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AIが「職業の熟練度」を評価、製造業で活躍か【静岡大学】

  • 2026.1.27
AIで製造業の熟練度を見える化。イメージ。 / Credit:Canva

RPGでは、主人公のステータス画面に「職業の熟練度」が表示され、戦士や魔法使いといった職業ごとに、どれだけその道を極めてきたかが示されます。

「敵と戦い、クエストをこなすたびに熟練度が上がり、自分の成長が目に見えて分かる」

この仕組みに夢中になった人も多いでしょう。

もし現実の仕事でも、自分の「職業の熟練度」が同じように見える形で示されたらどうなるでしょうか。

どこが未熟で、どこが上達したのかが分かれば、成長の実感はこれまでとは大きく変わるはずです。

こうした発想を取り入れた新たな取り組みを、静岡大学とヤマハ発動機の研究チームが発表しました。

彼らは、AIを用いて組立作業の熟練度を可視化し、新人作業者の育成を支援する新しい人材育成手法を提案しています。

この研究成果は、2025年12月24日付の『Computers & Industrial Engineering』 に掲載されています。

目次

  • AIによる「熟練度の見える化」
  • AIのサポートにより製造現場での「新人教育」が捗る

AIによる「熟練度の見える化」

製造業の現場、特に多品種少量生産の組立工程では、人の手による作業が今も欠かせません。

しかし近年、多くの現場で熟練作業者の不足が問題となっています。

新人作業者は、作業マニュアルを読んだり、熟練者の動きを見たりしながら仕事を覚えていきます。

ただし、作業がうまくいかなかった場合に「どこが悪かったのか」を自分で正確に把握するのは簡単ではありません。

工程を一つ抜かしてしまったのか、順番を間違えたのか、あるいは特定の工程に時間をかけすぎたのか。

その判断は、多くの場合ベテランの経験に頼ってきました。

この研究が着目したのは、熟練度を感覚的な評価として扱うのではなく、作業プロセスのズレとして捉え、本人が理解し修正できる形で示すという考え方です。

熟練者の「標準作業」を基準に、新人の作業との違いを具体的に示すことができれば、熟練度は曖昧な印象ではなく、改善可能な課題として見えるようになります。

そこで研究チームが開発したのが、FIELDS(Feedback Integrated Expert Level Description System)と呼ばれる作業訓練システムです。(画像はこちら。※プレスリリース

作業者視点の映像データから作業行動を認識するAIモデルを組み込み、工程抜けや工程順序の乱れ、作業時間超過といった点をフィードバックとして提示します。

現場では、FIELDSが作業者の帽子に装着したカメラで、作業者本人の視点から映像を記録。

この映像を解析し、「今どの工程を行っているか」を工程単位で認識します。

そして工程抜けの数や手順のズレ、作業時間といった複数の指標を組み合わせて熟練度を評価していきます。

システムの中心にあるのは、、工程ごとの違いとして可視化し、次にどこを直せばよいかを本人に気づかせる仕組みです。

では、FIELDSの実際の効果性はどうなのでしょうか。実験で確かめられました。

AIのサポートにより製造現場での「新人教育」が捗る

研究チームは、このFIELDSが本当に新人教育に役立つのかを確かめるため、実験を行いました。

参加したのは大学生の被験者で、実際の製造現場を想定した組立作業を複数回行います。

被験者は二つのグループに分けられました。

一方はFIELDSを使い、自分の作業映像とAIによる工程分析のフィードバックを確認できるグループ。

もう一方は、従来どおり作業マニュアルと熟練者の映像のみを参考にするグループです。

現場の自己学習に近づけるため、人間の指導者による直接的な助言は行われません。

その結果、FIELDSを使用したグループでは、工程の抜けや順序ミスが比較的早い段階で小さくなる傾向が示されました。

作業を重ねるにつれて、正しい工程を正しい順番で実行できるようになり、作業プロセス全体が安定していったことが報告されています。

さらに注目すべき点は、作業時間の変化です。

FIELDSでは、各工程について「熟練者と比べてどれくらい時間がかかっているか」が示されます。

この情報をもとに被験者は、自分の時間がかかっている工程や無駄な動きに気づきやすくなり、作業時間の指標でもより良い値を示すようになったとされています。

この研究の新しさは、AIが人を単純に評価する仕組みを作った点にあるのではありません。

むしろ、熟練という曖昧な概念を、工程のズレという具体的な形に分解して示した点にあります。

これにより作業者は、「自分は下手だ」という漠然とした認識ではなく、「この工程の熟練度がまだ足りない」と理解できるようになります。

現在は、実際の製造現場での試験導入も始まっており、より実用的なシステムに仕上げていくことが今後の課題とされています。

仕事の上達は、これまで目に見えづらいものでした。

しかしこの研究は、職業の熟練度を「見えるステータス」として提示することで、人材育成のあり方そのものを変えつつあります。

現実の仕事にも、RPGのような成長の手応えが生まれる時代が、すでに始まっているのかもしれません。

参考文献

AIで熟練度を「見える化」し、製造現場の人材育成を革新 ~静岡大学とヤマハ発動機による産学連携研究が国際学会誌に採択~
https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=11593

元論文

Cross-silo human training in operational assembly: Integrating machine feedback for enhanced efficiency
https://doi.org/10.1016/j.cie.2025.111774

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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