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【コラム】Jリーグ・ブラウブリッツ秋田のスタジアム問題、役所対応で“細心の注意”を

  • 2026.1.13

Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。

秋田市長、地元メディアにより大きな話題に

2025年11月に実施された、秋田市での新スタジアム整備についての、秋田市・Jリーグ・J2ブラウブリッツ秋田による三者協議の非公開内容。

これについて地元メディア(ABS秋田放送)が秋田市に情報開示請求を行い、2026年1月に協議内容全文が公開された。

その中で、Jリーグ側の秋田市に対する発言が不適当だとして、報道後に秋田市民の反応を踏まえて秋田市長が会見し、不快感をあらわにする等、大きな話題となっている。

本件に関しては今までの経緯や秋田のスタジアム問題の現状等、様々な論点があるが、今回は「Jリーグ側の、役所に対する発言の不用意さ」に絞ってとりあげることとする。

本件で最も注目を集めている発言は、Jリーグ側が秋田市に対して言った「志が低い」というもの。

Jリーグ側が秋田市の検討状況に対して述べたこの言葉を地元メディアが重点的に取り上げ、秋田市の沼谷純市長も公式会見の場で「常識がなさすぎると思います」と発言する等、メディア・市長の双方からJリーグが責められる形となっている。

実際の発言内容については公開されており、問題となった部分のみ引用すると以下の通り。

議事詳細

<Jリーグ>
「1万人規模を超える案は検討しないのか」

<秋田市>
「今回の業務委託の中には含めていない。今回は比較のために3パターンとしたが、将来的に設計する段階で検討する可能性はある」

<Jリーグ>
「イニシャルコストも大事なポイントだと思う。最初から立派な大きなスタジアムじゃなくてもいいかもしれないが、上限で1万人と決めるとクラブの成長に無理がある。入場可能数はクラブの経営のキャップになる。どれだけ努力しても、満杯になったら次は大きくすることでしか成長は望めない」

<Jリーグ>
「上限1万人というのは、あまりにも志が低いなと私は思う。イニシャルコストを減らしたいのであれば、そこを少し工夫してスモールに…ということはあるかもしれないが、上限1万人には定めないでほしい。J1は平均2万人入っている。地方のクラブでもJ1に上がった平均は1万人であり、必ず超える。そこにも届かないスタジアムをイニシャルコストだけを理由に造られるのは合理的なようで、全然合理的じゃない」

不用意な発言

このやりとりを確認した上での自分の結論としては、「内容以前に、役所協議の場でこの発言をしたJリーグ担当者の大きなミス」である。

大前提として、いくら非公開のオフレコとはいえ議事録は残る。また、今回のように地元メディアが秋田市へ情報公開請求を行えば議事録を入手でき、こうやって世間に晒される。

そういった状況を踏まえれば、役所との協議で、あまりにも不用意な発言。

本件は、役所との協議で前々から問題解決に至っていない議題である。そういった難交渉が予想される議題を扱う役所対応では、紛糾が予想されるため、役所側とマスコミ側から不用意に言質を取られないよう、絶対に揚げ足を取られないよう、細心の注意払って発言すべきシチュエーション。

Jリーグ側もブラウブリッツ秋田側も、役所に対しては「整備をお願いする側」であり、「お金を出していただく立場」である。役所側が多額の資金を投入する形だ。

それこそ、上記の立ち位置を踏まえれば、役所側・地元メディア側でスタジアム整備反対派は一定数存在することも十分推測される。そのため、Jリーグ側が少し過激なトーンでの発言をした場合、それを材料とした反対工作が起きることも予想できたはずだ。

にも関わらず、こういった発言をしてしまった。

この担当者の発言一つで秋田市長側は「常識がなさすぎる」と発言する等、マスコミへ流すJリーグ側を責めるカードとして活用し、市民感情を誘導できてしまった。

特に、秋田市長は会見の中で「志が低いという言葉は、とりもなおさずそのまま秋田市民に対する言葉になります。ですので秋田市民に向かって志が低いと言ってしまっているという自覚がないとすれば、きわめて常識がなさすぎると思います」と、秋田市とJリーグのシンプルな二者間の話ではなく、“Jリーグ側は秋田市民に対してこの発言をした”、とさらに拡大する展開へと持ち込んでいる。

このJリーグ側発言者は、自分の発言が世論の反発に繋がらないよう留意してたのだろうか?

