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櫻坂46『新曲MV』が映した“ライブ強度” スタンドマイクで更新した表現の“現在地”

  • 2026.4.1

櫻坂46が3月11日にリリースした14thシングルの表題曲「The growing up train」のMVが話題だ。センターを務めるのは藤吉夏鈴。監督は「自業自得」「UDAGAWA GENERATION」なども手がけてきた池田一真で、今作はスタンドマイクを使ったパフォーマンス、カノンやディレイを取り入れた高度な振付、そしてライブを彷彿とさせる迫力を併せ持つ作品として打ち出されている。櫻坂46にとって、映像作品は単なるプロモーションの枠を超え、グループの現在地を提示する場でもある。その意味でも「The growing up train」は、2026年の櫻坂46を占う最初の一手として強い注目を集めたMVと言っていい。

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櫻坂46三期生ドラマの完成披露試写会に出席した前列左から中嶋優月、小島凪紗、谷口愛李、的野美青、山下瞳月、後列左から村山美羽、遠藤理子、石森璃花、村井優、小田倉麗奈、向井純葉  (C)SANKEI

スタンドマイクが引き出した、櫻坂46の新たな表現

このMVの面白さは、櫻坂46がもともと持っていた“集団の強さ”を、スタンドマイクという新たな装置によってさらに際立たせたことにある。これまでの櫻坂46は、精密なフォーメーションや鋭い群舞によって、ひとつの大きなうねりを画面の中に作り出してきた。一方で「The growing up train」では、スタンドマイクが加わることで、動きの軸が縦に伸び、メンバー一人ひとりの立ち姿や表情の輪郭がよりくっきりと見えてくる。身体のライン、目線の置き方、マイクに手を添える一瞬の所作までが意味を持ち、これまで以上に“見せる意識”が前景化しているのだ。個が立つのに、グループとしての統一感は崩れない。むしろ、その両立こそが今作の大きな見どころである。

しかも、今作で際立つ“個”の存在感は、単にソロカットを増やして強調したものではない。スタンドマイクを前に正面を見据える姿には、歌を届けようとする意志がはっきりと表れている。そこには、ただパフォーマンスを見せるだけではなく、その先にいる観客へまっすぐ届けようとする感覚がある。森田ひかるがブログで、撮影中はずっとBuddiesが目の前にいることを想像していたと綴っていたように、このMVは最初から“観客のいる風景”を意識して作られていた。だからこそ、MVでありながら、どこかライブの始まりを思わせる空気が全編に流れているのだろう。

そして、そのライブ感を支えているのが、カノンやディレイを軸にした振付の妙だろう。櫻坂46のパフォーマンスは、全員がぴたりと揃う瞬間の美しさで語られることが多い。だが今作では、あえて生まれるわずかな時間差が、画面に推進力をもたらしている。ひとつの動きが遅れて波のように伝播していくことで、フォーメーションは静止した図形ではなく、前へ前へと進んでいく運動になる。タイトルに“train”を掲げるこの曲において、その時間差は単なる技巧ではなく、楽曲の疾走感そのものを可視化するための重要な仕掛けとして機能しているのだ。揃えるだけでは届かない躍動があり、少しずつズレて連なることでしか生まれない熱がある。その発想が、このMVに独特のスピード感を与えている。

2026年の櫻坂46を占う、重要なスタート

加えて印象的なのは、このMVが強い櫻坂46を描きながら、閉じた緊張感だけでは終わっていないことだ。ティザーや本編から伝わるのは、鋭さだけではなく、どこか風通しのよい高揚感である。池田監督が手がけてきた過去作と同じく高い強度を保ちながら、今作ではそこに爽やかさや開放感まで加わった。緊張感と爽やかさ、硬質さと開放感。その両方を抱え込めるようになったことは、グループにとって決して小さくない変化だ。

ここで映し出されている“成長”は、内向きに成熟していくイメージとは少し違う。経験を重ねた先で、より遠くへ届く表現を手にしようとする意志。自分たちの強みを理解したうえで、それをさらに開いていこうとする姿勢。その前向きなベクトルこそが、「The growing up train」というタイトルに込められた意味でもあるのではないか。櫻坂46はこのMVで、完成度の高さを示しただけではない。完成に安住せず、そこからもう一段先へ進もうとするグループの運動そのものを映してみせたのである。

「The growing up train」のMVは、新曲の魅力を伝える映像であると同時に、櫻坂46というグループの現在地を示す作品でもある。スタンドマイクによって立ち上がる個の存在感、カノンとディレイが生む推進力、そして観客の気配を内包したライブ的な“熱量”。これらが噛み合ったことで、今作はMVでありながら、すでにライブの記憶を先取りしているような不思議な強さを獲得しているように思えた。2026年の櫻坂46はここからどう加速していくのか。その期待まで含めて、この作品は非常に優れたスタートになったはずだ。


※記事は執筆時点の情報です

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04