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Netflix『ボーイフレンド』シーズン2が大反響を呼んだ5つの理由

  • 2026.2.13
Netflix

私たちがNetflix『ボーイフレンド』シーズン2に夢中になるのは、「ボーイズたちの恋が尊いから」だけではない。日本社会ではまだ語られにくい制度や家族、カミングアウト、コミュニティ内の複雑な関係性といった先進的なテーマに踏み込みながらも、視聴者が安心して見届けられる土台が、画面の外側にきちんと用意されているからだ。

その土台を支えているのが、異なる立場から「リアル」と向き合い、番組をサポートし共に視聴者に届けてきたふたりの存在である。プロデューサーとしてキャスティングから現場に深く関わり、出演者一人ひとりの生活と感情の近くに立ち続けたTaiki(タイキ)氏。そして、社会的な文脈を引き受ける視点から番組宣伝やメッセージのバランスを見つめてきた、LGBTQ+分野を中心に活躍するライター・一般社団法人fair代表の松岡宗嗣(まつおか そうし)氏だ。当事者として出演者に寄り添い、同時に視聴者側の受け止め方にも目を配る彼らが伴走しているからこそ、この番組は“刺激的な題材”を安全に扱いながら、画期的な挑戦へと踏み出せた。

<strong>Taiki</strong> オフィスブリエCEO、モデル、DJ、プロデューサーとマルチに活躍。 Hearst Owned

シーズン1で「男性同士の恋愛リアリティ」という前例を切り開いた本作は、シーズン2で生い立ちや年齢、価値観の多様性の幅をさらに広げた。一方で描かれたのは、理想化された多様性ではなく、当事者同士ですら意見が食い違い、迷い、ぶつかり合いながら関係を築いていくリアルな過程だった。リアリティショーに新たな旋風を巻き起こした本作の魅力を、Taiki氏&松岡氏へのインタビューとともに考察する。

1.共感を呼ぶ等身大なリアリティ

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――まず、シーズン2配信後の反響をどんな気持ちで受け止めていますか。シーズン1と比べて感情面での違いはありましたか?

Taiki シーズン1に比べて、シーズン2はもっと深いところまでリアルな部分をすごく出せたんじゃないかなって、視聴者のみなさんからの反響も踏まえて感じています。自分の中では「どういうふうに捉えられるんだろう」っていう気持ちが、シーズン1に比べて大きかったですね。同性同士の恋愛というところはもちろん、『ボーイフレンド』って恋愛だけではなくて、友情だったり、同性同士じゃないと分からないことっていうのを、本当にリアルに映像に落とし込んでいる物語なので。今回は特に、世の中の反応に対するドキドキのほうが大きかったです。

――その「ドキドキ」は、リアルをそのまま受け入れられないのではという怖さですか? それとも、ボーイズが傷つけられることへの不安もありますか?

Taiki 不安とはまた違うんですが「リアルが逆に知られる」みたいな感覚かな。当事者としてはありきたりなことではあるけれど、ストレートの方々にとっては新しく知るきっかけになることもあったと思うし、その“温度”だったり“レベル感”がどれくらい伝わるのかが分からなかったから、ドキドキしてたのかもしれません。

――リアリティショーは全然見ないけどこの作品は好きっていうストレート男性の友人に理由を聞いたら、身近にクィアやゲイの人がいても当事者じゃないから直接は聞きづらいリアルな声や経験を、番組で学べるからだって。単なる消費ではなく教育的価値も感じている人がいて、当事者ではない視聴者にとって「学びの入り口」になっていると思いました。

Taiki 確かに。ストレートの方々の中で気を遣ってくれて、「どこまで聞いていいんだろう」と迷い、あえて踏み込まないことも多いと感じています。ただ、理解しようとしてくれる姿勢自体はとてもありがたいですし、話すことがウェルカムな場面も多いんですよね。この番組が、そうした方々にとって直接は聞きづらいリアルに触れるきっかけになっていたのだとしたら、とても意味のあることだと思います。

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――今回ボーイズたちの、より等身大なリアリティに共感した人も多いと思います。キャスティングで重視したことを教えてください。

Taiki シーズン1に続き、一人ひとりが主人公として愛されるキャラクターであってほしいという思いは大前提としてありましたが、今回はよりみなさんの身近にいるような、企業で働いている方や大学生などゲイコミュニティの中でもリアルな生活を送っている人に出演してほしいという気持ちが強かったです。約1000名の方が応募してくれて、その数にも熱量にも驚かされましたが、選考基準としてはグリーンルームでの生活を「ありのまま」で過ごしてくれそうかどうか、というのが大きかったですね。

松岡宗嗣(以下、松岡) いわゆるBLドラマなどの作品が多くなっている一方で、カミングアウトして活躍しているゲイの俳優が増えているかというとそうでもない中、一般の当事者からこれだけの数の応募があったのはすごいことで、日本社会の大きな変化だなと感じます。ゲイと一言で言ってもいろんな人がいるので、その中で今回、身近にいそうでありつつ、多様なキャラクターの方が集まったことで、よりリアリティと厚みが出たと言えるかもしれません。

――キャスティングって、どうしてもコントロールできないことが多いと思いますが、シーズン2で想定外だった出来事はありましたか?

