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【ばけばけ】伏線回収!打ち捨てられた花束をトキ(髙石あかり)は見つけていのだと視聴者が知った瞬間、友情も復活!

  • 2026.2.2

【ばけばけ】伏線回収!打ち捨てられた花束をトキ(髙石あかり)は見つけていのだと視聴者が知った瞬間、友情も復活!

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節子をモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

持たざる者のやり切れない思いが響く

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・小泉セツをヒロインとする髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第17週「ナント、イウカ。」が放送された。

ヒロインのトキと、ヘブン(トミー・バストウ)が結婚してから放送回上ではすでに数週間が経過しているが、それぞれの登場人物の関係性の変化といった、どちらかといえば内面を描く展開がメインで、主要な登場人物の人生にとっての大きな展開はさほどない状態が続いているといっていいかもしれない。これは、小泉セツ・八雲夫妻をモデルに「何も起こらない」物語を描くという、脚本家のふじきみつ彦が掲げたテーマに沿ったものでもある。

この「何も起こらない」中でもそれぞれの人生は過ぎて行き、誰しも生きていれば「何も起こらない」なりの「何か」は起きる。それが多くの人にとっての人生だろう。第17週は、登場人物それぞれの微妙な距離や関係性が、より深く掘り下げられた週だった。

前週より続く、ヘブンとの結婚によって「勝ち組」になってしまったトキ、そして松野家と幼馴染のサワ(円井わん)との溝は深まるばかりだ。この溝の描写の微妙な深さは、トキが悪意なくナチュラルにマウントをとるようなスタンスで接することで結果的にサワの心をえぐっているところにある。

いっぽうで、校長昇進の話が持ちかけられ進路に迷う錦織の内面にもスポットが当たる週となった。サワと錦織、それぞれが抱える思いを可視化させ物語の中で有機的に機能させるような役割をもって登場したのが、錦織の友人の庄田(濱正悟)だ。

錦織の「大盤石」に対して「半分弱」という名で呼ばれた庄田であるが、物語の3分の2近くまできたここへきて、錦織が抱える衝撃な事実が発覚する。庄田は、錦織が校長となったあとの松江中学の英語教師への就任を知事(佐野史郎)に打診されるが、その話を断る。そのなかで発覚したのが、錦織はそもそも教員試験に落ちており、帝大も卒業できていなかったということである。

帝大をきちんと卒業し、教員資格も取得した庄田にとっては、錦織の出世ぶりにはもやっとする思いを抱える部分があるだろう。「変わったなお前は。次期校長だもんな」という久しぶりの会話にもどこか棘があるのは仕方ないだろう。錦織と庄田にも、トキとサワに似た、なんとなくラッキーで地位を得た者に対する溝が同じように存在する。運を掴んだ者に対する2つの溝が並行して描かれながら、持たざる者のやり切れない思いが響く。

サワは、当初その申し出を断ったものの、「利用するくらいの気持ちでやったら?」と促され、庄田に勉強を教わることとなり、少しずつ心を開いていき、同じ場所にいたと思っていたトキが手の届かない「シンデレラ」になってしまったと本音を打ち明ける。その思いは理解できる庄田だが、そこに「嫌いとか憎いではないんです」というセリフを重ねてくるところが、誰が悪いわけでもない親友との微妙な距離が詰め込まれているようだ。

もともとそういう一面は描かれてきたが、無意識に人を傷つけることもあるトキの無邪気さは、ここへきてますます強調されてきた。庄田とサワがなんとなくいい雰囲気であるような描かれ方をし、そこへトキがやはり無邪気に恋愛脳的な関わり方をして笑い合ったりする描写も挟まれ、傷を舐め合う者どうしで結ばれる展開になるような気配も流れ始めた。

ほのかな恋心に蓋をして、自分の足で立とうと

実際、庄田は一度は断った英語教師を引き受けたこと、錦織とも話し合いをしてきたことを真っ先にサワに報告したかったと言い、「ワシと夫婦になろう。惚れてるんだ、おサワさんに」とプロポーズする。しかし、サワはそれを断ってしまう。それをトキに報告するうち、込み上げる涙が堪え切れず溢れかえってしまう。

「おトキのせいだわ。私はおトキにはなれん。おトキと同じ道は歩めん。シンデレラにはなれんけん……おトキはシンデレラなんだけん」

シンデレラとシンデレラになれなかった者。世に生きる人々の人生は、努力が報われることもあるし、それが大切であることは変わりないのだが、運をつかめるかどうかに左右されることも極めて多い。「何も起こらない物語」とはそういうある種のリアリティを突きつけてくる物語でもある。

サワが借金を返せることも含めて、同じような立場の庄田が差し伸べた手を掴めなかったこと、それは運に頼らず(大きな運が舞い込むこともなかったわけだが)ずっと自分の力で、(ほぼ一人だけ)真面目に勉強し努力してきたサワは、自分自身がそこまで歩んできた誇りによってほのかな恋心にも蓋をして、自分の足で立とうとした。そこになんとも複雑な人間の心理が突きつけられた思いだ。

サワがずっと抱えてきた本音を突きつけることで、「ようわからんけどごめん」と、鈍感さを見せながらも、ようやくトキとサワの溝はある程度埋まったのかもしれない。

そして、「ついでにもう一つごめん」とトキが差し出したもの、それは野花の束であった。トキとサワの溝が決定的なものとなった場面、結婚したトキを訪れた際に玄関先に飾られた立派な花を見て、持参した小さな花束をサッと投げ捨てた場面を誰もが思い出しただろう。この打ち捨てられた花束をトキが見つけて察することはないのかと思っていたが、こういう形で回収され、ふたりの友情が再び回復したことを知ることができた。

しばらく続いたトキのシンデレラ生活との溝も埋まったことで、物語は新たなターンへと突入するだろうか。「何も起こらない」中で起きる人間模様とそれぞれの人生はいよいよ残り3分の1となったところでどう展開していくのか。そして、「何も起こらない」とはいいつつも、ヘブン(=八雲)が残した大きな足跡『怪談』は、どの段階で登場してくるのか。2月以降の展開に期待したい。

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