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「税金が一気に膨れ上がる」“退職金”で数百万円差し引かれることに…お金のプロが警告する“2つの大きな落とし穴”

  • 2026.3.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

退職が迫ると、業務の引き継ぎや庶務手続きなどで慌ただしくなりますよね。

しかし、そんな中でも絶対に忘れてはいけないのが「退職金」に関する手続きです。

実は、ほんの少しの手続きミスや、良かれと思って選んだ受け取り方が原因で、手元に残る金額が大幅に減ってしまうケースが後を絶ちません。「なぜ、退職金で税金や保険料が跳ね上がるのか?」「賢く受け取るための正解は?」そんな疑問をお持ちの方も多いはず。

そこで今回は、数多くのアドバイス実績を持つファイナンシャル・プランナーの柴田充輝さんに、退職金にまつわる「2つの大きな落とし穴」と、定年後の家計を守るための対策について詳しくお話を伺いました。

退職金で損をしないための第一歩。「申告書」提出漏れの落とし穴

---退職金の手続きについて、まず何に気をつけるべきでしょうか?

柴田 充輝さん:

「退職金にまつわる大きな損失の原因は、主に2つあります。

1つ目は、『退職所得の受給に関する申告書』の提出漏れです。退職金には本来、長年の勤務に報いるために『退職所得控除』という大きな非課税枠が用意されています。たとえば勤続30年なら1500万円まで税金がかからず、さらに控除後の金額の半分にしか課税されません。

この申告書を会社に出し忘れると、税制優遇が一切適用されず、退職金の全額に対して一律20.42%の税金が天引きされてしまいます。2000万円の退職金なら、約408万円がいきなり差し引かれる計算です。本来なら数十万円程度で済むはずの税金が、一気に膨れ上がるわけです(ちなみに、確定申告をすれば超過分は還付されます)。

私も公務員を辞めるときに『退職所得の受給に関する申告書』を書いた記憶がありますが、そこまで難しい書類ではありませんでした。10分もあれば書けると思うので、忘れない内にサッと書いて提出しましょう。」

なぜ「年金形式」が危険? 手取り額が減る理由とは

---受け取り方についても「分割して受け取る方がよい」という話を耳にしますが、注意点はありますか?

柴田 充輝さん:

「2つ目は、退職金を『年金形式』で分割して受け取るケースです。一括で受け取れば『退職所得』として優遇されますが、年金形式にすると税法上は『雑所得』に分類されます。

ここで問題になるのが、公的年金も同じ雑所得であるという点です。退職金の分割分と公的年金が合算されることで総所得が膨らみ、所得税・住民税が上がるだけでなく、国民健康保険料や介護保険料まで連動して跳ね上がります。手取り額で見ると、一括受取より大幅に目減りしてしまうことがあるのです。

つまり、『申告書一枚の出し忘れ』と『受取方法の選び間違い』の2つが、代表的な落とし穴です。退職金を受け取る前に、それぞれしっかり確認しておくことが大切です。」

保険料負担の急増を避けるには? 退職後の家計を守る賢い選択

---退職後の生活費として、保険料の負担増も不安です。何かできる対策はありますか?

柴田 充輝さん:

「退職後の社会保険料の問題です。会社を辞めると、健康保険は『任意継続』か『国民健康保険(国保)』に切り替わります。在職中は保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、退職後はその恩恵がなくなるため、保険料が増えるのが一般的です。

特に国保は前年の所得をもとに計算されるため、退職前年の給与所得が高かった方や、退職金を年金形式で受け取って雑所得が増えた方は、保険料が年間数十万円単位で上がることも珍しくありません。

ただし、もうひとつ見落としがちな選択肢があります。配偶者やお子さんが会社員や公務員として働いている場合、収入要件を満たせば、その健康保険の『扶養』に入れるケースがあるのです。扶養に入れれば、ご自身の保険料負担はゼロになります。退職後の収入が年金中心で一定額以下に収まる方は、検討してみる余地が十分にあります。

退職直後は収入が年金だけになるケースも多い中で、保険料負担の急増は家計に大きな打撃です。任意継続・国保・子どもの扶養、それぞれの選択肢を比較したうえで、退職前にお住まいの自治体や、配偶者・お子さんの勤務先に条件を確認してみてください。」

目先の損得だけでなく、自分に合った「受け取り方」を考える

「退職所得の受給に関する申告書」の提出漏れを防ぐこと、そして源泉徴収票を大切に保管することは、まず実行すべき基本的な対策です。もし会社から提出の案内がなければ、自分から人事・経理部門に申し出る積極性も必要でしょう。

そして、何よりも重要なのは「退職金をどう受け取るか」という視点です。手取り額の計算はもちろん大切ですが、住宅ローンの完済やリフォームといった一時的な支出があるのか、それとも安定した老後資金を重視したいのか、ご自身のライフプランに合わせて選択することが何よりの鍵となります。

退職金は、長い勤労の対価であり、老後の暮らしを支える大切なお金です。目先の損得に左右されすぎず、ご自身の生活設計に最適な方法を、退職前から慎重に検討してみてください。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。