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「これで老後は安心して暮らせる」退職金で住宅ローンを完済した人の“末路”…→数年後、家計を襲う“思わぬ大誤算”

  • 2026.3.19
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

「長年払い続けた住宅ローン。退職金で一気に完済して、これで老後は安心して暮らせる」と考える方は多いのではないでしょうか。

しかし、いざローンを完済してほっとしたのも束の間、思わぬところから多額の出費が発生し、老後資金が底をつきそうになるケースが後を絶ちません。「なぜ住居費がなくなったのに、お金が足りなくなるのか?」「退職金での一括返済にはどんな落とし穴があるのか?」

今回は、持ち家に潜む「見えない維持費」の正体と、老後の手元資金を安全に守るための正しい備え方について、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の中川佳人さんに詳しく解説していただきました。

ローン完済後に襲いかかる「数百万円」の出費の正体とは?

---住宅ローンを完済し、住居費の負担がなくなって安心していたところに「想定外の出費」が発生するのはなぜなのでしょうか?

中川 佳人さん:

「住宅ローンを完済した後に想定外の出費が発生する背景には、『住まいそのものの老朽化』と『住む人のライフスタイルの変化』という二つの要素が重なっていることが多いです。

住宅は年月とともに劣化していきます。例えば外壁や屋根の塗装、防水工事、給排水管の交換、設備機器の更新などは、築20年〜30年を目安にまとまった費用が必要になることが多いです。戸建ての場合、こうした修繕費を積み立てる仕組みがないため、問題が顕在化したタイミングで数百万円規模の支出が発生することも珍しくありません。

さらに見落とされやすいのが、加齢によるライフスタイルの変化です。階段の上り下りが負担になったり、浴室やトイレの安全性を高める必要が出てきたりすることがあります。その結果、手すりの設置や段差解消、浴室の改修など、いわゆるバリアフリー化の費用が必要になるケースもあるのです。住宅ローンを完済したことで『住居費の負担がなくなった』と安心しやすい一方で、持ち家には維持費という別の形の支出がある点が見落とされがちです。

修繕費や改修費用が重なることで、老後資金に影響が出てしまうケースもあります。住宅は長く住むほど手入れが必要になるため、計画的な資金準備が重要です。」

退職金での「全額一括返済」に潜む大きなリスク

---手元の退職金でローンを一括返済すれば、毎月の支払いがなくなりラクになる気がしますが、これにはリスクがあるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「退職金で住宅ローンを一括返済することは、心理的な安心感を得やすい一方で、手元資金を大きく減らしてしまうリスクがある点には注意が必要です。住宅ローンを完済すると毎月の返済はなくなりますが、老後の生活費や医療費、住宅の修繕費などはすべて手元資金で対応することになります。退職金の多くをローン返済に充ててしまうと、想定外の支出が発生した際に対応する余裕がなくなるのです。

例えば、外壁や屋根の修繕、給湯器やエアコンなどの設備更新は数十万円から数百万円規模になることがあります。また、加齢とともに医療費や介護関連の支出が増える可能性もあります。こうした費用は時期を正確に予測することが難しいため、ある程度の流動資金を確保しておくことが大切です。

基本的にローンは早く返した方が良いケースが多いですが、手元資金が少ない場合には、必ずしも退職金で全額返済することが最善とは限りません。ケースによっては一部繰り上げ返済にとどめ、手元資金を残しておくという選択肢も考えられます。老後の資金計画では『負債を減らすこと』だけでなく、『現金を持っておく安心感』とのバランスを考えることが重要です。将来かかる費用を見据えて資金計画を立て、手元に残すお金を準備するようにしてください。」

突然の出費に慌てないために。今すぐできる備え方

---想定外の出費で老後資金を枯渇させないために、私たちは具体的にどのような対策をしておけばよいのでしょうか?

中川 佳人さん:

「退職金で住宅ローンを完済した後に想定外の出費に慌てないためには、まず『ライフプランを立てること』が大切です。住宅ローンの返済が終わると住居費の負担が軽くなったように感じますが、老後の生活費や医療費、住宅の修繕費などは退職後も続いていきます。特に持ち家の場合、外壁や屋根の修繕、設備機器の更新など、まとまった費用が必要になる可能性が高いです。想定される支出を把握しておくことで、突然の出費にも落ち着いて対応しやすくなります。

ライフプランを立てる際には、老後の収入と支出のバランスを整理することが重要です。年金収入や貯蓄額を確認し、生活費や医療費に加えて、住宅の修繕費など将来発生する可能性のある支出も含めて考えてみましょう。将来のお金の流れを大まかでも把握しておくことで、いつ頃どの程度の資金が必要になるのかをイメージしやすくなります。

さらに、ライフプランをもとに住宅修繕のための資金準備を始めておくことも大切です。毎月1〜2万円を別口座に積み立てておくだけでも、数年後にはまとまった資金になります。退職後の住まいを安心して維持していくためにも、早めに将来のお金の流れを整理し、計画的に備えておくことが老後の安心につながります。」

「負債を減らす」から「手元に現金を残す」への発想転換を

退職金によるローン一括返済は、心理的な負担を大きく軽減してくれます。しかし、持ち家には「修繕」や「バリアフリー化」という避けては通れない維持費がつきものです。

手元の現金を減らしすぎてしまうと、こうした突発的な出費に対応できず、かえって老後の生活を脅かすことになりかねません。「早くローンを終わらせたい」という気持ちをグッとこらえ、まずはご自身のライフプランを立ててみることが大切です。

毎月1〜2万円の「修繕費積み立て」など、明日から始められる小さな準備が、10年後、20年後の大きな安心を作ってくれるはずです。


監修者:中川 佳人 監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance)

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。 専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。