、ご自身はどう捉えていますか?

【Dan Dossaさん】皆さんと同じように、私も5万枚ぐらいの写真がスマホの中に入っているんですけれど(笑)、やはりこうしたデータを見返す時間よりも、物理的にあるプリント写真を見返す時のほうが時間を使っているなと感じるんですね。そういう意味では、我々が生み出せるのは、写真に向き合う時間や、写真に向き合う体験なんだと思っていますし、自分自身もそれが今の時代にすごく必要なものだと感じています。

「皆さんと同じように、私も5万枚ぐらいの写真がスマホの中に入っている(笑)」というDan Dossaさん
「皆さんと同じように、私も5万枚ぐらいの写真がスマホの中に入っている(笑)」というDan Dossaさん

――ちなみに、ポラロイドを美しく撮るためのお気に入りのコツがあったら教えていただけますか?

カメラを構えて写真撮影に応じるDan Dossaさん
カメラを構えて写真撮影に応じるDan Dossaさん

【Dan Dossaさん】ポラロイドには本当にさまざまなカメラがありますが、撮影がうまくない私でも「使いやすい」と感じる「Polaroid Flip」は特におすすめで、コツもいらないんですよ。4つのレンズシステムとソナーオートフォーカスを搭載しているので、カメラが一番いい形で写真を撮ってくれるんです。

懐かしさと革新が詰まった80年の集大成。ハイパーフォーカル対応の4レンズシステムを採用した「Polaroid Flip」
懐かしさと革新が詰まった80年の集大成。ハイパーフォーカル対応の4レンズシステムを採用した「Polaroid Flip」

――なるほど!それでは最後になりますが、ダンさんがこれまでポラロイドで撮影した中で最も記憶に残っている一枚と、その時のエピソードがあれば教えてください。

【Dan Dossaさん】OK!私は家族を中心に考える人間、ファミリーマンでして子どもは4人いるんですけれど、彼らと一緒に撮った写真はやはり一番記憶に残っていますし、大事にしています。また、最近ロンドンからアムステルダムに引っ越ししたのですが、ロンドンを離れる時にもたくさん撮りましたし、アムステルダムに到着した時にもたくさん撮りましたね。その時の家族の写真はいつも部屋の前に飾っていて、友人が来るとそれを見せたりしています(笑)。

取材・文=平井あゆみ

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