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15以上のブランドが新体制へ。2026年春夏コレクション、モードはどう変わった?

  • 2026.1.28

クリエイティブ体制の刷新が相次ぎ、大きな過渡期を迎えた2026年春夏コレクション。ランウェイから発信されたのは、スタイルだけではなく、感情や価値観を映し出す存在へと拡張した美しい服。着る人の"個"を称える服とともに、新しい季節へ思いを馳せて。

 

さながら"椅子取りゲーム"の様相を呈した2026年春夏シーズン。15以上のブランドが新体制による初コレクションを発表、モード界は大きな転換点を迎えた。印象的だったのは若手の抜擢ではなく、キャリアを重ねてきた実力派の起用が主流だったこと。彼らはそれぞれに手腕を発揮、アーカイブを再編集するだけでなく、自らのクリエイションを重ねてブランドの現在地を描き出した。過去は未来への鍵になる。いま起きているのは単なる世代交代ではない。モードそのものが書き換えられる歴史的瞬間かもしれない。

新デザイナーたちが時代の扉を開く

Chanel▸Matthieu Blazy

 

フレッシュでモダン。「ガブリエル・シャネルとの対話」から始まったというデビューコレクションでマチュー・ブレイジーは彼ならではの新生シャネルを表明。ツイードのスーツやカメリアなどメゾンのコードを継承しながら、現代女性のための自由なエレガンスを提示した。メンズウエアからの引用も女性を解放する服を追求した彼女への敬意を込めて。ビーズ刺繍のツイード、布フェザーのスカートなどアトリエのサヴォワールフェールとの融合も完璧。

Maison Margiela▸Glenn Martens

 

モデル全員が着用した4本の白いステッチを模したマウスピースは「匿名性」というメゾンのコンセプトの体現。初のプレタポルテとなる「Co-Ed」でグレン・マーティンスはマルタン・マルジェラの服作りのアイデアを抽出、時代に呼応するリアルクローズへと再構築した。カットアウェイやカバードの手法を用いたテーラリングやヴィンテージ風のスリップドレスなど、アーカイブの進化形が彼の指針。

Dior▸Jonathan Anderson

 

「変化は必然」というショーノートの言葉どおり、ジョナサン・アンダーソンは歴史あるメゾンを革新、ディオールの新時代を宣言した。オートクチュールのドレスの技法でミニスカートやカーゴパンツを再構築、アイコンの「バー」ジャケットはショート丈にしたりボウをあしらって再編集、洗練を象徴するアーカイブに彼らしいカジュアルダウンを交差させた。その根底にあるのはムッシュ ディオールの美学を進化させるという決意なのだ。

Jil Sander▸Simone Bellotti

 

かつてのミューズ、グィネヴィア・ヴァン・シーナスのオープニングがすべてを物語っていた。シモーネ・ベロッティが掲げたのは、ブランドの原点である「研ぎ澄まされた純粋さ」への回帰。テクニカル素材で描くコンパクトなシルエットが創業者、ジル・サンダーの時代を彷彿とさせる。計算されたカラーブロッキングやスリットによるセンシュアルな肌見せが抑制のなかに緊張感を添える。

Balenciaga▸Pierpaolo Piccioli

 

「シルエットの革命家」と称された創業者の哲学を再設定、ピエールパオロ・ピッチョーリは純粋なバレンシアガの構築美を現代に蘇らせた。メゾンを象徴するガザールを新素材として開発、アーカイブのシルエットを着想源にプレタポルテとしての表現を探求。トレーンを引くTシャツやバルーンを描くレザーブルゾンなどクチュールのボリュームをのせたデイリーウエアが美しい。身体と服の合間に、彼の変わらない人間への愛が宿っている。

Bottega Veneta▸Louise Trotter

 

ブランドの理念である「工房」の職人技、創業者から歴代クリエイティブディレクターに継承されてきた機能性と自由の精神、そして現代的なワードローブを追求する自身の視座を編み込んで、ルイーズ・トロッターはボッテガ・ヴェネタを再起動した。イントレチャートを配したオーバーサイズのジャケットやフリンジの揺れるドレスに、クラフトマンシップと日常のリアリティが調和する。力強く美しい彼女の物語はチェンジではなくアップデート。

Versace▸Dario Vitale

 

創業者、ジャンニ・ヴェルサーチェの90年代のアーカイブを起点に、ビッグショルダーのテーラリングやハイウエストのカラーデニムをフレッシュに展開。メゾンの本質であるイタリア的グラマーとストリートの感覚を融合して新しいヴェルサーチェ像を打ち出したダリオ・ヴィターレ。評価も高かったが、その後の発表で12月12日に退任、今回が最初で最後のコレクションとなった。

Celine▸Michael Rider

 

7月のデビューコレクションに続き、ファッションウィークでは初お披露目となったマイケル・ライダーのセリーヌのビジョンは「タイムレスな服」。メゾンの根幹にあるフランス的ブルジョアシックと彼が培ってきたアメリカンプレッピーを共鳴させて、新感覚のBCBGスタイルを発信。フィービー・ファイロやエディ・スリマン時代のムードもうまく組み込みながら、メゾンのステイプルを再構築した。

Jean Paul Gaultier▸Duran Lantink

 

ショー直後から物議を醸したデュラン・ランティンクのジャンポール・ゴルチエのデビュー。コーンブラ、マリニエールのボーダー、タトゥー風プリントなどゴルチエのアイコンを大胆不敵に再解釈、自身が偏愛していた「ジュニアゴルチエ」のロゴも復活させた。アーカイブは見なかったと語る彼が引き継いだのは、"ファッション界の異端児"といわれた創業者の過激なエネルギーなのだろう。

Loewe▸Jack McCollough & Lazaro Hernandez

 

スペインの太陽を思わせる明るいエネルギーに満ちたジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスの新章。ジョナサン・アンダーソンの後任というプレッシャーのなか、彼が築いたクラフト路線に、ビビッドな色彩とスポーツウエアのフィーリングをのせて、ふたりのロエベは好スタートを切った。創立180周年に向けてメゾンのルーツとしての「スペインらしさ」を探求していくという彼らの新しいアイデンティティに期待したい。

Carven▸Mark Thomas

 

ルイーズ・トロッターが去り、彼女とともにメゾンを牽引してきたマーク・トーマスによる第2章の始まり。オフィスで開催された静かなデビューショーで彼が提唱したのはこれまでと変わらないミニマルな美学。"家"という今季のテーマに合わせてよりフェミニンにチューニングされている。ベッドリネンを巻きつけたようなドレスやサマートレンチが彼の第一歩を優しく告げる。

Gucci▸Demna

 

"La Famiglia"と題されたルックブックの突然の発表、ミラノではデミ・ムーア主演の短編映画『ザ・タイガー』のプレミア上映会を開催、すぐに期間限定で世界10のショップで販売。デムナの新生グッチの幕開けは異例ずくめだった。といってもこれはほんの序章。今回38人の"グッチファミリー"を通して提示した多面的な「グッチらしさ」をこれからどう「デムナらしく」進化させていくのか。2026年2月の本格デビューが待ち遠しい。

 

*「フィガロジャポン」2026年2月号より抜粋

 

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