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バービーと考える、女の子と女性たちの多様な未来

  • 2026.3.9
Photo_ Underwood Archives/ Getty Images
Barbie Doll Fashion ShopPhoto: Underwood Archives/ Getty Images

2023年に公開されたマーゴット・ロビー主演の映画『バービー』は、世界中で旋風を巻き起こす大ヒットとなった。かつてはルッキズムを助長するなどといった批判もあったが、今ではあらゆるボディイメージ、職業、特性を持つ多様なバービーたちが存在し、「女の子は何にだってなれる(You Can Be Anything)」のメッセージが世界中に共鳴するアイコンとなった。

1992年から米大統領候補となるバービー人形が登場し、現在は200種以上の職業のバービーを展開。自閉症という特性を持つバービーの登場も記憶に新しい。社会のパラダイムシフトを先取るようなバービーの足取りとその背景、さらなる未来への取り組みに迫る。

バービー人形の多様化は保護者の声から始まった

──かつては“非現実的な体型”への批判もありました。現在の多様な体型・民族・職業の展開へと至った重要な転機や象徴的な出来事を教えてください。

バービーは1959年に、女の子たちが将来の自分を思い描いて遊べるような人形をという理念のもとに誕生し、それ以来、変容する社会や文化を映し出してきました。ただ、10年程前に、私たちは保護者の方々から「子どもの誕生日にバービーを贈ることを、もはや誇りに思えない」という率直な声を受け取りました。次世代をエンパワーメントすることを使命とするブランドとしてまず、みなさんの声に真摯に耳を傾けることが必要だと認識しました。そこで、親、女の子たち、専門家と対話し、バービーが女の子たちの身の回りの世界をよりよく反映するには何が必要で、何をすべきなのかを検討するためのタスクフォースを立ち上げました。最終的に、私たちはブランドの目的そのものに立ち返り、それを指針とすることにしました。

Photo_ ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.
Photo: ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.

2016年には、「Curvy(ふくよか)」「Tall(長身)」「Petite(小柄)」という3つの新しいボディタイプを導入し、これはブランドの進化における決定的な瞬間となりました。それ以来、肌の色、髪質、目に見える障がいや目に見えない障がいの表現も大きく拡充してきました。現在、バービーは市場で最も多様性に富んだドールラインを展開しており、より幅広く、より現実的な美しさとアイデンティティのスペクトラムを反映するよう設計されています。

──1959年のデビュー以来、バービーは社会における女性の変化を映し出してきました。購買傾向には地域差がありますか。たとえば欧米、中東、日本でどういった違いがあるのでしょうか。

世界で99%のブランド認知度を持つバービーは、まさにグローバルな存在です。私たちが展開するあらゆる市場で、共通してバービーが支持されているその最たる理由は、バービーの「女の子は何にでもなれる」というメッセージです。

同時に、購買傾向にはそれぞれの地域文化や憧れが反映されます。日本では、大人向けにデザインされたファッショナブルなコレクターズドールから、年少の女の子向けのキャリアテーマのドールまで、幅広い関心が見受けられます。これは日本市場において、創造的な自己表現から職業的な達成まで、多様な志向が存在していることを示しています。

1965年に発売された宇宙飛行士のバービー。Photo_ ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.
1965年に発売された宇宙飛行士のバービー。Photo: ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.

──グローバルブランドとして、女性らしさや女性の役割に対する文化差をどのように捉えていますか。日本市場ならではのアプローチや課題はありますか。

「You Can Be Anything(何にだってなれる)」というメッセージは文化を超えるものです。しかし、それをどう届けるかという点においては、市場ごとに丁寧に適応させる必要があります。日本では、ファッション、美容、エンターテインメントを含むローカルカルチャーに響くストーリーテリングを重視するとともに、黒柳徹子さんや大坂なおみさんをはじめとする日本のロールモデルたちに似せたドールも制作してきました。

また、日本市場向けに特別に設計した新たな取り組みもいくつか進めており、近いうちに詳しくご紹介できることを楽しみにしています。

バービー創世記を支えた日本人ドレス担当者の存在

1967年、パリで開催されたおもちゃフェアの店頭に並ぶバービーたち。この時期のバービーとその衣装はすべて日本で製作されていた。Photo_ KEYSTONE-FRANCE/Gamma-Rapho via Getty Images
Salon Du Jouet 19671967年、パリで開催されたおもちゃフェアの店頭に並ぶバービーたち。この時期のバービーとその衣装はすべて日本で製作されていた。Photo: KEYSTONE-FRANCE/Gamma-Rapho via Getty Images

──「You Can Be Anything」というメッセージは、どのような社会的背景から生まれたのでしょうか。

「You Can Be Anything」の根底にある信念は、1959年の誕生以来ずっとバービーに組み込まれてきました。ルース・ハンドラーは、娘が着せ替えの紙人形で遊ぶ姿を見て、バービー人形の着想を得ました。当時、女の子が想像できる将来像は主に「母親」や「(他者の)世話をする人」に限られているという現実がありました。ルースは、男の子が思い描くよう促される役割と、女の子に与えられていた役割との間に大きな隔たりがあることに気づいたのです。バービーは、その地平を広げるために生み出されました。

