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「ザ・ロウ」“マルゴー”は自分を成長させてくれるバッグ|40代までにそろえたい名品

  • 2026.2.26
Pepper

昔ばなしでは、大きな桃から生まれた男の子や光る竹の中にいた女の子を見つけたおじいさんとおばあさんはうれしそうだったが、本当に無条件で喜んだのだろうか。最初は動揺し、とんでもないことになったと頭を抱えたのではないだろうか。

そんなおじいさんとおばあさんのアナザーストーリーを想像して、あの日の自分の姿を重ねてしまう。ただ私の場合、その手にあったのは「ザ・ロウ」の“マルゴー”だった。

2022年の冬、とある百貨店のエスカレーターを上がると、目の前に「ザ・ロウ」のバッグがずらりと並んでいた。

「ザ・ロウ」というブランドを知ったのは少し前のこと。ファッション業界の目利きたちが絶賛する服やバッグは、これまでどのブランドでも見たことがないほど無口でシンプル、なのに凛とした空気が伝わってくるような静かな強さがあった。その中でもボストンバッグのようなマルゴーというトートバッグに惹かれた私は、いつか本物を見てみたいと思っていた。

トレンドを超えた普遍的なたたずまいは、これから先もずっと一緒にいたいと思わせてくれる。オープントップで荷物の出し入れがしやすく、ショルダーストラップで両手を開けられるという機能面も文句なし。 Pepper

けれども、マルゴーは幻のバッグだった。いつもショップの棚はマルゴーが置いてあったと思われる場所がぽっかりと空いていて、実物にお目にかかることはできなかった。

そんな幻のバッグが突然目の前に現れ、自分の動悸(どうき)が激しくなるのを感じた。おそるおそる持たせてもらうと、思ったよりも軽くハンドルが手に吸い付くようにフィットする。柔らかくきめ細かいレザーのしっとりした深いブラックが上質さを物語っていた。今日はずっと欲しかったリングを買いに来たのに、どうしてバッグを持ったまま動けなくなっているの? バッグは必要なんだっけ?

そんなことをグルグル考えている間も、私はマルゴーから手を離せなかった。気づいたときには「これください」という言葉が口から飛び出していた。

自分の声に耳を疑ったが、いま買わないときっと後悔するだろうという予感もあった。ドキドキしながら店内の椅子に座って会計を待っていたとき、ふと横にあった鏡を見ると、そこには「ザ・ロウ」の世界観からかけ離れた猫背の中年女性がいた。一瞬で夢から覚めそうになったが、見なかったことにした。

家に帰り、マルゴーのコーディネートの参考にしようとインスタグラムを開いた私は、その場で凍りついた。「#マルゴー」で 画面にずらりと表示されたのは、ハイブランドをサラッと身にまとう洗練されたファッション上級者たち。あらゆるハッシュタグを駆使して検索するも、私のようになにかのバグでうっかり購入してしまった人は見つからない。もしかしてとんでもないものを手に入れてしまったのかも……私は手足がみるみる冷たくなっていくのを感じた。

いっそ使わずに手放そうか? だけど目の前のマルゴーはやっぱり美しく、手に持てば細胞レベルで好きだと思える。あのときの高揚感と直感を信じて、なんとか自分になじむように努力しようと決心した。

トレンチコートに着想を得たというバックルは、ジュエリーのように細部まで美しく仕上げられている。トレンチコートは私の定番なので、そのつながりにも惹かれた。 Pepper

それからは毎日、リモートワーク時のデスクにマルゴーを置いて、目を慣らした。ムツゴロウさんのようにバッグをなで回し距離を縮めた。内側のポケットには推しの写真をしのばせてくじけそうな心の支えにした。家族で出掛けるときや近所の散歩のときに持って、特別なものではないと脳に思い込ませた。

いまのままでは自信をもってマルゴーを持てない。どんな自分だったら堂々といられるかを具体化するために、マルゴーが似合う女性のイメージをPinterestで集めて、ヘアスタイルやファッションも見直した。

そんな試行錯誤の結果、いまでは気負わずどこへでもマルゴーと出掛けている。サイドのベルトバックルを荷物量に合わせて外し、好きなチャームを着けてみたり自分らしく持つことができるようになった。思い返せば、マルゴーは初めから高飛車でも威圧的でもなく、ただ静かにそこにいた。恐ろしい存在に見えたのは、ただただ自信のなさからくるものだった。

「ザ・ロウ」のバッグの使いやすさを実感したので、その後“パークトート”も購入。なんでもポンポン入れられて軽いので、ヘビロテしている。 Pepper

めったに店頭に並ばないマルゴーに偶然出合ったあの日、私はチャンスの神様の前髪を夢中でつかんだ。それは憧れのバッグを手に入れるチャンスではなく、私が成長するチャンスだったのかもしれない。

※すべて私物のご紹介のため、ブティックへのお問い合わせはご遠慮ください。

Hearst Owned
AYA KAWACHI

pepper/都内で働く40代の会社員で、2人の男の子の母。インスタグラムにつづる、懐かしのフレーズとユーモアを交えたファッションへの愛に魅了されるファンが多数。ジュエリー選びの虎の巻が詰まった著書『わたしのジュエリー365日』(CCCメディアハウス)も話題に。2024年7月よりELLE STYLE INSIDERとしても活躍中。

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