Taiki いくつかありますが、まず「知り合いが多かった」という点ですね。ゲイコミュニティ自体が狭いというのは分かっていましたし、ある程度つながりがあることは把握していました。でも、実際にどこまで重なっているかは、やっぱりやってみないと分からない。中でも完全に想定外だったのは、イザヤとウィリアムがお互いをブロックしていたことです。だから我々も事前の調べでつながりは確認できなかったし、もちろんそれぞれの事前のヒアリングからもお互いの存在は出てこず、あんな関係性があるということにこちらからは気づけなかった。そこは本当に予想外でした。

松岡 探偵みたいですね(笑)。

Taiki 本当にそう(笑)。キャスティングの段階から、イザヤとウィリアムの間にはこちらとしては勝手に運命的なものを感じていた部分もあって、そこは一つのフォーカスではありました。

――年齢の幅についても、意識されていましたか?

Taiki 意識していましたね。40代、50代の方の応募も実際にありましたし、恋愛は年齢に縛られるものではないと思っているので。素敵な人がいれば、年齢に関係なく参加してもらいたいという気持ちは、エグゼクティブ・プロデューサーの太田大さんとも共有していました。

2.弱さと向き合い、自分らしさをつかむ成長ストーリー

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――共同生活を通して、自分自身の弱さと向き合い成長していくボーイズの姿も印象的でした。特に「見違えるように変わった」と感じたメンバーは誰ですか。

Taiki 個人的にはトモアキです。本編でも描かれていましたが、どうしても悪いほうに考えがちだった彼が、グリーンルームでの生活を通して少しずつ捉え方が変わっていき、人生の見え方がネガティブからポジティブに変わった。その変化は、本人がいちばん感じていると思います。最後の出発のときに読み上げた両親への手紙……あれはもう、世界中のゲイの親に対する気持ちを代弁しているかのようで、撮影現場でも涙が止まりませんでした。

――キャスティングの時点で「この人の人生や生き方は、きっと視聴者の心に残る」と感じていたボーイズはいましたか? また、人としての成長をテーマにするうえで、選ぶときに意識していたことはありますか?

Taiki キャスティングのときから、フーウェイは何かしら残してくれる存在になるだろうなという感覚がありました。フーウェイはとにかくバイタリティがあって、ジェンダー論や人類学の研究に取り組んでいる点もそうですが、これまで歩んできた経験もとても多様で、その一つひとつが彼の独特な視点や人間性を形づくっているのだと感じました。グリーンルームに入ったときにきっと面白い存在になるだろうな、という予感がありました。言葉遣いも独特で、メタファーの使い方も含めて、視聴者の心に残るものがあるだろうなと感じましたね。実際に、お母さんへのカミングアウトや、ボーイズに渡した手紙など、いろんなものを残してくれたと思います。

松岡 ボーイズはあくまで当事者のひとりであって、ゲイ代表ではないんですが、Netflixで世界に出ていく以上、発言する言葉にどうしても“代表性”を帯びてしまう瞬間がある。その中で、フーウェイは社会に対する構造的な視点を持ちながら、個人の考えとして自然に言葉にできる存在でした。同性婚など制度の話も、当事者だからといってみんなが正確な知識を持っているわけではない。意見は一人ひとり異なっていいものですが、単に不平等を温存するだけになってしまうこともある。そうした議論に対して、社会の問題としてきちんと考えさせてくれた。シーズン1ではテホンがその役割を担っていましたが、シーズン2ではフーウェイがそのバトンを受け取ってくれた印象があります。ヒロヤも、その議論を支えてくれる存在だったと思います。

Taiki ほかにも、カズユキについては15年付き合ってきたパートナーがいて、その関係を終えて参加されるという点が大きかったです。ゲイの世界で15年続く関係って、本当に数えるほどしかない。失礼な言い方かもしれないですけど、正直「すごく興味があった」というのが本音です。どうやって15年も関係を続けてきたのか、どんな時間だったのか。そのうえで、新しい恋愛に進みたいと思った気持ちも含めて応援したくなりました。長く続かないと言われがちな中で、そういう存在を番組で見せてほしい、という思いもありました。

