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「妙に生々しい…」「もう二度と観れない」“あまりのリアリティ”に視聴者騒然…当時17歳の人気女優が魅せた傑作映画

  • 2026.2.20

ドラマや映画の中には、軽い気持ちでは踏み込めない作品があります。今回は、そんな中から"観るのに覚悟がいる過激な映画"を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、映画『脳男』(東宝)をご紹介します。感情を持たない美しき殺人鬼と、純粋な悪意。正義とは何かを残酷なまでに問いかける、日本映画界の常識を覆した衝撃作とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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京都国際映画祭 二階堂ふみ (C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『脳男』(東宝)
  • 公開日:2013年2月9日
  • 出演: 生田斗真(鈴木一郎 / 入陶大威 役)ほか

都内近郊で無差別連続爆破事件が発生しました。刑事の茶屋(江口洋介)は犯人のアジトを突き止めますが、そこで確保できたのは身元不明の男・鈴木一郎(生田斗真)だけ。

共犯者として精神鑑定を受けたこの男は、並外れた知能と肉体を持ち、感情を持たずに悪を抹殺する「脳男」と呼ばれる殺人マシーンでした。担当医の鷲谷真梨子(松雪泰子)が彼の人間性を信じて過去を探る中、真犯人の緑川紀子(二階堂ふみ)が「脳男」を誘い出すために病院を襲撃し始めます。

それぞれの「正義」が交錯する中、想像を絶する死闘が幕を開けるのでした――。

最高峰の布陣が集結したミステリー映画

本作は、第46回江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於さんの同名ベストセラー小説を原作としています。監督には『犯人に告ぐ』の瀧本智行さん、脚本には映画『八日目の蝉』を監督した成島出さんと『毎日かあさん』の真辺克彦さんという、日本映画界を代表する才能が集結しました。

主演の生田斗真さんは、半年間の武術稽古を積んで「感情を持たず、痛みを感じない殺人マシーン」・鈴木一郎という難役に挑戦。共演にはその精神鑑定を行う医師役の松雪泰子さん、正義感の強い熱血刑事役の江口洋介さん、そして連続爆弾魔・緑川紀子役を怪演した当時17歳だった二階堂ふみさんといった豪華実力派キャストが名を連ねています。

緻密なロジックと圧倒的なバイオレンスが融合した本作は、観る者の倫理観を揺さぶるバイオレンス・ミステリーです。

「正義」のパラドックス

本作の見どころは、凄惨なバイオレンスと静謐な美しさの融合、そしてそこから浮かび上がる重層的なテーマにあります。

撮影監督・栗田豊通さんの手による映像は、光と影のコントラストを強調した独特の美しさがあり、暴力的な描写の中にさえ詩的な情緒を宿しています。

さらに、主題歌に起用されたキング・クリムゾンの名曲『21世紀のスキッツォイド・マン』が、作品全体を覆う狂気とカオスを鮮烈に印象づけます。

物語の核となるのは、並外れた知能と肉体を持ち、感情を持たず正義のために機械的に悪を抹殺する「脳男」・一郎と、「どんな人間にも善の心はある」と信じて彼に向き合う精神科医・鷲谷の対峙です。 この対極にある二人の関係性は、「感情のない正義は、果たして正義と呼べるのか」という根源的な問いを観客に投げかけます。

感情を持たない主人公・一郎は、彼と対峙する人間、ひいては観る者の内面を映し出す「鏡」のような存在です。この「鏡」を通して、私たちの内にある「正義と悪」、そして「愛や心」といった根源的なテーマが容赦なく浮き彫りにされます。 そうした精神的な深淵を描き切った点こそが、本作の真骨頂と言えるでしょう。

二階堂ふみが体現した“徹底悪”

本作において、主人公をも凌駕するほどの衝撃を与えたのが、連続爆弾魔・緑川紀子を演じた二階堂ふみさんです。SNSでも「インパクトがすごい」「猟奇的な演技に戦慄した」といった声が上がるほど、その存在感は圧倒的でした。

撮影当時17歳だった二階堂さんは、この難役のために眉毛を全剃りし、さらに監督の「病的に痩せてくれ」という指示に応えて過酷な減量を敢行。 炭水化物や糖分を一切断つことで自然といらだちが募り、その凄まじいオーラで役を体現したといいます。

一切の共感を拒絶する純粋な悪意そのものを演じきったその姿は、まさに「神演技」と言わしめる怪演でした。この役を通して、カメレオン女優としての評価を不動のものにしたと言っても過言ではありません。

まだ10代だった彼女が見せつけたこの底知れぬポテンシャルは、その後の日本映画界を背負って立つ女優となる予兆を、強く感じさせるものでした。

驚異の生々しさで魅せた名作

本作が「観るのに覚悟がいる過激な映画」と呼ばれる理由は、キャストとスタッフが文字通り命を懸けて刻みつけた、生々しさにあります。

廃倉庫でのアクションシーンは27時間にも及び、江口洋介さんが「落ちそう(失神しそう)になった」と語るほどの極限状態で行われました。以下のように語っています。

リハーサルも含めて27時間くらいやって、僕も落ちそうになりました。ここまでやるかという感じでした出典:『生田斗真、二階堂ふみの首を絞めて失神させて「トラウマです」』cinemacafe.net 2013年2月9日

さらに、生田さんが二階堂さんの首を絞めるシーンでは、監督が求めるリアリズムに応えた結果、二階堂さんが実際に失神してしまうという壮絶なハプニングも発生。生田さんが以下コメントのように「トラウマになった」と語るほどの、鬼気迫る瞬間がフィルムに焼き付けられています。

監督から『もうちょっと首を絞めてもらわないと、絞めているように見えない』と言われて、忍びなかったけどグッとやったらふみちゃん、落ちちゃって…。17歳のコを落としてしまったとトラウマになってます…出典:『生田斗真、二階堂ふみの首を絞めて失神させて「トラウマです」』cinemacafe.net 2013年2月9日

精神科医役の松雪泰子さんもまた、撮影中に自分がどこにいるのかもわからなくなるほど精神的に追い詰められ、現場で原因不明の涙を流したといいます。

CGに頼らない爆破シーンの熱風や、登場人物たちが抱える救いのないトラウマ 。それらすべてが一体となり、観る者の倫理観を根底から揺さぶりました。

予想以上にエグかった」「妙に生々しい…」「もう二度と観れない」「ダークさが心に刺さった」「ヒトコワの大傑作」――こうしたコメントは、本作が単なるエンターテインメントの枠を超えていることの証(あかし)です。

キャストとスタッフが文字通り命を削って刻みつけた痛みと狂気。本作は、まさに「観るのに覚悟がいる過激な映画」の名にふさわしい一作です。


※記事は執筆時点の情報です