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ジル サンダーというハウスが生む、洗練された色気【2026-27年秋冬 ミラノコレクション】

  • 2026.2.27

昨シーズン発表した自身初のジル サンダーJIL SANDER)コレクションで、シモーネ・ベロッティは「削ぎ落とす」ことに焦点を当てた。「とても精密なシルエット、それも余分な生地を取り除いた、とてもストレートでクリーンなものを追求しました」と言う彼は、2作目のコレクションではその逆を行った。パンツはサイドに沿ってラッフルが装飾され、コートの背面やスカートには深いスリットが入れられ、白いストッキングに覆われた脚が挑発的に覗く。「余分なものが、不可欠なものとみなされることはあるのか。それについて考えていました」。そう語るベロッティの手にかかれば、答えは「イエス」だ。

メンズウェアのデザイナーとしての経歴があるベロッティは、ニュアンスにこだわるテーラーだ。今季、彼はスウェーデン人フォトグラファーのアンダーズ・ピーターセンが1960年代後半にドイツ・ハンブルグのレッドライト地区にあるバーカフェ・レーミッツで撮影したモノクロ写真に目を向けた。常連客を捉えた写真の親密さに魅せられたとベロッティは言う。「身体を密着させているところとか、作品群を通して感じる、ある種の歪みに惹きつけられました。どこか違和感のあるまくれ上がり方をしたスーツは、襟が抜けているように見えますし、ショルダー部分が身体から切り離されているようなドレスも写っています。まるで、着用者が着ている服から逃れたがっているように見えます」

テーラーリング好きは、そういった服や身体の動きを綿密に再現できるベロッティの几帳面さに、強く引き込まれるのだろう。この日のショー観覧者も、すでに彼がデビューコレクションで展開したシャープなライン、印象的な配色、革新的な素材使いに魅せられているのが見て取れる。ベロッティはファッション通のためのデザイナーであり、手がけるピースのディテールの巧妙さは、伝わる人には伝わるのだ。

その巧妙なディテールは、さまざまなルックに落とし込まれていた。ボタンを閉めると身体を包み込むようなフォルムになる、曲線的なカッティングの“バナナ”ジャケットにコート。ウエスト部分の片側が折り返されたスカート。片脚だけ覗かせるように深いスリットが施された別のスカートは、蠱惑的というよりもクールに映る。ショルダーから滑り落ちるようなドレスはビスチェを土台にしており、とりわけ魅力的だ。そして、ルックの多くは背面が特徴的で、シンプルな白いしつけで縫い合わされている。一見、無機質なディテールにもかかわらず、そこには官能的なムードが漂う。

ブランド創設者のジル・サンダーはいっとき、自身のコレクションを飲み物にたとえる趣味があった。あるシーズンはコップ1杯の澄み切った水、またあるシーズンは赤ワインという具合に。『VOGUE』が配信するポッドキャスト「Run-Through」に出演した際、新コレクションについて聞かれたベロッティは「マティーニに飾られているオリーブみたいなもの」だと言った。「カクテルを格上げしてくれる、おまけみたいなものです」と。彼は弁も立つ。

こういったたわいないやり取りにも付き合ってくれるベロッティだが、シューズに関しては至って真面目だ。バリーBALLY)ではフットウェアでみるみるうちに成功を収めていった彼は、どうやらジル サンダーでも同じことを企てているように思う。

あらかじめ汚れ加工が施された薄茶のスエードブーツはカフェ・レーミッツ向きで、ショールームでは、ランウェイにも登場したストレッチの効いた黒いスキューバシューズが、虹色のルレックスといった素材違いで展開されていた。最も意外だったのは、アルフレッド・ヒッチコック監督映画『鳥』(1963)の主人公ティッピ・ヘドレンが履くようなパンプスが披露されたことだ。服の多くのように、パンプスは後ろ側で継ぎ合わせられており、色気が漂う。セクシーなジル サンダーが見られるとは、誰が思っただろう。

※ジル サンダー 2026-27年秋冬コレクションをすべて見る。

Text: Nicole Phelps Adaptation: Anzu Kawano

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