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我が家の壁に落書きをした犯人は? 正義感が招いたご近所トラブルを通して描く、複雑で異質な現代の人間関係【書評】

  • 2026.2.17

【漫画】本編を読む

ご近所づきあいが昔よりも減った現代、隣の家に住んでいる人とはゴミ出しのときにたまたま会って挨拶を交わす程度で、どんな人物、もしくは家族なのかはわからないという人は少なくないだろう。『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)は、とある住宅地に引っ越してきた一家の主婦が直面した、ご近所トラブルの顛末を描いたコミックだ。

子どもの小学校入学を機に、郊外の住宅地に引っ越してきた平川家。一児の母で専業主婦の平川里奈は、同じ学年の子どもを持つママ友や町内会の人たちと良好な関係を築いていた。そんなある日、子どもを連れて公園に行ったとき、見知らぬママの厳しい躾を見てそのママと口論になり、それ以降、里奈の家に落書きをされるなどの嫌がらせが発生する。里奈はあのママが犯人と考えるが証拠がないため、警察に相談しつつ自ら犯人特定のために動き出すのだった。

近所の住人たちも里奈に協力をするのだが、その過程で徐々に見えてくるのは彼らの腹の中だ。しょせん他人事として面白がる人、近所からの評判を落としたくなくて良い人を演じる人、この事件を利用して自らの欲求を満たそうとする人。里奈が実際は四面楚歌のような状態であることが明らかになっていく展開にはゾクリとする。そんな住人たちの思惑も絡み合い、口論からの嫌がらせでしたという単純な結果で終わらないために最後まで目を離すことができない。

本書のあとがきにもあるように、この物語の事件の発端は里奈の正義感だ。価値観や生き方が多様になった現代は、ひとりひとりがそれぞれの「正義」を持つためにぶつかり合うリスクがある。ご近所づきあいも含めて他人に対してどこまで踏み込むべきかという問いかけを、現代に生きる私たちに投げかけてくる作品だ。

文=278XR

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