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うつ病の30歳ひきこもり長女 受診先が廃院&カルテ破棄で「障害年金」請求できず 絶体絶命の家族を救った社労士の“起死回生策”

  • 2026.1.13
診療先の病院が廃院した場合、障害年金の請求は無理?(画像はイメージ)
診療先の病院が廃院した場合、障害年金の請求は無理?(画像はイメージ)

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

障害年金の請求時は、その障害で初めて病院を受診した日(初診日)を文書で証明することが求められます。文書は病院で作成してもらうことになりますが、浜田さんよると、当時のカルテが破棄されていたり、廃院していたりすると文書を作成してもらうことができないといいます。そのような場合、どのようにして初診日の証明をすればよいのでしょうか。ひきこもりの娘がいるある家族をモデルに、浜田さんが紹介します。

高校を中退した長女

ある日、私はひきこもりの娘がいる母親から相談を受けました。

30歳の谷口伊織さん(仮名)は高校生だった17歳ごろに体調を崩し、自宅近くにある心療内科を受診しました。その際、うつ病と診断されましたが、通院を続けていても体調が改善することはなく、やむなく高校を中退。その後は病院を転々とし、現在は3つ目の病院(精神科)に月1回、通院しています。

30歳になった今も伊織さんのうつ状態は改善せず、ひきこもり状態にあります。就労が難しく無収入のため、伊織さんの母親は障害基礎年金を請求することを伊織さんに提案。伊織さんもそれに同意しました。

しかしここで困ったことが起きてしまいました。そのため、母親は私に相談することに決めたといいます。

面談の席で母親は言いました。

「実は長女が17歳ごろに通っていたA病院はすでに廃院しており、初診日の証明書が入手できなかったのです」

「なるほど。それは困りましたね。初診日の証明ができないと、障害年金が認められる可能性は非常に低くなってしまいますからね」

すると母親は疑問を口にしました。

「例えば、現在の病院で初診日の証明をしてもらうのは駄目なのでしょうか」

「それでは証拠不十分となってしまいます。なぜなら現在の病院はそもそも初診の病院ではないからです」

私はそう言い、解決の糸口を探るため、母親から伊織さんの受診歴を確認しました。

受診歴は次の通りです。

【伊織さんの受診歴】A病院 17歳ごろから20歳ごろまで受診。うつ病と診断された。A病院はすでに廃院。B病院 20歳ごろから22歳ごろまで受診。終診から5年以上が経過していたため、当時のカルテは破棄されていた。C病院 28歳ごろから30歳まで。現在もC病院に通院している。※伊織さんは22歳ごろから28歳ごろまで精神科や心療内科は受診していなかった。

受診歴を洗い出した私は母親に次のような説明をしました。

「お嬢さまの場合、初診と現在の病院が異なるので、A病院で初診日の証明書である『受診状況等証明書』を書いてもらう必要があります。しかしA病院はすでに廃院しているので、受診状況等証明書を書いてもらうことはできません。受診状況等証明書が入手できない場合、本人または代理人が『受診状況等証明書が添付できない申立書』という書類に記入をします。ここまではよろしいでしょうか」

母親は大丈夫といった様子でうなずいたので、私は説明を続けました。

「さらに当時A病院を受診していた証拠書類のコピーを添付することになります。1番目の病院で受診状況等証明書が入手できなかったので、障害年金のルール上、2番目のB病院で受診状況等証明書を書いてもらうことになります」

「しかしB病院にはカルテがないため、ここでも受診状況等証明書を書いてもらうことができません。そこでB病院に関する受診状況等証明書が添付できない申立書を記入し、さらにB病院を受診していた証拠書類のコピーを添付します。そして3番目のC病院で診断書を書いてもらうことになります」

「C病院で受診状況等証明書を書いてもらう必要はないのでしょうか」

「はい、必要ありません。現在のC病院では診断書を作成してもらうので、そちらで代用できるからです。ただし、先ほどもお話ししましたが、C病院の診断書だけでは初診日の証明としては不十分です。そこでお嬢さまが17歳当時に受診していたことを証明できる証拠書類をできるだけそろえる必要があります。例えばご自宅にA病院の診察券や当時の領収書やおくすり手帳などはありませんでしょうか」

すると母親は首を小さく左右に振りました。

「だいぶ前のことなので、自宅に資料は何も残っていません…。何か他に方法はないものでしょうか」

母親は不安そうな表情でそう言いました。

第三者に証人になってもらう方法も検討

A病院はすでに廃院、B病院では当時のカルテがない、自宅にも当時の受診を証明できるような証拠書類が何もないといった八方ふさがりの状況です。

ですが、あと1つだけ対策は残されています。

そこで私は「かなりハードルの高い対策になってしまいますが」と前置きをした上で、次のような説明をしました。

「初診日の証拠書類として『初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)』というものがあります。ただし、この申立書を書いてもらうためには、お嬢さまが17歳ごろにA病院に行っていたことを『その当時実際に見聞きしていた人』に限られます。よって私がこの第三者証明を書いて初診日の証明をすることはできません。なぜなら私はA病院のことを今ここで初めて聞いたので、その当時、実際に見聞きしていたわけではないからです」

「その当時、実際に見聞きしていた人であれば、母親の私や親戚の人でもよいのでしょうか」

「それは駄目です。ここでいう第三者とは『親族以外の人』になるからです。お嬢さまに当てはめると、第三者とは当時の高校のクラスメートや担任の先生などです。もちろん、その当時お嬢さまが受診していたことを実際に見聞きしていた人でなければなりません。なお、第三者証明は医療従事者でなければ2名、医療従事者であれば1名に記載してもらう必要があります」

「そうなのですね…。長女は高校を中退してしまいましたし、当時のクラスメートや先生の連絡先や所在は何も分からないです…」

「確かに10年以上前のことですから、該当者を探し出すことは容易ではありませんよね。あとはA病院の当時の主治医を見つけ出し、その人に第三者証明を書いてもらえれば、初診日の証明ができるのですが…」

私がそう言うと、母親は急にはっとした表情になりました。

「A病院は廃院していますが、自宅兼診療所のようなものでした。ひょっとしたら、今もそこに当時の主治医が住んでいるかもしれません」

「そうなのですか。ひょっとしたら何とかなるかもしれませんね」

母親の言葉に、私は一筋の光を見いだしました。

面談後、母親は当時のA病院(自宅兼診療所)を訪れました。幸いにも当時の主治医は今もその自宅に住んでいました。

母親は主治医に事情を説明。主治医は伊織さんのことをよく覚えていてくれたそうで、第三者証明の記入も快く引き受けてくれました。

医療従事者の第三者証明を入手できたことで、初診日の証明は何とかなる見通しが立ちました。その後、私は診断書やその他の必要書類をそろえ、速やかに障害基礎年金の請求を完了させました。

請求から3カ月がたった頃。母親から「無事に障害基礎年金の2級が認められました」という内容の報告がありました。母親からの報告を受け、私も一安心することができました。

今回のケースでは何とかなりましたが、いつもこのようにうまくいくとは限りません。初診日の証明が不十分で、障害年金が認められなかった人は多くいます。

初診日の証明書である受診状況等証明書には有効期限がありません。一度入手しておけばずっと使用できます。「今は障害年金の請求を考えていなくても、将来請求することになるかもしれない」というときに備え、初診の病院にカルテが残っている間に、受診状況等証明書を入手しておくとよいでしょう。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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