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22歳で「認知症」になった男性、2年後に亡くなる

  • 2026.1.13
22歳で認知症になった男性 / Credit:Canva

認知症といえば、老化によって高齢者がなるもの、と考えがちです。

しかし実際には、認知症は必ずしも高齢者だけの病気ではありません。

イギリスでは、22歳という若さで認知症と診断され、わずか2年後の24歳で亡くなった男性がいます。

この極めて稀な症例は、「認知症とは何か」「なぜ若い脳が壊れるのか」を考えるうえで、重要な手がかりを与えています。

目次

  • 22歳で「前頭側頭型認知症」と診断、24歳で死去
  • MRIで「70歳の脳」レベルの萎縮を確認

22歳で「前頭側頭型認知症」と診断、24歳で死去

この男性は、イングランド東部ノーフォーク州に住んでいたアンドレ・ヤーハム(Andre Yarham)さんです。

ヤーハムさんは2022年ごろから認知症を思わせる症状を示し始め、その後、22歳のときに認知症と診断されました。

当初、家族が感じていたのは「深刻な脳の病気」をすぐに疑うほどの異変ではありませんでした。

以前より忘れっぽくなったこと。 ぼんやりとした無表情になることが増えたこと。

若い人でも、疲れやストレス、生活リズムの乱れなどで起こりそうな変化です。

しかし、その後の進行は異常なほど急速でした。

次第に言葉が出にくくなり、家族との意思疎通が難しくなっていきます。

やがて自分の身の回りのことができなくなり、行動も周囲から「不適切」と受け取られる状態が増えていきました。

最終段階では、言葉をほぼ完全に失い、車椅子での生活を余儀なくされます。

そして診断から約2年後の24歳で、ヤーハムさんは亡くなりました。

彼が診断されたのは、「前頭側頭型認知症」と呼ばれるタイプの認知症です。

これは、一般によく知られているアルツハイマー病とは性質が異なります。

アルツハイマー病では、記憶障害が初期から目立つことが多いのに対し、前頭側頭型認知症では、人格や行動、社会性、そして言語機能が早い段階から障害されやすいという特徴があります。

これは、脳の中でも前頭葉と側頭葉が主に侵されるためです。

前頭葉は感情のコントロールや衝動の抑制、社会的な判断を担い、側頭葉は言葉の理解や意味の処理に深く関わっています。

そのためこの病気では、「物忘れ」よりも先に、「その人らしさが変わる」「言葉が失われる」「行動が制御できなくなる」といった変化が表面化します。

ヤーハムさんの症状の進み方は、前頭側頭型認知症の特徴とよく一致していました。

では、彼の脳はMRIでどのように見えたのでしょうか。

MRIで「70歳の脳」レベルの萎縮を確認

ヤーハムさんの診断の決め手の一つとなったのが、MRI(磁気共鳴画像検査)でした。

検査によって、彼の脳は「70歳の人の脳のように見える」と表現されるほど、著しく萎縮していることが分かりました。

ただし、これは「24歳の脳が70年分老化した」という意味ではありません。

研究者たちは、この点をはっきりと否定しています。

健康な老化では、脳の変化は非常にゆっくり進みます。

一部の領域が少しずつ薄くなっていくことはあっても、短期間で脳全体の構造が崩れることはありません。

一方、前頭側頭型認知症のような神経変性疾患では、病気そのものによって神経細胞が短期間に大量に失われます。

その結果として、画像上は「高齢者の脳」に似た萎縮像が現れるのです。

つまり、見た目が似ていても、老化による変化と病気による脳の破壊は、まったく別の現象だということです。

では、なぜここまで若い年齢で、この病気が発症したのでしょうか。

前頭側頭型認知症は、他の認知症と比べて遺伝的要因が強く関与するケースが多いことが知られています。

特定の遺伝子の変化によって、脳の神経細胞内でタンパク質の処理がうまくいかなくなり、本来なら分解されるはずのタンパク質が異常に蓄積してしまいます。

この異常タンパク質は、神経細胞の働きを妨げ、最終的には細胞死を引き起こします。

こうした仕組みのため、一部の人では、長い年月をかけてゆっくり進むのではなく、比較的若い時期から一気に病気が進行してしまう場合があるのです。

それでも、ヤーハムさんが、なぜこれほど早く発症したのかは完全に解明されたわけではありません。

そこで彼の家族は、亡くなった後にヤーハムさんの脳を研究のために提供する決断をしました。

これは研究者にとって、非常に貴重な機会です。

MRIなどの画像検査では、「どこが縮んだか」は分かりますが、「なぜそうなったのか」までは分かりません。

脳組織を詳しく調べることで初めて、どの異常タンパク質が蓄積していたのか、どの神経細胞が特に弱かったのか、炎症や免疫反応がどのように関わっていたのか、といった核心に迫ることができます。

24歳という極端な若年発症の前頭側頭型認知症は、世界的にも極めて稀です。

この1例から得られる知見が、将来の治療や予防研究につながる可能性は決して小さくありません。

ヤーハムさんの短い生涯は、認知症が「高齢者だけの病気」ではなく、老化とは異なる仕組みで若い脳をも破壊し得る病気であることを、多くの人に教えることになりました。

参考文献

Dementia at just 24-years-old – how Britain’s youngest sufferer may help researchers understand the disease
https://theconversation.com/dementia-at-just-24-years-old-how-britains-youngest-sufferer-may-help-researchers-understand-the-disease-272972

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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