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「とんでもなく生々しい」並外れた“過激シーンの連続”に衝撃…「邦画史上1番好き」“熱狂的支持”を集める至高作

  • 2026.2.17

ドラマや映画の中には、軽い気持ちでは踏み込めない作品があります。今回は、そんな中から"観るのに覚悟がいる過激な映画"を5本セレクトしました。本記事ではその第2弾として、映画『GONIN』(松竹)をご紹介します。社会の底辺に追い詰められた5人の男たちが、大金強奪という禁断の賭けに出たことから始まる壮絶な抗争劇。血と雨にまみれながらあぶり出される、危うい絆と歪んだ愛の行方とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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横山めぐみ 2002年ごろ撮影(C)SANKEI

作品名(配給):映画『GONIN』(松竹)
公開日:1995年9月23日
出演: 佐藤浩市(万代樹木彦 役)/ 本木雅弘(三屋純一 役)ほか

バブル崩壊のあおりを受け、多額の借金を背負ったディスコ・オーナーの万代(佐藤浩市)。 彼のもとに集まったのは、男娼として生きる美青年・三屋(本木雅弘)、元刑事の氷頭(故・根津甚八さん)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)、そしてリストラされたサラリーマンの荻原(竹中直人)でした。

社会から弾き出されたこれら5人の男たちは、起死回生を賭け、暴力団・大越組事務所を襲撃。金庫に眠る大金の強奪に成功します。 しかし、まもなくして彼らの正体を突き止めた大越組は、冷酷なヒットマン・京谷(ビートたけし)とその相棒・柴田(木村一八)を雇い、容赦ない報復を開始します。

恋人や家族までもが巻き込まれる、凄惨かつおぞましい殺戮の抗争。 降りしきる雨と血の海の中で、男たちにもたらされる結末とは……?

追う者と追われる者―豪華競演が彩るノワール

本作『GONIN』は、劇画家としても活躍した故・石井隆監督が脚本・監督を務めた、90年代日本映画を代表する傑作です。

バブル崩壊によって社会から弾き出された5人の男たちが、起死回生を賭けて暴力団事務所からの現金強奪を企てるという、時代の閉塞感を色濃く反映した物語でもあります。

何と言っても圧巻なのは、今では考えられないほどの豪華なキャスティングです。佐藤浩市さん、本木雅弘さん、根津甚八さん、竹中直人さん、椎名桔平さんという、当時の日本映画界を牽引する実力派俳優たちが集結。さらに、彼らを追い詰めるヒットマン役にはビートたけしさんと木村一八さんが起用され、その圧倒的な暴力性と静かな狂気は、観る者を震え上がらせました。

撮影は、石井監督とのコンビで知られる佐々木原保志さんが担当。雨のシーンが多いことで知られる石井監督らしく、降りしきる雨の中で繰り広げられるアクションは、残酷でありながらも息を呑むほどスタイリッシュな美しさを湛えています。

安川午朗さんの音楽や、ちあきなおみさんの劇中歌『紅い花』が、その退廃的で美しい世界観を一層際立たせました。

狂気と色気が交錯する奇跡のアンサンブル

本作の最大の見どころは、破滅へと突き進む男たちの“美しき死に様”と、その極限状態で描かれる究極の愛です。単なるバイオレンス・アクションの枠を超え、本作がカルト的な人気を誇る理由――それは、登場人物たちが放つ、血なまぐさくも妖艶な色気にあります。

特に、万代(佐藤浩市)と三屋(本木雅弘)の関係性は、多くのファンを魅了し続けています。言葉で多くを語り合うことはなくとも、冒頭から漂う万代の三屋への視線、そして死線を共にする中で生まれる信頼と献身。それは「男同士の絆(ブロマンス)」を超え、ある種の恋愛感情に近い激情として描かれています。二人の間に交わされるキスシーンは、本作における必然的な愛の帰着。それゆえ、映画史に残る美しさと称賛されています。

そして、男たちの地獄絵図に鮮烈な哀しみを添えるのが、横山めぐみさん演じるタイ人娼婦・ナミィーです。その体当たりの熱演は「圧巻」と絶賛されました。パンチドランカーの元ボクサーであるジミー(椎名桔平)と生きたいというささやかな願い。しかし、荻原(竹中直人)が強奪した金と共に彼女のパスポートを持ち去ったことで、二人の逃亡という希望は残酷にも絶たれてしまいます。理不尽な運命に翻弄される姿は、「可哀そうで居たたまれなかった」「本当に切なかった」と観る者の涙を誘いました。

また、物語の後半では、主人公たちの「素人臭さ」と、敵の「プロの恐ろしさ」が強烈に対比されています。

主人公・万代たちが無計画に人を集めた際、仲間の氷頭(根津甚八)は呆れて「ヤクザと野球でもするつもりか」と言い放ちます。彼らはあくまで、金に困った素人の集まりに過ぎないのです。

その一方で、彼らを追う京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)は、冷徹なヒットマンです。さらに注目すべきは、この殺し屋コンビの間に漂う妖しい空気感。万代と三屋の友情を超えた関係と対比するように殺し屋二人の同性愛関係が描かれています。ビートたけしと木村一八が放つ鮮烈な印象は、観る者の記憶に深く刻まれました。

日本映画史に刻まれた金字塔

1995年という年は、バブル崩壊による長引く不況の中、リストラや多額の借金苦など、行き場のない閉塞感が社会全体を覆っていた時代でした。本作は、そんな時代から弾き出された男たちの狂気と熱情の結晶です。

そんな中で繰り広げられる過激描写の数々に「過激なんてもんじゃない」「とんでもなく生々しい」といった声があがるほど、本作は多くの人に強烈な印象を残しています。さらに、「日本映画史に残る名作「邦画史上1番好き」と熱狂的に支持する声も後を絶ちません。

四半世紀を経てもなお色褪せないその映像世界は、観る者に強烈な痛みと、それ以上のカタルシスを与えてくれます。 血と雨に濡れた男たちが最期に見せる表情。それは、絶望の淵で初めて自らの「生」を実感した瞬間の輝きなのかもしれません。

この熱狂は単発の作品に留まらず、翌1996年には女性5人を主人公にした『GONIN2』が、そして2015年には19年後の世界を描いた続編『GONIN サーガ』が製作されました。特に『サーガ』では、引退状態にあった根津甚八さんが一度限りの銀幕復帰を果たし、前作の魂を次世代へと繋ぎました。

まさに「観るのに覚悟がいる過激な映画」であり、シリーズを通じて日本映画史に深く刻まれたバイオレンス・ノワールの金字塔です。


※記事は執筆時点の情報です