述べている趣旨としては理解できるが、この単語、このトーンで述べてしまうのは極めて稚拙な対応だったと思料する。

役所対応で求められるもの

役所対応では、綿密な根回し、反発を招かないトーンでの交渉、表に出ない水面下での調整、相手のプライドを損なわない配慮……様々なことに気を配って挑まなければならない。

役所側は、自分達は市民を代表する立場である旨を強調するし、それは地元メディアも同様だ。

この報道と発言内容が独り歩きし、Jリーグ担当者はサッカー第一主義の単純かつ傲慢な集団だと一般の秋田市民から思われてしまうリスクをどこまで踏まえていたのか。役所対応で求められる協調性をどこまで有していたのか。

過去、サンフレッチェ広島のMF東俊希が練習場に対して不用意な投稿をしてしまい、当時・安芸高田市長だった石丸伸二氏がすぐ反応し、大慌てで広島の仙田信吾社長が謝罪しにいった件を対岸の火事と認識していたのだろうか。

秋田市長・沼谷純氏と関係性をJリーグ側が構築できていないとしたら、態度硬化の材料に使われても仕方ない。そういった材料となる発言は絶対に避けるべきだった。

実際、地元メディアがJリーグを責めるスタンスの報道をしたことで、その報道を見た市民の方々から多くの意見が寄せられたために市長は見解を述べることとした、と説明。

各県議会議員や市議会議員も秋田市にとどまらず反応をする等大きく波及しているし、地元メディアがYouTubeにも協議内容全文を公開しているが、コメント欄においてはJリーグ側を責める意見が大半となっている。

秋田市だけにとどまらない可能性

この報道と市長の発言により、当面秋田県ではスタジアム問題は解決することのない流れができてしまった上に、市民のJリーグとブラウブリッツ秋田への悪感情が高まる流れまでも予想される。

秋田市内で、サッカーファンとそれ以外の市民との対立構造が生まれるのは決して望ましくない。また、本件は秋田県でとどまるどころか、他府県にも「Jリーグは傲慢」、「税金ムダ遣いを強いる組織」というイメージが波及するのは痛恨である。

現在、清水エスパルス等、他クラブでも新設スタジアムの動きが起きているが、このような秋田発出の報道により、住民や特定政党による反対運動等、建設決定までに至る道のりが困難化する虞は考えられる。

発言が「切り取りかどうか」の論点

発言自体が「切り取り」されて地元メディアで報道されたという話題も挙がっている。

ただし、忘れてはならないのは、たとえ切り取りだったとしても、「地元メディアでその部分が大々的に報道された」、「市長が会見の中で不快感を示して発言した」という事実だけが大きく残り、今回の非公開議事録を全文確認する人は少数。

報道後、日刊スポーツで、秋田市の関係者から「Jリーグさんの上から目線は一切、感じなかった」と証言する報道も出ているが、秋田市長の会見、また、地元メディアでの報道の方が地元では大きな影響力を持つことは言うまでもない。スポーツ新聞の記事で打ち消せるものではない。

それを避けるため、いかに「切り取り」で使われないかを注意払って発言しなければならない。

そこまで考えた上でも「志が低い」という発言は必要だったのだろうか。

冒頭の結論に戻るが、対役所のロビイストとして不適であり、「内容以前に、役所協議の場でこの発言をしたJリーグ担当者の大きなミス」、「役所対応の不用意さ」を強く残す結果となった。

Jリーグのイメージが大きく毀損されたこと、また、他府県にも波及しスタジアム新設問題に影響しかねないことが本当に残念である。

筆者:中坊(中坊コラム)

1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2025年終了時点で1,029試合現地観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。note:中坊コラム

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