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3年前 “朝ドラヒロイン”が異彩を放った至高ドラマ 「NHK様どうか再放送を…」「しつこいぐらい言う」数々の“快挙”を遂げた作品力

  • 2026.2.16

ドラマや映画の中には、放送をきっかけに大きな話題を呼び、記憶に刻まれる作品があります。今回は、そんな中から“快挙を遂げたNHKドラマ”を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、NHKドラマ『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)をご紹介します。わずか15分の夜ドラ枠ながら若者の葛藤を鮮やかに描き切り、高い評価を受けた本作。その小さな枠から生まれた大きな反響とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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主演映画「ゴーストキラー」の公開記念舞台あいさつに登壇した女優・髙石あかり(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)
  • 放送日:2023年8月21日 - 2023年10月12日(全32話)
  • 出演:蒔田彩珠(笠松ほたる 役)/ 髙石あかり(鍵谷美晴 役)ほか

就職活動で連戦連敗が続いている大学4年生の笠松ほたる(蒔田彩珠)。そんな彼女には、どうしても意識してしまう“天敵”の存在がありました。

小学校からずっと一緒。今も家の近くに住んでいる同級生、鍵谷美晴(髙石あかり)です。クラスで揉め事が起きれば、迷いなく正論を口にし、トラブルにも動じず創意工夫で乗り越えていく。いつも周囲の視線を集め、自然とスポットライトの中心に立っているような存在でした。ほたるにとって美晴は、まぶしすぎる幼なじみだったのです。

もし、自分があの子だったら――。そんな思いが、頭をよぎったほたるは、美晴の個性やエピソードを自分のものとして書き換え、エントリーシートを提出しました。すると、まさかの書類通過。戸惑いながらも、次の面接へと進みます。

次の面接、また次の面接へ――。ほたるは、本当の自分を隠したまま、合格へと近づいていくのですが――。

“小さな枠”から広がった称賛

本作は、月曜から木曜の夜帯に放送された各話15分枠の“夜ドラ”です。脚本を手掛けたのは、若手作家の兵藤るりさん。原案・脚本協力に吹野剛史さんを迎え、演出には橋爪紳一朗さん、小谷高義さん、工藤隆史さんら気鋭のスタッフが集結しました。

15分という短い尺の中で紡がれる瑞々しいセリフの数々と構成力が高く評価され、兵藤さんは第42回向田邦子賞を受賞しました。さらに作品自体も、放送批評懇談会が選定する“ギャラクシー賞”の2023年10月度月間賞を受賞。そのほか、第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞でも作品賞や主演女優賞など複数の部門で上位入賞するなど、放送終了後も称賛の声が止まない一作となりました。

キャストには、地上波連ドラ初主演となった若手実力派・蒔田彩珠さんをはじめ、もう一人の主人公とも言える髙石あかりさん、ほたるの良き理解者となる倉悠貴さん、サーヤ(ラランド)さん、久間田琳加さん、井頭愛海さんといった個性豊かな面々が名を連ねました。 さらに、ほたるを見守る大人たちとして、市川実日子さん、恋人役の高杉真宙さん、倉科カナさん、原田泰造さん、両親役の紺野まひるさん、マギーさんら豪華俳優陣が脇を固め、物語に深みを与えています。

「自分を偽ること」は罪?――0/100理論に揺さぶりをかけた話題作

本作の大きな見どころは、「自分を偽ることは悪なのか?」という深遠な問いかけにあります。

主人公・ほたるを苦しめたのは、場面ごとに自分を使い分けることを“嘘つき”だと責めてしまう心でした。“本当の自分”か“偽りの自分”か――。そのどちらか一つに白黒つけようとする極端な思考が、自分自身を追い詰めていたのです。

しかし、本作は「子供じゃなけりゃ誰でも二つ以上の顔を持ってる」という故・忌野清志郎さんの言葉のように、複数の顔を持つことを否定しません。 クリーニング店店主・聡美(市川実日子)が語る「人生そのものがシンキングタイム」というセリフは、答えが出ずに迷い続けることさえも肯定します。

就職活動という“何者か”にならなければならない局面で、自分に自信が持てず、他人の人生を拝借してしまったほたる。しかし物語は、一方的に憧れていたはずの美晴もまた、ほたるの飾らない人柄や、ただそこにいてくれるだけで安心できる“ありのままの姿”に救われていたことを描き出します。 “最悪なともだち”とは、自分自身のコンプレックスを映し出す鏡でありながら、実は互いに欠けた部分を補い合う“最良のともだち”でもあったのです。

その罪悪感と葛藤は、SNS時代を生きる私たち自身の姿でもあります。誰かと比べて落ち込んだり、本当の自分を見失ったり……。

そんな迷える私たちに、本作はこう語りかけます。自分を偽ることで、本当の自分に辿り着くこともある――複数の顔を持つことは決して不誠実ではなく、迷いながらも進むその姿こそが、懸命に“生きている証”なのだと。

自分自身という“一番最悪なともだち”と手を取り合い、悩みながら進んでいく。その歩みの中にこそ、生きている実感があるのではないでしょうか。

“目で語る”と絶賛された朝ドラ女優

本作を語る上で欠かせないのが、鍵谷美晴を演じた髙石あかりさんの存在です。

美晴は、主人公・ほたるが一方的に憧れを抱く“眩しい存在”ですが、単に明るいだけのキャラクターではありません。常にスポットライトを浴びているように見えて、実は彼女自身も人知れず悩み、ほたるの飾らない人柄に救われていました。

髙石さんは、そんな美晴が抱える複雑で人間らしい葛藤を熱演。その好演が高く評価され、第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では助演女優賞を受賞しました。その後、2025年度後期の連続テレビ小説『ばけばけ』のヒロインに抜擢されるなど、本作での経験がさらなる飛躍へと繋がっています。

実際に視聴者からは、「声が聴きやすい」「このドラマでファンになった」「主役を喰うほどの名演だな」「目だけで語れる圧巻の演技力」「今一番注目している女優さん」といった熱いコメントが数多く寄せられました。

蒔田さんと髙石さん、対照的な輝きを放つ二人の女優が織りなす化学反応こそが、この等身大の青春物語をより一層味わい深いものにしています。

「私らしさ」という呪縛を解く物語

本作の魅力は、ギャラクシー賞月間賞の受賞や、賞レースでの多数ノミネートといった評価だけにとどまりません。月曜から木曜、就寝前のわずか15分間という“夜ドラ”枠において、現代人を縛り付ける“私らしさ”という呪縛を鮮やかに解き放った点にあります。

自己を断罪し続ける現代人にとって、本作が提示した“どんな自分も自分”という肯定的なメッセージは、一筋の救いとなりました。実際、SNSには「胸がじんわりするラストが最高」「私の推しドラマ」「珠玉の名作」「NHKには感謝しかない」といった称賛の声や「NHK様どうか再放送を…」「しつこいぐらい言う」など再放送を熱望する声が後を絶ちません。

就職活動という人生を左右する岐路に立つ若者たちの姿を通じ、深夜の短尺枠でこれほどまでに深い共感と救いを生み出した本作は、まさに“快挙を遂げたNHKドラマ”と言えるでしょう。


※記事は執筆時点の情報です