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朝ドラ初出演の“ほぼ新人”に近い女優(21)「見たことある」「やっぱり出てたんだ」視聴者が“名前を覚えたくなる”注目の人物

  • 2026.2.27
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『ばけばけ』第20週(C)NHK

朝ドラ『ばけばけ』熊本編で強烈な存在感を放っているのが、松野家の女中・クマを演じる夏目透羽だ。21歳、“ほぼ新人”ながら、名前の通り軽やかな透明感を漂わせ、かつ意固地なまでの強さをも感じさせる芝居で記憶に残る。泣いて、拗ねて、ひとりで空回りして、それでも憎めない。クマという役柄と夏目自身の資質が重なり合い、熊本編の空気を変えている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

『ばけばけ』熊本編を彩る新しい風

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『ばけばけ』第20週(C)NHK

熊本編が始まってまず驚かされたのは、松野家に“女中”がいるという構図だった。公式相関図が紹介する通り、クマは「熊本でのトキ(髙石あかり)たちの暮らしを一人で支えるがんばり屋さん」。

しかし実際のところ、単なる働き者の女中さん……という域を超えている。「高い給金をもらっているのだから」が口癖の過剰なまでの責任感、空回りする善意、そして時折見せるネガティブな不安。その振れ幅こそが、“おクマちゃん”の魅力だ。

高等中学校廃止のニュースが飛び込んだシーンは象徴的だった。ヘブン(トミー・バストウ)が英語教師の職を失ってしまったら、松野家がふたたび金銭的不安に襲われてしまう。そんななか、クマは真っ先に、そんなことになったらもう女中は要らないですよね? と自分の立場を心配する。その問いに、家族は即答できない。譲り合ったゆえの沈黙に、クマは泣き出してしまう。

しかし、彼女はただ弱いだけではない。司之介(岡部たかし)がしつこく辛子蓮根の話を繰り返すと、容赦なく料理を取り上げる胆力もある。物怖じしないその姿に、熊本弁のリズムと勢いが相まって、作品に独特の色を加えている。

“ほぼ新人”が放つ魅力とは

夏目透羽は本作が朝ドラ初出演。制作統括から「ほぼ新人に近い」と評されながらも抜擢された背景には、明確な理由があるように思えてならない。

夏目自身が持つ初々しさと純真なイメージは、どこかクマの存在感と重なる。身寄りのないクマ、これまで歴史を重ねてきた松野家の暮らしに裸一貫で突然加わった彼女にとって、計算は似合わない。臆せず笑ったり泣いたり物を申したり、そんな“加工されていない感情”が、画面に瑞々しさをもたらしている。

さらに特筆すべきは、反射神経の良さだ。岡部たかし、池脇千鶴らベテラン俳優に囲まれても臆することなく、『ばけばけ』らしい軽やかなテンポの芝居にも自然に馴染んでいる。焼き網事件で疑われて悲観する場面も、決して大仰にならず、リアルな不安として立ち上がる。

クマが畳の温もりを理由に、不幸がうつると言い出す場面も印象深い。どこか抜けているようでいて、その言葉には身寄りのない彼女の不安が滲む。夏目の芝居は、その不安を重くしすぎない。だからこそ、視聴者は応援したくなるのだろう。

“ネクストブレイク”の条件

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『ばけばけ』第20週(C)NHK

夏目は新人女優と銘打たれてはいるものの、すでに話題のドラマに続々と参加し、着実に実績を積み重ねている。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』での青子役、『再会~Silent Truth~』での美容師役、『新宿野戦病院』でのトー横キッズ役、そして映画『恋愛裁判』への出演など。SNS上で「どっかで見たことある」「やっぱり出てたんだ」と話題になるのも無理はない。

しかし、ネクストブレイクと言われる所以は、何も出演本数だけではない。朝ドラという“国民的ドラマ”で、どれだけ記憶に残るかが鍵になってくるだろう。その点、クマは主役ではないものの、物語の土台となる生活感を担う、いわば心臓部のような存在だ。ヘブンの創作や松野家の未来が揺れるとき、その不安をもっとも素直に表現するのがクマである。

強くて、弱くて、ちょっとだけ面倒くさいところもあって、それが愛おしい。視聴者に愛される余白を持つキャラクターを違和感なく成立させられる女優は、そう多くない。

ネクストブレイクの条件とは、何なのだろう。それは、圧倒的な演技力だけではないはずだ。例えを挙げるなら、視聴者が“名前を覚えたくなる”存在であることかもしれない。すでに彼女は、その入口に立っている。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_