またバービーには、日本で特に意義深く感じていただけるかもしれない歴史があります。実は、最初のバービーは日本で作られました。デザイナーのシャーロット・ジョンソンは東京を訪れ、フランク・ロイド・ライトが設計した当時の帝国ホテルに滞在しながら、日本人のお針子で、その後長きにわたりバービーのドレス担当となる宮塚文子さんとともに、バービーの最初期の衣装22着をデザインし、手縫いで仕立ててくださいました。そのなかには、象徴的なゼブラ柄の水着も含まれていました。

最初期のドレス担当、宮塚文子が手がけたゼブラ柄の水着を着用したバービー。 Photo_ Joe DiasStylist:Beverly Elam ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.
最初期のドレス担当、宮塚文子が手がけたゼブラ柄の水着を着用したバービー。 Photo: Joe DiasStylist:Beverly Elam ©Mattel, Inc. All Rights Reserved.

二人には共通言語がなく、ほとんど身振りだけで仕事を進めていたそうです。バービー誕生から最初の10年間、すべてのドールと衣装は日本で作られていました。日本の女性たちの緻密な職人技こそが、バービーに命を吹き込むことを可能にしたのです。

65年以上にわたり、バービーは宇宙飛行士、大統領、医師、エンジニアなど、さまざまな姿を体現してきました。その根底にある問いは、今も変わりません──「あなたは何になりたい?」

──マテル社は、バービーのメッセージによってどのような行動が生まれることを期待していますか。共有できる取り組みはありますか。

私たちは、女の子たちが自分の可能性を最大限に発揮することを妨げる障壁を取り除く一助となりたいと考えています。世界的に展開しているBarbie Dream Gap Projectは、女の子が6歳ごろから自分の能力への自信を失い始めるという研究結果をもとに作られました。ロールモデルを「手に取れる存在」の人形として届けることで、そのギャップを埋めようとしているのです。女の子が宇宙飛行士のバービーを手にしたとき、何かが変わります。「私にもできるかもしれない」と、そう思える瞬間が生まれるのです。世代を超え、世界中へ広がっていくその波及効果こそ、私たちが目指しているものです。

Barbie Dream Gap Projectの開始以来、このブランドは200万米ドル以上を集めてきました。その資金は、教育、リーダーシップスキル、メンターシップの機会を通じて若い女の子たちの平等実現を目指す、世界中の非営利パートナー団体に配分されています。

──予想外の人気を集めたロールモデルドールはありましたか。日本での反応で特筆すべきものはありますか。

STEMをテーマにしたドール、つまり科学者、エンジニア、プログラマーのバービーは、世界的に非常に大きな反響を呼びました。自分たちの分野の次世代の女性たちにこのドールが与える影響を実感する、成人女性たちからも強い支持が寄せられています。

日本では、キャリアテーマのバービーに対する熱意関心が年々高まっており、とりわけ職業的・創造的な志向の強い女性たちから関心を集めています。

バービーとともに築くシスターフッド

──ジェンダーアイデンティティをめぐる議論がより深化するなかで、バービーはLGBTQ+ノンバイナリーの子どもたちにどのように語りかけていくのでしょうか。

バービーの発信するメッセージは、すべての子どもたちへ向けられたものです。そして、そのインクルーシブな精神は最近付け加えられたものではなく、バービーがこれまでずっと大切にしてきた理念の根幹にあるものです。

──2023年に公開された映画『バービー』は、フェミニズムをめぐる世界的な対話を巻き起こしました。その影響を、ブランドおよび社会的メッセージの観点からどのように評価していますか。

この映画は、世界中の何百万人もの人々が一緒に「バービーって、本当は何なのだろう?」と問いかける瞬間となりました。そこから解き放たれた感情の深さ──笑い、涙、そして対話──は、バービーがいかに深く人々の心のなかに生きているかを私たちに思い出させてくれました。この映画によって、子どものころにはブランドを愛していたけれど、大人になるにつれて距離を感じていた人々に、あらためてバービーを紹介する機会が得られました。そうした人々を再びブランドとの対へと招き入れることで生まれた文化的な議論を、私たちは大きな感謝とともに非常に大切に受け止めています。

──バービーの誕生日は国際女性デーの翌日です。この機会に、バービーは社会に、そして女性たち(女の子たち)にどんなメッセージを送りたいですか。

2026年、バービーはアニバーサリーと国際女性デーを記念し、「Dream Team」を発表します。これは、次世代への道を切り開いている世界の素晴らしい先駆者たちを称える取り組みです。彼女たちの功績に光を当てることで、世界中の女の子たちが自らの情熱を大胆に追い求め、無限の可能性を実現していくためのインスピレーションであり続けられたらと願っています。

──今後バービーは女の子だけでなく成人女性にとって、どのような存在でありたいと考えていますか。ジェンダー平等に取り組むブランドとして、どんな未来を思い描いていますか。

バービーは、単なる人形ではありません。彼女は「女の子は何にでもなれる」と伝え続ける、文化的影響力を持つグローバルなプラットフォームです。私たちは、社会が女の子のエンパワーメントをどう捉え、どう支えるかを変えていく、より大きなムーブメントを生み出したいと考えています。そして、そして、それは私たちだけで実現できるものではありません。

Interview & Text: Yaka Matsumoto

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