――松岡さんから見て、象徴的だった場面はどこですか。

松岡 エピソード12でトモアキとヒロヤがぶつかった場面ですね。あのシーンが本編に入っていたのは、とてもよかったと思います。ゲイコミュニティのリアルを描くという意味でも、当事者同士でも価値観がぶつかる、その衝突を避けなかったことが重要だった。トモアキが、自分が救われたコミュニティへの想いを、実直に伝えていたのが印象的でしたし、ヒロヤの伝え方にも問題はあったかもしれないけれど、気持ちが分かる面もある。その両方を含めてリアルだった。周囲のサポートもありながら、もう一度向き合って、和解していく過程は、人の成長とコミュニティの力、その両方が描かれていたと思います。

3.カミングアウトをめぐる十人十色の現実と葛藤

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――シーズン2では、家族との関係やカミングアウトが大きなテーマとして描かれていました。これは、企画段階から意識していたことなのでしょうか。

Taiki シーズン2の応募では「番組をきっかけにカミングアウトしたい」という方がすごく多かったんです。人生を変えたい、という言葉もよく聞きました。それはすごく嬉しい反面、正直に言うと、カミングアウトそのものが“ゴール”のように見えてしまうことへの不安もありました。個人的には、きっかけになることはとても意義のあることだと思う一方で、それ自体を前面に出しすぎるのではなく、その先にある人生や関係性のほうを丁寧に描きたい、という思いがありました。ただ結果として、カミングアウトはLGBTQ+の人生において、多くの方にとって向き合わざるを得ない大きなテーマの一つなんだと、改めて実感しました。

――カミングアウトというテーマを扱う中で、出演者のケアやサポートをした裏方として特に気をつけていたことはありますか?

松岡 シーズン1の時は、私自身かなりシビアに考えていました。カミングアウトしていない人が番組に出て、その結果、家族関係が悪化したり、人生に大きな影響が出てしまった場合、制作側がその先まで責任を取れるわけではない。その現実は無視できないと思っていました。一方で、カミングアウトは誰にとっても同じ形でうまくいくものではないし、タイミングも含めて自分で決めるべきものでもある。『ボーイフレンド』をきっかけに話す、という道ももちろんある。その場合は、できる限りのサポートをするという姿勢が大切だと思っていました。Netflixがそこは同じように考え、サポート体制を敷いていることを知り、安心することができました。

――カミングアウトをめぐって、それぞれが抱える現実や葛藤の多様さが提示されていました。

松岡 今回のメンバー構成は、カミングアウトしている人、していない人、その幅がとても広くてよかった。フーウェイのカミングアウトのシーンのように、豊かな知識があっても親に伝えるのは難しいケースもあるし、必ずしもすんなり受け止められないこともある。一方で、最初からオープンな人もいるし、若い世代でもまだ親に言えない人もいる。この幅が生々しく提示されていたのが、シーズン2のよさだったと思います。どちらかに寄りすぎてしまうと、「もう自由な社会だから困ってないじゃん」という誤解にもつながるし、「全員が番組をきっかけにカミングアウトする」という形になると、その先が大変になるかもしれない。それぞれの立場が違う中で議論できていたことが、とてもいいバランスだったと思います。

Taiki フーウェイが大学院の入学式で帰国した際、母親にカミングアウトすることは事前に誰ひとり聞いていなくて、本当に生々しいものがありました。

松岡 フーウェイのあの痛みにも共感を覚えるし、そこに寄り添って本人以上に泣いているボミを見てなんて素敵なんだろうって。ただただ「よく頑張ったね」と言いたくなるシーンでした。

――おふたりご自身は、カミングアウトについてどんな経験をされていますか?

松岡 私は大学生の頃に伝えました。比較的スムーズに受け入れてもらえたので、自分は「恵まれた方」だという自覚があります。だからこそ、カミングアウトについて語るときは、立場や状況によって大きな違いがあることを気をつけています。

Taiki 僕は大学1〜2年生の頃です。そのとき、自分自身がゲイに持っていた偏見を、親に指摘されたことがすごく印象に残っています。カミングアウトして終わりではなくて、そこから自分が学ばせてもらった、という感覚がありました。

――リュウキのように「言いたいけど怖い」と感じている人に向けて、伝えたいことはありますか?

