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【陸上界で初!】近赤外光が見えるトンボを発見

  • 2026.1.28
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

私たち人間には見えない光が、もし身近な昆虫には見えていたとしたらどうでしょうか。

大阪公立大学の研究グループは、トンボの中に近赤外光を感知できる種が存在することを発見しました。

しかもその仕組みは、赤色を感じる人間の視覚と驚くほどよく似ていたのです。

陸上生物では初となるこの発見は、色覚の進化だけでなく、医学生物学への応用可能性まで示す重要な成果でした。

研究の詳細は2026年1月20日付で学術誌『Cellular and Molecular Life Sciences』に掲載されています。

目次

  • トンボの赤色視は「ヒトと同じ仕組み」だった
  • 近赤外光が見えるトンボと、その先の応用

トンボの赤色視は「ヒトと同じ仕組み」だった

色を見分ける能力は、目の中にある「オプシン」と呼ばれる光受容タンパク質から始まります。

ヒトでは青・緑・赤の3種類のオプシンが色覚を担っており、特に赤色を感じる赤オプシンは、可視光の範囲を決める重要な役割を果たしています。

赤色視はヒトを含む脊椎動物だけでなく、トンボやアゲハチョウなど一部の昆虫にも存在することが知られていました。

しかし、脊椎動物と無脊椎動物の赤オプシンは、別々の進化史をたどってきたと考えられており、その分子レベルの仕組みは長らく謎のままでした。

そこで研究チームは、昆虫の中でも特に多くのオプシン遺伝子をもつトンボに注目。

チームは、トンボの赤色視を担うオプシンを同定し、その一部のアミノ酸を人工的に改変する実験を行いました。

その結果、赤色光を感知するために重要な分子構造が明らかになり、驚くべきことに、その仕組みがヒトを含む哺乳類の赤オプシンと共通していることが判明しました。

系統的に大きく離れた生物が、独立に同じ分子戦略へたどり着いていたことは、赤色視が環境適応においていかに重要であったかを物語っています。

近赤外光が見えるトンボと、その先の応用

さらにチームは、トンボの中でもサナエトンボ科に属する種が、ヒトには見えない近赤外光を感知できることを突き止めました。

これは陸上生物としては初めての発見です。

なぜ近赤外光を見る必要があるのでしょうか。

チームは野外でサナエトンボ科の個体を捕獲し、体表の光の反射率を調べました。

その結果、オスとメスの体では赤色から近赤外にかけての反射特性が大きく異なることが分かりました。

このことから、近赤外視がオスメスの識別に役立っている可能性が示唆されました。

研究はここで終わりませんでした。

近赤外光は生体組織を透過しやすく、体の深部まで届くという特性があります。

このため、近赤外光に応答する分子は、光遺伝学と呼ばれる分野で長年求められてきました。

チームは、サナエトンボ科の近赤外オプシンをもとに、同じく赤色視をもつシャコのオプシン構造を参考に改良を施しました。

その結果、感受性をさらに長波長側へシフトさせることに成功し、近赤外光によって実際に細胞応答が引き起こされることも確認されました。

この成果は、生体深部で機能する新しい光遺伝学ツールの候補を提示するものです。

サナエトンボ科/ Credit: ja.wikipedia

トンボは、童謡にも登場するほど身近な昆虫です。

しかしその目は、私たち人間の想像をはるかに超える世界を見ていました。

ヒトと共通する赤色視の仕組みをもち、さらに近赤外光まで感じ取る能力は、色覚の進化と生物の感覚の多様性を考える上で重要な手がかりとなります。

無脊椎動物のオプシンは、これまで技術的な理由から十分に研究されてきませんでした。

今回の成果は、その未開拓領域に大きな可能性が秘められていることを示しています。

トンボの目が切り開いた新しい視覚の世界は、進化の謎だけでなく、未来の生命科学にも光を当てる存在になりそうです。

参考文献

陸上生物で初!近赤外光を感知するトンボを発見 ~赤色を感じる仕組みはヒトと共通であることも明らかに~
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-22134.html

元論文

Dragonfly red opsins share a common tuning mechanism with mammalian red opsins and further enhancement of near-infrared sensitivity
https://doi.org/10.1007/s00018-025-06017-9

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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