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結納が終わった後「お母さんの時にはなかったんよ」母が抱えていた『女の子としての寂しさ』それは

  • 2026.3.10

筆者の話です。
結納が終わったあと、母がぽつりとこぼした一言が、なぜか心に残りました。
その言葉の意味を知った時、私はある行動を選びます。

画像: 結納が終わった後「お母さんの時にはなかったんよ」母が抱えていた『女の子としての寂しさ』それは

結納の日

結納が終わったあと、母は飾られていた結納品の前に座り、中身を一つひとつ丁寧に確認していました。
のし紙や飾り、細かな道具を、指先で確かめるように静かに手に取り、並べていきます。
途中で母の手がふと止まりました。
白い麻糸を白髪に見立て、夫婦が共に白髪になるまで仲良く暮らせるよう願いが込められた「友白髪(ともしらが)」と呼ばれる縁起物の人形でした。

静かな違和感

母はその人形を見つめたまま、しばらく何も言いませんでした。
人形から視線を離さず、しばらく何も言わずにいた母の横顔は、懐かしむようで、どこかいとおしむような表情。
私は隣でその様子を見ながら、なぜ母が自分の結納の話をあまりしなかったのかを、ぼんやり考えていました。
特別に避けていたわけでもなさそうなのに、話題にのぼることがほとんどなかったことを、その時改めて思い出したのです。

ぽつり一言

沈黙のあと、母は静かにこう言いました。
「これ、お母さんの時はもらえんかったんよね」
そう言って、人形にもう一度そっと目を向けます。
その仕草が、言葉以上に多くのことを語っているように感じられました。

当時の状況では叶わなかったことを、責めるでもなく淡々と話す姿に、胸の奥が少しざわつきました。
何気ない一言だったはずなのに、その言葉と、ふと見せた寂しそうな表情だけが、なぜか心に残ったのです。

並ぶ人形

後日、結納用品を扱う店に問い合わせると、人形だけでも購入できると知りました。
私は婚約者と一緒に人形を選び、母に贈ることに。
「ずっと欲しかったんよ」と言いながら、大切そうに受け取る母の姿を見て、胸の奥が静かにあたたかくなったのです。

今も実家には、私の結納で届いた人形と、母に贈った人形が並んで飾られています。
形は少し違うけれど、同じ場所に並ぶその姿を見るたび、手に入れられなかった母の心残りを、少しだけほどくことができたのかもしれない。
そんな気持ちになる出来事でした。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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