松岡 カミングアウトは、必ずしも一度でうまくいくものではありません。しないことも、本人にとって大切な選択です。『ボーイフレンド』を見て、いろんな当事者の状況を知って、「もしかしたら言えるかも」と思うきっかけになるのもいいことだと思います。でも、それがプレッシャーになる必要はないと思っています。

Taiki 本当に正解はないと思います。「この人にだけは伝えたい」と思える相手がいれば、そのときでいい。タイミングも人それぞれなので、周りに合わせる必要は全くありません。

4.感情に響くエモーショナルな音楽

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――今シーズンは特に「音楽がエモい!」という声も多く聞きました。最終話、フーウェイとボミのクライマックスで流れるユーミンの「A HAPPY NEW YEAR」など、音楽の使い方についてはどのように考えていましたか?

Taiki 音楽は、エグゼクティブ・プロデューサーの太田さんが選曲とかけどころをとても意識して設計していました。「A HAPPY NEW YEAR」は、冬の北海道で撮影をすることを決めた直後に、この楽曲のことが真っ先に太田さんの頭に浮かんだそうです。“今年も最初に会う人があなたであるように”という純粋な気持ちが、雪景色にかかったら最高に感動的になるだろう、と言っていました。いわゆる年末年始の恋愛ソングというより、人生の節目とか、新しい物語が始まる瞬間に寄り添う曲として、最終話の深夜から日が明けて旅立ちの朝までの大切なシーンがフルコーラスで包まれて、フーウェイとボミの門出だけでなく、ボーイズたちの2ヶ月を祝福してくれる今シーズンのもう一つのメインテーマとも言える楽曲だと思います。

松岡 あの曲は本当に場面にピッタリで、感動的でした!

Taiki あの曲が流れた瞬間に、恋愛リアリティショーを見ているというより「人の人生を見ている」感覚に切り替わった人も多かったと思います。太田さんが話していたのですが、音楽って、言葉よりも先に感情に届く。特に「A HAPPY NEW YEAR」は、日本では多くの人が個人的な記憶と結びつけている曲でもあるので、「自分の人生」と地続きで受け止めやすかったのではないか、と。恋愛リアリティショーって、どうしても関係性の勝ち負けや、カップル成立・不成立に目がいきがちだけど、音楽が入ることで「この人たちは、ここから先も生きていくんだ」という視点に戻される。

松岡 確かに。シーズン2では音楽がすごくよかったと感じていましたが、本当に緻密にこだわっていたんですね。

Taiki 音楽で感情を誘導しすぎない、というのを大事にしていたことも太田さんのこだわりでした。泣かせたいからこの曲、盛り上げたいからこの曲、というよりも「この場面に、静かに寄り添う音かどうか」。その判断を積み重ねていった感覚に近いと思います。

――メインテーマがシーズン1と同じく韓国のバンド、グレンチェック(Glen Check)なのも郷愁感があってよかったです。

Taiki 太田さんが今回冬のラブソングを彼らに新曲で書き下ろしてもらったのが「Bloom」です。イントロがおどろおどろしいと話題になっていますが(笑)、北海道の冬の厳しい寒さを感じさせるイントロから、徐々に視界が開けて春の芽吹きを思わせるような流れがリクエスト通り表現されていて、太田さんも最高の楽曲だと言っていましたね。

5.誰もが自分らしくいられる未来へのメッセージ

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――最後に、時代と共に「多様性」という言葉が一般的になりましたが、今の社会に対して「もっとこうなれば」と感じることはありますか?

松岡 視聴者がカミングアウトのシーンで涙するのは、そこにまだ社会の壁があるからだと思います。「ふつう」という社会の枠から外れると、やっぱり生きづらさを抱えたり、制度や周囲の人々の認識によって安心して生活できない壁があることを突きつけられる。「なぜ心が動かされたのか」を考えること自体が、社会をよりいい方向へ変えていく一歩になるはずです。

――結婚制度がない中で、長い関係性を築いていくことについて、番組を通して見えてきたことはありますか?

松岡 ゲイコミュニティの中では、カップルは「長く続かない」と言われることが多くありますが、その背景には制度の問題もあると思います。結婚ができない中で、どうパートナーシップを築くのか、当事者同士でも十分に語られてきたとは言えません。だからこそ、イザヤとウィリアムの関係のように、長期的な視点で相手の立場や考え方を探っていく姿が描かれたことは、とても意味があったと思います。また、フーウェイやヒロヤのように、制度の問題に目を向けて言葉にしてくれる存在がいたことも大きかった。繰り返しになりますが、個人の話が社会の構造につながっていく、そのバランスが取れていたと思います。

Taiki 多くの人は、単純に「知らない」だけだと思います。同性同士で結婚できない何が不便なのか、どんな現実があるのかを知ることで、受け止め方は変わる。その「知るきっかけ」として、この番組が機能して誰もがもっと自分らしくいられる未来につながれば嬉しいです。

Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』シーズン2独占配信中

text : DANIEL TAKEDA

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